夏以外でも楽しめる絶品中華が満載だ
シーズンが終わると、確かにファンは“冷し葱そばロス”に苛まれ、また次の夏に恋い焦がれる。だが、真の常連は知っているのだ。ほかにも絶品中華があることを! そのひとつが「五目ウマニかけ飯」。いわゆる中華丼だが、同店の開業当時から人気のメニューである。
名称は五目だが、実際の具は5種以上。豚バラ肉、白菜、にんじん、うずらの卵、ほうれん草、きくらげ、たけのこなどがたっぷり入っている。絶妙な火加減による、野菜のシャキシャキとした食感もたまらない。また、隠し味のオイスターソースが上品さを演出。
また、サイドメニューとしてもつまみの主役にもなるのが「ギョウザ」。オーソドックスな料理ではあるものの、あんの一体感と皮の焼き加減は職人技だからこそなせる技。普遍的なおいしさで、注文率が極めて高い一品である。
そんな「鶏舎」は店主の長谷川 淳さんが1991年にオープンさせた街中華だが、経緯には少し変わった裏話がある。さかのぼること数年前、将来の進路を考えていた長谷川さん。手に職を付けたいと思い、一度は服飾の道を志す。だが80年代中頃は世に「ユニクロ」の1号店が誕生するなど、徐々に安価なファッションが登場していた時代。注文服の難しさを見据えた長谷川さんは料理の道へ方向転換する。そして高校時代のアルバイト経験から、中華料理店の門を叩くことに。
やがて修業開始から6年ほどが経ち、ついに独立して開業したのが「鶏舎」なのだ。このころは、まさにバブル崩壊の足跡が聞こえはじめていた時代。以後、ファストファッションは一層台頭することに。長谷川さんの読みは、少なからず当たっていた。
↑よく見ると「アルバイト募集」の張り紙が。もし「冷し葱そば」の秘密を知りたければ、応募してみてはいかがだろう
兄弟のコンビネーションも見事な「鶏舎」だが、店名を考えたのはお父さん。鶏を使った代表的な料理に親子丼があるが、親と子の絆を連想させる「鶏」のイメージが、息子を応援したい気持ちとつながったのかもしれない。そんな同店には「トリソバ」(850円)など鶏を使ったメニューも多く、もちろんどれも絶品だ。ぜひ行ってみていただきたい。
撮影/我妻慶一
【SHOP DATA】
鶏舎(チイシャ)
住所:東京都目黒区青葉台3-9-9
アクセス:東急田園都市線「池尻大橋駅」徒歩8分
営業時間:月~金曜11:30~14:30/17:00~20:30(L.O.)、土曜11:30~14:30
定休日:日曜、祝日