ヘルスケア
2022/9/9 20:40

女性の不調を改善する食べ方とは?「油」が生理から更年期までの体を整える!

なんとなく体が重い、今月も生理痛がツラい、PMSがひどく仕事ができないなど、女性ならではの悩みを人知れず抱えている人は多いはず。また「体重が増えるのが怖い」と感じていたり摂食障害に悩んでいたりする人は現在、22万人以上にのぼりますが、その多くは女性であり、近年は“フェムケア”にも注目が集まっています。

 

不調の原因として知られているのが「女性ホルモンの乱れ」。これだけツラいのだから、体内でたくさん分泌されているだろうと思いますが、実は一生の間に作られる女性ホルモンの量はティースプーン一杯程度なのだとか。

 

女性ホルモンに振り回されないためにも、「食べることでフェムケア」しようと語るのは、管理栄養士の伊達友美さんです。2022年に著書『女性の不調は「油+」でよくなる』を出版しました。油でよくなる!? 私たちの固定観念を覆すタイトルですが、その真意を、伊達さんにうかがいました。聞き手は、@Livingでおなじみのブックセラピスト、元木忍さんです。

 


女性の不調は「油+」でよくなる 〜女性ホルモンに振り回されないための「食べる」フェムケア〜
女性ホルモンの材料は「油(コレステロール)」。そのため女性が抱えるさまざまな不調は、女性ホルモンの材料不足、つまり栄養不足が原因かも!? 「プラス栄養メソッド」を提唱する管理栄養士の伊達友美さんが、生理、妊活、更年期と女の一生を支える食べ方を紹介。食べて身体も心も上向きにする方法が満載。

 

1万円の美容液より、
2000円の油の方がコスパは高い!

元木忍さん(以下、元木):伊達先生の著書『女性の不調は「油+」でよくなる』を読ませていただいて、目からうろこが落ちることばかりでした。

 

伊達友美さん(以下、伊達):ありがとうございます。

 

元木:“食べたい時”に“食べたいもの”を食べることは、悪いことじゃないんだと思えて。私自身は、もともとPMSや生理痛の経験もなかったんですが、それが「体に必要なものを、知らず知らずのうちにちゃんと食べていたからだったんだ」と、この本を読んであらためて感じられました。
ところが多くの女性は、体の不調を訴えたり、食べることに必要以上に罪悪感を抱えています。最近の女性は、どのような悩みを抱えているのでしょうか?

 

伊達:最近は“天気頭痛”や磁場など自然界の影響を受けて、体調が悪くなる人が増えていますよね。昔は原因がわからなかったから「何か病気かな?」と不安に思っていた人が多かったと思いますが、いろいろな病気が知られるようになって「私だけじゃない」と安心できたかもしれませんね。

ただ、PMSや生理痛、更年期など「女性ホルモンには勝てない」と思い込んでいる人も多いんです。痛みをやわらげたり、生理中でも快適に過ごせたりする薬や生理用品などは充実しているのに、痛みやつらさはしかたがないものだとあきらめていて、根本から改善しようという人が少ないのが残念なところですね。

管理栄養士の伊達友美さん(左)と、ブックセラピストの元木忍さん。

 

元木:『女性の不調は「油+」でよくなる』を読むと、食べることがいかに大切か、あらためて実感できました。実は、美容のために高級な化粧品は使うのに、食生活は適当にしている人もたくさんいますよね(笑)、そういう女性たちにも、ぜひとも読んでほしいと思いました。

 

伊達:そうなんです。高級化粧品もたしかにいいものではあるんですけど、美容液は基本的に顔にしか使わないですよね? でも、油は口から食べることで全身に行き渡ります。1万円で顔にしか使えない美容液と、食べるだけで全身に使える2000円の油だったら、いったいどちらがコスパがいいですか? ということなんです。カサカサなお肌が潤って、きちんと生理も来て、PMSもやわらいで、毎日快適な状態でいられると思います。

 

