昨今注目されている「オートミール」。穀物の中でも栄養価が高く、健康や美容にも良いと世代を問わず愛されています。とくに、お米のような食感になる“米化”と言われる調理法がSNSを中心に広まり、牛乳をかけてシリアルのように食べるといった従来の食べ方ではない、手軽でありながら“食事”としておいしく味わえるレシピが増えたことで、その人気に火がつきました。
今回は、『即やせ!オートミール神レシピ』(ナツメ社)を出版した料理家で管理栄養士の新谷友里江さんに、オートミールの基本的な調理法と、ヘルシー食材とは思えない(?)おいしいレシピを紹介していただきます。
実は明治時代からあった! オートミールのメリットとデメリットとは?
「オートミール」とは、オーツ麦を脱穀したもののこと。最近登場した食材のように感じますが、実は日本で初めてオートミールが食べられるようになったのは明治時代。当時は、牛乳や水をかけてお粥のようにして食べるのが一般的でした。ところが2020年代に入り、SNSで「オートミールを米化する」レシピが出回ると、これをきっかけに大流行。お米のように食べられるのに栄養価が高く、手軽に調理できるのはうれしいですよね。
「オートミールは食物繊維が豊富で、血糖値の上がりにくい低GI食品です。糖質も低いので、『ごはんは食べたいけれど糖分が気になる』という人にはうってつけでしょう。また、調理しても栄養価がそう変わらないのもメリットです」
とはいえ食べ過ぎてはデメリットも。
「整腸作用が強く、食べ過ぎるとお腹がゆるくなってしまうこともあるので、1回に30g、1日の上限150gという目安を守って食べてください」(料理家・新谷友里江さん、以下同)
オートミールには2種類。どう使い分ける?
オートミールは、主に2種類が売られています。ひとつは右のオーツ麦を脱穀し、一度蒸してから平らに潰してフレーク化した「ロールドオーツ」という名称のオートミール(写真右)。もうひとつは、それを少し細かく粉砕した「インスタントオーツ」です。
「ごはんの代わりに食べたいときは、粒がしっかりしているロールドオーツの方がお粥のようにならず、食べ応えがあります。反対に、お菓子作りに使ったり、“オーバーナイトオーツ”といって、ヨーグルトや牛乳に浸したまま冷蔵庫で一晩寝かせてから食べるときは、粉砕されたインスタントオーツがおすすめです。食べ方によって使い分けてみてください」
【オートミールの種類】
・ロールドオーツ……オーツ麦を脱穀し、蒸してから潰し乾燥させた基本形。なるべく粒感や食感を残したいときに。
・インスタントオーツ……ロールドオーツを粉砕し粒を細かくしたもの。水分を吸収させやすく、とろっとさせたいときやお菓子作りに。
オートミールの“米化”ってどうやるの?
“オートミールの米化”とは文字通り、オートミールをお米のような状態にして食べること。手軽に調理したい場合は電子レンジで加熱すればいいだけなので、ごはんを炊くよりずっと簡単に手早く仕上がります。
「米化したものは、冷凍して作り置きすることもできます。たくさん作っておきたい場合は、加熱ムラの少ないフライパンで米化し、ラップに包んで冷凍しておきましょう。食べるときは、冷凍ごはんのように解凍します。1〜2食分くらいの場合は、電子レンジを使うと楽ですよ」
■米化の方法1.少量なら電子レンジが便利
【材料】
オートミール……30g
水……50ml
【作り方】
1.オートミールと水を耐熱皿に入れ、ラップをかけずに電子レンジで1分加熱する。
「加熱後は水気が下に溜まってしまうので、ムラがなくなるよう、できあがったらよく混ぜてから食べましょう」
■米化の方法2.作り置きするときはフライパンで
【材料】
オートミール……90g
水……150ml
【作り方】
1. オートミールと水をフライパンで混ぜ、弱火にかけて蓋をする。
2. ときどき混ぜながら5~6分加熱し、水気が飛んでパラッとしてきたら、火を止める。5分ほど蓋をしたまま蒸らす。
「最後に蓋をして蒸らすと、水分が全体に行き渡り、パサパサにならず柔らかく仕上がります」
ここからは、オートミールを食べ応えのあるがっつりごはんに、また見た目もかわいいスイーツに仕上げるレシピを紹介していただきます。
