「氷結mottainai」大ヒットの裏側を聞く!キリンの気鋭マーケッター“ヒットの法則”

ink_pen 2026/4/8
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「氷結mottainai」大ヒットの裏側を聞く!キリンの気鋭マーケッター“ヒットの法則”
GetNavi編集部
げっとなびへんしゅうぶ
GetNavi編集部

1999年創刊。「新しくていいモノ」を吟味して取り上げる月刊の新製品情報誌。生活家電とIT・デジタルガジェットを中心に、モビリティ・雑貨日用品・グルメ・お酒まで、モノ好きの「欲しい!」に結論を出す、がコンセプト。

2026年10月に酒税法改正を控え、さらなるシェア拡大が予想されるRTD(そのまま飲めるアルコール飲料)市場。定番ブランドの再ブーストに挑むマーケッターは、この波にどう立ち向かうのか。

キリンビール「氷結」ブランドマネージャー・資逸晴亮(すけいつせいすけ)さん
●大阪出身。大学で食品工学を学びながら、マーケティングに興味を持ち日清食品へ就職。『完全メシ』のブランドマネージャーなどを担当し、2025年10月にキリンホールディングスへ入社。

【資逸的ヒットの流儀】

1.“像”ではなく、実在するターゲットを探す
2.ライバルは同じ棚に並んでいるとは限らない
3.人の習慣を変えることにフォーカスする

飽和市場だからこそターゲティングは“広く”より“狭く”

コロナ禍以降の家飲み需要などもあり、缶チューハイはビールに次ぐ一大シェアを獲得。なかでも2001年に発売されたキリンビールの『氷結』は、ロングセラーブランドにもかかわらず2024年度も過去最高売上を更新するなど、RTD市場を牽引しているブランドだ。そして近年は無糖チューハイが順調に販売本数を伸ばす一方で、スタンダードシリーズは成長が落ち着いてきている。

「実際に売り場で棚を見ていると、RTDの棚は新製品も多く、ロングセラーのスタンダードシリーズが目に入りにくくなっているんですよね」と語るのは、2025年10月に『氷結』ブランドマネージャーに就任した資逸晴亮さんだ。

「弊社の調査でもブランドの認知度は高かったのですが、問題は売り場で選択肢としてお客様の目に入っていないこと。これはロングセラー特有の課題というか、お馴染みの商品ゆえに見慣れ過ぎて気付かれにくいんです」(資逸さん、以下同)

実は資逸さん、前職は日清食品で即席麺をはじめ多様な製品のマーケティングを手掛けていた。なかでもロングセラーブランドの多い即席麺市場において、若年層に向けた袋麺の新ブランドや新規事業に携わり、ヒット商品へと育てた経験を持つ。当時は日常的に、ターゲットがどんな店でどのようにラーメンを食べているか、どんな風に即席麺を購入するか、リサーチしに行っていたという。

「実際に足を運ぶと、『旦那の好きなラーメン店に家族で行く』、『自分が食べることよりも、子どがもおいしそうに食べている光景を楽しんでいる』といった生活者のリアルな姿が見え、事前に調査会社などからもらっていた調査結果からだけでは得られない発見が多くありました。
大切なのは、例えば『30代男性の70%はこれを選んだ』のような事前調査の結果があった場合、『30代男性』や『70%』といった属性や数値を大きいまま捉えるのではなく、どんな30代男性なのか、70%のなかにも様々な声があるのではないかなど、回答者ひとりひとりにフォーカスすること。それにより見えてくる世界があり、リアルなユーザー像につながっていくんです。成熟ブランドが多い分野だからこそ、ユーザーを広く想定するのではなく、照準を絞り解像度を上げていく。そうすることで彼らが持つ潜在ニーズに近づけたのだと思います」

現在担当している『氷結』でも、若年層構成比が高いシリーズがある。規格外の国産果実を原料に使い、売り上げの一部が農家へ寄付される『モッタイナイ!を、おいしい!に。プロジェクト』から生まれた、『キリン氷結mottainai』だ。

「味覚評価が高いのはもちろん、飲むことで良いことをした気分になれる点も彼らに受け入れられている理由のひとつ。それでいてパッケージが説教くさくなく、情緒的なデザインなので売場でも映えます。このバランスは絶妙で、他の競合にはない魅力だと思いますね。今の若い世代はサステナブル意識が高く、自分の中で納得のいく理由がなければ消費行動を起こしません。そんな彼らが“これを選ぶことは自分にとって良いこと”だと思える。お客様理解を大切にするキリンらしい、よくできた商品だと思います」

キリンビール
キリン 氷結 mottainai
オープン価格(350ml 実勢193円/500ml 実勢260円)

規格の問題で廃棄される果実を使うとともに、売上1本に付き1円が日本の果実農家支援に寄付される。2024年4月に「浜なし」(右)が第一弾商品として限定発売された。

【ヒットした理由】“味”と“共感”で若者の支持を掴み目標を大幅達成
「おいしさ」「社会貢献」「SNS上での評判」などが後押しとなり、若年層を中心にヒット。2025年夏の「尾花沢すいか」は農家からの逆提案で実現し、目標比119%の売り上げ。寄付金も約540万円集めた。

嗜好品市場はユーザーの「時間の取り合い」に発展していく

ターゲットの解像度を高めたうえでの“本当に伝わる”伝え方で、ユーザーの心の中の『氷結』ブランドの存在感を高めていくこと。そして商品を含め、「今、選ばれる理由」を作り出すこと。スタンダードシリーズを再びブーストさせるためにこれらをどう実現していくのか。

「『氷結』は本来、爽やかさや楽しさといった、缶チューハイの新しいイメージを切り開いたブランド。このイメージをさらに伸ばし、RTD市場の“AlwaysNew(常に新しい)”を作り続けていくことが大切だと考えています。今伸びている無糖シリーズやmottainaiシリーズももちろんですが、やはりそのカギを握るのはブランドの中心的存在であるスタンダードシリーズ。
そのためには既存の価値観に縛られない考え方も必要で、もしかしたら『定番=レモン』という考え方から見直してもいいかもしれません。また個人的に感じているのは、競合はお酒に限らないということ。お酒はお腹を満たす食べ物とは異なり嗜好品なので、飲む“時間”を奪うすべてのモノやコトがライバルになり得るんです。お酒って本当は何と戦っているのか。これもまた、今の価値観から見直す必要があると思っています」

たしかに多忙な現代人にとって、限られたオフを何に使うかは、人生の幸福感を左右する切実な問いだ。

「瞬間風速的なヒットで終わらないためには、人の生活習慣を変えるようなアプローチが必要で、それを見つけることが僕の役割。外食や他のチューハイでは満たせないものがあるから、『氷結』はこんなにも長く飲み続けていただけている。それを改めて見つけ、さらなる拡大に向けてしっかり伝えていこうと思います」

新製品で話題を集めるよりも、ロングセラーを再びブーストすることのほうがはるかに難しいが、資逸さんは「それが醍醐味」と語る。停滞していた即席麺市場で潜在的なターゲットをあぶり出したように、『氷結』にも新たな視点から光を当ててくれることを期待した。

↑「氷結 無糖」(右)は40~50代の酒好き層から熱い支持。すっきり飲みやすい「氷結 スタンダード」(左)は30~40代のライト層に好まれる。

※「GetNavi」2026年2-3月合併号に掲載された記事を再編集したものです。
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