元木:私の場合は、少し体調が悪く感じた時は、温かいものを食べて日本酒をキュッと飲んで寝たら、翌日は元気になっているタイプなんです(笑)。薬に頼らず、毎日体が必要としているだろうと感じるものを食べて、しかもお腹いっぱいになるまで食べていることが、元気でいる秘訣なのかもしれませんね(笑)

 

伊達:元木さんのような方がもっと増えてほしい! 今でこそ私も元気ですけど、若い頃に摂食障害を経験しています。当時は「カロリーが高いものは悪」と思っていたので、1日500カロリーしか摂取していませんでした。糖質も油も控えているのに、体重は増えるし不健康……、もちろん生理も止まっていました。いろいろなダイエット法を試してはリバウンドして、を繰り返してトータル5000万円近くは使いました。

 

元木:5000万円! たしかに中学か高校生ぐらいからダイエットを始めちゃう人がいますからね。私ぐらいの年でも、全然太っていないのに、いつもダイエットしなきゃって言っている人がいるので、実際に同じくらい使っている女性もいるのかもしれませんね。

 

伊達:何のためにお金を使ってきたんだろう、意地でも元に戻そう! と栄養学を学び始めた時に、油にはいい油とよくない油があるってことを知ったんです。

伊達さんはかつて、自分に自信がもてず無理なダイエットを繰り返していたといいます。

 

生理は1か月の成績表、
更年期は卒業試験と心得る

元木:伊達先生がこの世界に入ったきっかけには、どんな出会いがあったのでしょうか?

 

伊達:カナダで有名な油の本を出版されている先生が日本で講演をされた時に、とっても若々しくて感激したんです。油について勉強していくほど、脳にも、肌の潤いにも、女性ホルモンにも油は欠かせないことがわかってきました。また加齢とともに身体の水分量は失われていきますが、脂質量って増えるんですよ。それからとにかくしっかり良質な油を取り入れるようになったら、28日周期で生理は来るし、PMSも頭痛も腰の痛みもなし! これが普通の生理なんだって30代後半で知りました。

 

元木:なるほど30代後半で、油の重要性に気がついたのですね。

 

伊達:生理は、1か月に1回やってくる身体の“成績表”なんです。経血を作るのに十分な栄養が体内にあれば、PMSも生理痛もありません。経血を作る栄養が足りないとなれば、それを補充するために身体は食欲を増加させます。でも、そもそもの栄養が足りない人は経血を作れないから、全身のありとあらゆる血液を子宮まわりに集めてくる必要があるんです。そうすると、あちこち酸欠になったり、栄養不足になります。まるで子宮に引っ張られているかのように、頭が痛くなったりお腹が痛くなったり、全身のいろいろなところに痛みが出てしまいます。

栄養が足りていればそういった不調がない、つまり“合格”ということ。お腹が痛いなど不調があれば今月の栄養は足りていなかったということで、“不合格”なんです。

『女性の不調は「油+」でよくなる』には、「女の一生は、油で決まる」という衝撃的な一文が!

 

元木:生理が成績表だなんて、とてもわかりやすい発想ですね。でも、栄養不足からの不調だとわからないと、食べ物で治すということに気がつかないですよね。ここはちゃんと理解をしなくてはならない重要なポイントです。また、更年期障害を訴える女性も増えてきているようですね。

 

伊達:更年期障害は、初潮から閉経までの“卒業試験”というイメージでしょうか。毎月、不合格の赤点を取っていたら“落第”してしまいますが、途中から頑張れば挽回できます。優秀な“成績”で卒業証書をもらうために、食べることで身体を変えていけるんだよって知ってほしいですね。

私も30代後半まで生理は止まっていたり超不順でしたが、食事を見直して、足りていなかった栄養をプラスすることで、何とか優秀な成績で卒業証書をいただきましたよ。いわゆる更年期障害はまったくありませんでした。

 

気をつけるべきは
「油」と「水」だけ

元木:「よし、今日から油を!」って思った方も多いと思うんです。でも、ただ「油」を摂ればいいってわけじゃないんですよね?

