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2016/9/18 21:48

ワインは「難しい飲み物」じゃない! ベストセラー著者が提案する 「ワインと料理のマイルール」

「ワインは嫌いじゃないけれど、なんだかとっつきにくいからお店ではおまかせ」という方は意外に多いのかもしれません。スーパーへ行ってラベルを見ても戸惑うばかりという人も、勘所さえおさえれば大丈夫。今回は、 ワイン好きライター柴田さなえさんが、意外な料理とワインのマッチングについて皆さんに語り 、リーズナブルに楽しみながらワイン力を上げてもらう「家飲みワイン入門」をレクチャー。あまりむずかしく考えすぎないでOK ! ワインはあくまで楽しむもの。気軽に試して、あなたの好きなワインと料理のルールを見つけてください。

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まずは身近な料理と

ワインの組み合わせを試してみましょう

みなさま、はじめまして。編集デュオ「おいしいしごと」の柴田のさなえと申します。デュオ名からもお察しいただけると思いますが、「食」にまつわるあれこれを書くことを職業としています。昨年には、新書『男と女のワイン術』をはじめ2冊(ともに日本経済新聞出版社刊)を上梓、ワインの買い方、頼み方、食事との合わせ方……の虎の巻のような本です。いままでの、「ワインは少し距離がある飲みもの」といったイメージを覆す、目からウロコなお話満載ですので、機会があれば目を通されてみてください。

 

そんな本を書いていることもあり、今回この記事は、「ワインと意外な料理の相性について」がお題です。

 

雑誌でも、餃子にワイン、寿司にワイン、漬物にワインと、 いわゆるナイフ/フォークで食すものではない、 身近な料理との組み合わせ企画をよく見かけるようになりました。そのくらいワインがテーブルにのぼる機会が増えたのと同時に、そもそも和洋折衷なんでもありのわたしたち日本人の食卓では、そのくらいの寛容さが なければワインを飲むこと自体 難しい気がしています。

 

実際として最近では、ワインと料理の合わせ方うんぬんなど、難しいことを考え なくても、多くの方が自分のルールで楽しそうに飲んでいるなあ、というのがわたしの印象です。だからと言ってはなんですが、こちらでお話しするのも、あくまでもわたしのルール。普段わたしが楽しんでいる方法に過ぎませんので、もっとぴたりと寄り添う組み合わせがあるかもしれませんし、みなさんが発見したら、ぜひ教えていただきたい。そんな感じで一緒に探っていけたら幸いです。

 

蒸し暑さが残る季節には――

スパイスやハーブ、野菜の爽やかさを

前置きが長くなりました。本題に入りましょう。

 

まずワインと料理を合わせるときの考え方は、2通りあります。

 

・「今日はこれを飲みたい!」とワインありきで料理を考える
・「これを食べる! 」と決まった料理からワインを選ぶ

 

まだまだ蒸し暑さが続く9月、なかなか食欲がわかない季節にさしかかっていますので、食指が動く料理を優先、すなわち後者の方法で考えてみました。

 

残暑に食べたい料理……。

 

真っ先に思い浮かんだのは、タイ料理。フレッシュなハーブや生野菜を使い、独特のスパイス感に、辛さ&酸味のきいた味付けが、体内なのか、脳内なのか、どこかにある食欲のスイッチを刺激してくれるのが不思議です。

 

なかでも、わたしが よくオーダーするのが、青パパイヤを使ったサラダ「ソムタム」。たっぷりの生野菜を甘辛く、 旨みのあるドレッシング(レシピは後述) で絡めたひと皿は、体内の枯れた水分を補い、食気を覚醒させてくれます。

 

レストランへ出かけられないときは、自宅でもつくります。青パパイヤはなかなか手に入りませんが、本格的な材料がなくても大丈夫。野菜のせん切りで代用できます。きゅうり、にんじん、セロリ、キャベツ、大根(旬ではないですが、入れてもOK) などスーパーで買えるものに加え 、みょうがやシソを入れてもアクセントになります。これをドレッシングで和えてもよいですが、おすすめはレタス巻き。せん切り野菜を適当な大きさにちぎったサニーレタスなどに巻いて、ドレッシングに漬けながら食すのです。レタスでぎゅっと巻くことで、大量の野菜もコンパクトになり、思ったより野菜をたっぷり摂ることもできるのが嬉しいところです。