米化したオートミールがさらにおいしく食べられる!「豚肉のピリ辛のっけ丼」
箸が進むピリ辛のおかずは、オートミールと合わせると「ついごはんを食べすぎてしまう!」ということもなく、ヘルシーなメニューに。「丼にすると、オートミールらしい香りもより気にならず、おいしく食べられます。まるで玄米みたいですよね。お肉のボリュームで食べ応えもあって、夕食にもぴったりです」
【材料 (2人分)】
米化したオートミール……2人分(オートミール60g、水100ml)
豚こま切れ肉……100g
にんじん……1/4本
サニーレタス……1枚
サラダ油……小さじ1
〈ピリ辛たれ〉
酒……大さじ1
しょう油……小さじ2
砂糖……小さじ1
豆板醤……小さじ1/4
【下準備】
・耐熱皿にオートミールと水を入れて、ラップをせず電子レンジで1分半加熱し、米化しておく。
・豚肉は一口大に切る。にんじんは細切りにする。
・サニーレタスは食べやすくちぎって水にさらし、水気を切る。
・たれの調味料は混ぜ合わせておく。
【作り方】
1. フライパンにサラダ油を中火で熱し、豚肉を炒める。
「肉の色が変わったらにんじんを入れて炒め、しんなりしたらたれを加えて汁気がなくなるまで炒めましょう」
2. 器に米化したオートミールを入れ、サニーレタスを敷いて(1)をのせる。
甘辛いたれと絡めて食べると、米化したオートミールがさらにごはんのように感じられ、満足感たっぷりに。「オートミールは一人当たり30gなので、見た目はごはんに比べると少ないなという感じがするのですが、実際に食べるとすごく満腹感があるんですよ」
続いては、おやつに食べられるオートミール。
ポンッと片手で栄養補給できる優秀おやつ「プレーン&ココアのオーツボール」
オートミールをチンして丸めるだけの、作りやすいおやつボール。一口で食べられるサイズなので、勉強の合間や忙しいときの間食にもおすすめです。「グラノーラのようにドライフルーツとナッツを合わせて、おやつらしい味に仕上げました。4日くらいは日持ちするので、多めに作って冷蔵庫に入れておいてもいいですね」
【材料 (2人分)】
オートミール(インスタントオーツ)……60g
アーモンド……20g
ドライマンゴー……30g
はちみつ……大さじ1
無調整豆乳……大さじ1
ココアパウダー……適量
【作り方】
1. アーモンド、ドライマンゴーは細かく刻む。
「ドライフルーツはマンゴー以外に、レーズンやクランベリーなどもよく合います。酸味のあるフルーツがおすすめです」
2. 耐熱ボウルに(1)、オートミール、はちみつ、豆乳を加えてよく混ぜる。
「さっくりと混ぜ合わせ、はちみつと豆乳を行き渡らせます」
3. ラップをしてレンジで1分加熱して、さらによく混ぜる。
「加熱することでオートミールがふわっと柔らかくなり、丸めやすくなります」
4. 全体がしっとりしたら6等分にして丸め、半分はココアパウダーをまぶす。
「お皿にラップを敷き、その上に生地をのせて丸めると上手にできます。ココアパウダーもお皿に入れて、そのなかで転がしましょう」
手軽なのに、華やかでかわいいおやつができあがりました。ココア味はチョコレートを食べているような気持ちになれるのにヘルシーなので、ダイエット中でも罪悪感なく食べられそう。「こちらのレシピでは、生地がまとまりやすいよう粉砕されたインスタントオーツを使っています。ロールドオーツしかない場合はフードプロセッサーなどで粉砕してもいいでしょう」
オートミールは我慢して食べるもの……そんなイメージを一新してくれるようなレシピです。注意が必要なのは、米化するときは“ロールドオーツ”を使うこと。ぜひ試してみてください。実際に食べてみると、その意外なおいしさにびっくりしますよ。
【プロフィール】
料理家・管理栄養士 / 新谷友里江
料理家・祐成二葉氏のアシスタント、祐成陽子クッキングアートセミナー講師を経て独立。ダイエットメニューや離乳食、お弁当、手軽にできる日々の献立など、オールマイティーで間違いないおいしさのレシピ開発に定評があり、料理雑誌やファッション誌、テレビ、WEBなどで活躍している。近著に、「即やせ!オートミール神レシピ」や「楽するスープ&みそ汁」(ともにナツメ社)などがある。
『即やせ!オートミール神レシピ』(ナツメ社)