 

伊達:油には、種類があるというところからご説明しますね。

まず油には、身体の中で作れる油と作れない油がありますオメガ3系脂肪酸は、身体の中で作ることができないので、食事から摂る必要がある油です。旬のシーフード、くるみ、あまに油、えごま油などに多く含まれています。

もうひとつ大切なのは、絞り方。低温・自然抽出されているものか、薬剤抽出されているかで油の質が変わってきます。低温・自然抽出されている油を選びたいですね。けっして値段が高ければいいというものでもないので、油脂の種類と絞り方をチェックして購入するようにしましょう。

『女性の不調は「油+」でよくなる』より、油の種類の分布チャート。

 

元木:油といえば、炒め物や揚げ物にはよく使っていますが、それ以外で日常生活の中でどうやって “油+”を摂取するのがいいのでしょうか?

 

伊達:普段の生活の中でオイルを生で取り入れることは、あまり習慣化されていないですからね。基本的に何にでもかけてOKです。自分が好きな味かどうか、それが一番大切。ソイラテやスムージーに少し、スープやお味噌汁なんかにも合いますよ。

 

元木:お味噌汁に“油+”もアリなんですね! この本の中には、納豆にも“油+”と書いてありましたので、早速トライしてみました。お刺身に“油+”したらカルパッチョみたいに楽しめますよね。

 

『女性の不調は「油+」でよくなる』では、さまざまな食品への“油+”が提案されています。

 

伊達:そうなんです。また、食べ物に気をつけましょうと言われると、まず「いい食材を」って思う人が多いと思うんですが、私がこだわっているのは「水」と「油」だけなんです。オーガニックとか、こだわりすぎると経済力が必要なので、スーパーの特売品も買っちゃうし(笑)

 

元木:水と油だけですか?

 

伊達:人間の身体の半分以上は水分でできていますよね。そして20〜30%は脂質(油)で構成されています。つまり身体の7割は水と油なのだから、そこをいいものに変えていくだけでいいと思ったんです。あとは、じっくり染みてくるのを待てばいいんです。

 

食べたい時にたくさん食べるのは
「食べ過ぎ」ではない!?

元木:具体的に油を摂取して健康になるというのはイメージできたんですが、それ以外に身体にどんな影響があるのでしょうか?

 

伊達:体質はもちろんのこと、性格まで変わりますよ。

 

元木:本当ですか!?

 

伊達:私自身がこれは立証しています(笑)。私の子ども時代は、いじめられっ子で登校拒否だったし、コミュニケーション能力もゼロでした。虚弱体質だったので、診察券でトランプができるくらいいろいろな病院にかかっていたんです。でも今は、元気に病院でも働いてますから(笑)

 

元木:以前の姿が想像できません……!

 

伊達:相談にくる方のなかには、恋愛経験ゼロだったのが体も心も健康に美しくなって、「先生、お嫁にいきます」って薬指の指輪を見せてくれることもありますよ。あと、出世する方も多いです。生きることが楽しくなって、すべてがポジティブに進むようになるんですよね。
脳は脂質(油)でできているって話をさきほどしましたが、いい油が体に染みてくると余計なことを考えなくなるので、クヨクヨしたり、悩んだり、ストレスを感じることが減ってくるのかもしれません。

 

元木:逆に油が少ないと、クヨクヨしちゃうってことですよね。あと、私が個人的にすごく納得できたのが「食べ過ぎの定義」についてです。『食べたいときが、食べるべきとき』ってフレーズが心に響きました。

「本当に食べたいものは、自分にとって必要なもの」。食べたいのに我慢するのが、もっとも心身に負担をかけるのです。

 

伊達:食べ過ぎって他人に決められるものじゃないですからね。よく「腹八分目」っていいますけど、胃にメモリってあったかしら? と思うし(笑)。気をつけたいのは、お腹いっぱい食べた翌朝、お腹が空いていないのに朝食を食べてしまうこと。夜「ラーメン食べたい」「ポテトチップス食べたい」という欲求には従っていいけれど、3食決まった時間にとか、お腹が空いていないのに食べてしまうのは食べ過ぎということです。

 

元木:「あぁ〜食べ過ぎちゃった」って口癖もやめた方がいいんですよね?