↑せん切り野菜はきゅうり、セロリ、キャベツ、大根など。みょうがやシソをアクセントにして、大きくちぎったサニーレタスに入れる野菜たっぷりの野菜巻
↑せん切り野菜はきゅうり、セロリ、キャベツ、大根など。みょうがやシソをアクセントにして、大きくちぎったサニーレタスに入れる野菜たっぷりの野菜巻

 

ドレッシングの材料はざっと、ナンプラー(大さじ2)、レモン汁(大さじ3)、砂糖(大さじ1/2)、水(大さじ2)、にんにく(1/2片)、赤唐辛子の輪切り(小さじ1/2)、オリーブオイル(大さじ1)です。

↑ドレッシングの材料。レモン汁やオリーブオイルは大抵のご家庭にあるでしょうし、ナンプラーもおそらく近くのスーパーでも手に入ります。にんにく、赤唐辛子、砂糖を加えた「辛くて、酸っぱくて、甘い」エスニックな味が食欲を刺激します
↑ドレッシングの材料。レモン汁やオリーブオイルは大抵のご家庭にあるでしょうし、ナンプラーもおそらく近くのスーパーでも手に入ります。にんにく、赤唐辛子、砂糖を加えた「辛くて、酸っぱくて、甘い」エスニックな味が食欲を刺激します

 

シャルドネ種の白ワイン選びのポイントは

産地の気候と樽熟成かどうか

これをきりっと冷やした白ワインで流し込むのがわたし流。

 

このときチョイスするのは、スーパーで1000円前後の、チリやオーストラリアなど、いわゆるニューワールドのシャルドネ種のもの。味わいの特徴としては、ワイン単体で口に入れたとき、甘いような風味や濃さ、喉越しがグッとくる感じです。香りも味わい同様に強く、爽やかな柑橘系フルーツ、ものによってはトロピカルフルーツや、蜜っぽいニュアンスがあります。具体的な香りと結びつかなくても、「飲んだら甘いだろうな」という感じをまずは探ってみてください。

 

このような風味を多くのワインの本や記事では、「果実味が強い」「フルーティ」と表現しています。このタイプのワインは、ひと口目からわかりやすい味わいと感じる人も多いでしょう。

 

ちなみにシャルドネ種の白ワインは、いまや世界中で造られています。このぶどうがおもしろいのは、産地や醸造法によって仕上がるフレーバーが大きく変わること。原料用ぶどう自体に際立った特徴やクセがないので、造り手の意志が反映されやすいのです。そのため「個性がないのが、シャルドネの個性」などとも言われるくらい。

 

それぞれの地域のざっくりとした特徴を挙げてみます(造り方によってガラリと表情を変えるので、あくまでもおおまかなもの)。

 

フランス・ブルゴーニュなど冷涼な産地では酸味が印象的、フランスでも南下してラングドックなど、イタリア、スペインなど穏やかな気候の地中海沿岸の国々のものは、ブルゴーニュのものよりも果実味を感じるようになります。さらに赤道近く、チリやオーストラリアなど温暖な産地のワインはより果実味を感じるでしょう。イメージとしては太陽が照りつける国で造られたワインほど「果実味が強い」と覚えておくとよいでしょう。

 

もうひとつ、シャルドネのワインの特徴と言えば、ナッツやバター、スモーキーなフレーバー。ときにバニラっぽく感じることも。これは樽を使って発酵・熟成させたワインに感じるニュアンスで、「樽香」と言われます。

 

お店でシャルドネのワインを選ぶときは、
・産地の気候
・樽を使っているか
を聞いてみると、味の好みをはかる目安になります。

 

料理の素材を理解して

ワインの味わいとのバランスで組み合わせてみましょう

さてご紹介したたっぷり野菜巻き に、このワインをチョイスしたポイントは、ドレッシングの調味料3つにあります。

 

ひとつ目は、ナンプラー。小魚を塩漬けにして発酵・熟成させた魚醤は、クセのある風味とくっきりとした塩けで存在感のある味です。このように強い味わいのものを食すときには、ワインも同じくらい強い風味のものを選びます。すると、互いが互いの強さを緩和してくれて、料理をひと口食べてワインを飲んで、という ループが楽しくなります。これぞ料理とワインをともに楽しむ醍醐味!

