4. ドウロ地方(ポルトガル)
− ポートワインの産地ではスティルワインが新しい −
スペインから流れ込むドウロ河は、シェリーと並び、世界最高の酒精強化ワインであるポートワインの生まれ故郷です。シェリー同様にイギリス人によって世界中に広まったポートワインは、日本では早くから普及していた国産の甘味果実酒の影響か、一部の好事家に親しまれるにとどまり、一般には受け入れられなかったように思えます。
ですが、20年以上の壜熟成を経て真価を発揮するヴィンテージ・ポートは、ワインの熟成の美しさをもっともよく表現するワインのひとつで、私も贈り物用にバースデー・ヴィンテージを探している方には目的の生産年のヴィンテージ・ポートを見つければ迷わずおすすめする逸品です。通常のワインよりも状態の不安も少なく、その深みのある甘みはもちろん、数十年という変化を想像しながら楽しむという点では最高のワインなのです。
ただし、近年のポルトガルワインの飛躍で注目したいのは、ドウロ産の酒精強化をしないスティルワインの品質向上が目ざましいことです。赤ワイン用のブドウ品種は、主にスペインのテンプラニーリョに当たるティンタ・ロリスやトゥーリガ・フランカですが、スペインの凝縮感のある果実が印象的なのに比べ、酸を感じエレガントな赤ワインなどが目立ちます。
下のニーポートは、1842年創業の老舗ポートワインメーカーですが、5代目に当たるディルク・ニーポートは、そういったドウロ産スティルワインのパイオニア的な存在。ブルゴーニュに感銘を受けて試行錯誤されたスティルワインは、ポルトガルワイン新世代の代表格といっていいほどの造り手です。ワイン名のヴェルテンテは“新たな視点”というネーミング。新時代のポルトガルワインはまだ一部の好事家のためのワインにとどまっていますが、より広く知られることを願っています。
Niepoort(ニーポート)
「DOP Douro2016(DOPドウロ ヴェルテンテ2016)」
3300円
輸入元=木下インターナショナル