 

伊達:もうこれは、太る原因ナンバーワンです! 食べたことを反省する必要はありません。本能なんだから、「おいしかった!」でいいんです。問題はその後、本当にお腹が空くまでは食べないことです。

 

元木:これは個人的にも興味があるのでお伺いしたいのですが、病気で糖質を制限している人を除いて、ダイエットを目的に「お米を食べない」「お肉を食べない」って人多いじゃないですか? やっぱりお米って太るのでしょうか?

 

伊達:ごはんは水分を多く含んでいるので、夜食べて翌朝体重計に乗ったら体重は増えます。でも脂肪が増えたわけではないんです。ここ90年で、日本のお米の消費量は半分ほどにまで落ち込みました。それなのに、糖尿病と肥満は増えています。これって、お米が太る原因ではないと思うんですよね。

むしろ食べた方がいいと私は思います。和食は口内調味を楽しむ料理です。最初に温かいお味噌汁で胃腸をウォーミングアップしてから、ごはんといっしょに食べていくことが日本人には合っていると思いますよ。

食料自給率が先進国の中で圧倒的に低い日本で、自給率100%が、お米。ごはんの価値は、最近徐々に見直されるようになっています。

 

元木:たしかにそうですね。食べ方に関しても日々情報ってアップデートされていますが、情報があり過ぎて正しい情報を拾えなくて困っている人も多いですよね。『女性の不調は「油+」でよくなる』で先生が伝えてくださることは、これから不調を訴えている人たちへの救いの言葉になると思います。

 

伊達:ありがとうございます。なんでも基礎って大事なんですよ。建物だって基礎工事を怠ったら崩壊しますよね? それは人間の身体だって同じです。最終的に大切なのは、自分が心地いいか、幸せか、ということです。いろいろな情報がありすぎて、これはダメ、あれもダメって言われることがすごく多い世の中です。どんな健康情報も、自分に合うか合わないかで判断してほしいですね。

 

元木:食べたもので身体や細胞が作られるっていうのは事実ですからね。

 

伊達:いろいろと試すのは悪いことじゃないんです。ただ合わないのに続けているのはどうなんでしょう? 例えば、シャンプーは生まれた時から今まで、成長していく中で自分に合うもの・合わないものがわかってきますよね。子どもの頃からずっと同じシャンプーを使っている人は、ほとんどいないと思います。

ところが、食べ物に関しては「同じでいい」と思っている方が多いんです。子ども向けの食育は積極的にやっているのに、大人の食育は公的にはあまりされていません。大人はもう成長しなくていいのに、成長するための子供の食生活をしているからメタボリックシンドロームになっちゃうんです。

自分のお腹が空いた時に、食べたいものを食べる。大人はもう、それでいいんですよ。

 

元木:自分にちゃんと向き合って、自分自身に正直になることがポイントかもしれないですね。食事で心も身体も変えられる、本能で食べたいものを食べて、元気な人が増えたら、世界はもっと元気になれるかもしれませんね。

 

伊達:そう思います。まずは「油」と「水」からこだわってもらえたらうれしいですね。

 

【プロフィール】

管理栄養士 / 伊達友美(だてゆみ)

管理栄養士、日本抗加齢医学会認定栄養士、戸板女子短期大学食物栄養科講師。食事カウンセラーとして、クリニックやスパなどで32年間にわたって食改善アドバイスを行う。制限型の食事ではなく、代謝アップの栄養をプラスする「プラス栄養メソッド」を基本とした指導法で、健康で美しくありたいと考える多くの女性たちから人気を集めている。自身の25kgのダイエット、ニキビ肌改善、摂食障害克服の経験を踏まえながら、テレビや雑誌などでも活躍中。

※「プラス栄養メソッド」は伊達友美さんに帰属する登録商標です。