 

ふたつ目のレモン汁は、ワインと料理の重要な架け橋。お酢でもよいのですが、比べてみると相性のよさは歴然。レモン汁に含まれる柑橘のニュアンスが白ワインとマッチするようです。ですので、今回紹介したドレッシングも酸味をレモン汁にすることで、よりワインと料理を寄り添わせてくれます。

 

そして3つ目は、砂糖。タイ料理をはじめとしたエスニック料理は、「辛くて、酸っぱくて、甘い」が特徴のひとつですが、ワインと合わすためには、砂糖の量は控え目に、が鉄則です。どんなに甘いみかんでも、チョコレートの後に食べると酸っぱく感じますよね。理屈は同じ。砂糖をきかせた料理にワインを飲むと、極甘口以外は、酸味を強く感じるはず。ドレッシングの分量に、砂糖大さじ1/2としましたが、これもその日のワインの味わいによって調整してみてください。

 

大きなポイントはこの3つですが、ほかにも、にんにくを入れ過ぎるとワインが負けてしまう場合がありますし、唐辛子たっぷりならワインはもっと甘いニュアンスが強いものがおすすめ。 辛さをかき消してくれます。

 

こんなふうに微調整しながら、ワインと料理のベストマッチを探ってみてください。

 

そうそう、最後に大切なことをひとつ。それは、温度。ワインは、ワインの温度とそれを飲むときの気候によって味わいの印象がかわります。蒸し暑いこの季節に、果実味の強いシャルドネを飲むなら、キンと冷えたものがわたしは好きです。もし冷やし過ぎだなと思っても、外気に触れて段々と温度は上がってきますし、上がり過ぎて「甘すぎる!」と感じた場合は、また冷やしてください。冷たくなると、果実味(甘味)は減って酸味が引き立つので、湿度の高い夜には最適ですよ!

 

今回の料理に合わせたいリーズナブルな家飲みワイン

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カッシェロ・デル・ディアブロ シャルドネ 2015

Casillero del Diablo Chardonnay 2015

『悪魔の蔵』という名のワイン。名前の由来は盗み飲みからワインを守るため、悪魔がいるという噂を流したという逸話から。果実らしさが存分に見られるフレッシュな始まりでパイナップルやモモのアロマ、そしてフレンチオークにて熟成させたことによりヘーゼルナッツが感じられます。最後に洋梨や白桃の繊細なヒントがトースト香とともに見つかります。2015 ヴィンテージは2016年ジャパン・ウーマンズ・ワイン・アワード”さくら”銀賞の受賞暦をもつ。このワインに合わせたい料理は他に、ヒラメやカレイなどの魚介のグリルにケーパーやハーブのクリームソース添えなど。

 

 

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サンライズ シャルドネ 2015

Sunrise Chardonnay 2015

年間300日の日照があるマウレ・ヴァレーのブドウだけを使用して造られたワイン。太陽の惠はリンゴ、洋ナシ、白桃、そしてパパイヤやパイナップルなどのトロピカルフルーツのフレッシュな香りとなって結実。酸味と果実香が非常に高いレベルでバランスをとっている辛口白ワイン。2015ヴィンテージは2015年インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)銀賞/ベスト・イン・クラスの受賞暦をもつ。このワインに合わせたい料理は他に、スモークサーモンや鴨の燻製、魚介類全般(特にカニ料理)など。

 

 

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フロンテラ シャルドネ
Frontera Chardonnay

芳醇で複雑なアロマ、さわやかな酸味とリッチな果実味の“世界で一番売れている”チリワイン辛口白ワイン。2015年チャレンジ・インターナショナル・デュ・ヴァン(仏)銅賞、2014年インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)銅賞、2014年インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)銅賞の受賞暦をもつ。このワインに合わせたい料理は他に、野菜天ぷら、アスパラのベーコン巻、焼き鳥(塩)、白子のポン酢和え、豚シャブ、グラタン、クリームシチューなど。

 

構成・文=柴田さなえ フードスタイリング=神保麻美 撮影=ナナイロ社

 

【執筆者プロフィール】

柴田 さなえ

食のライター。フリーランスのエディターとして活動後、2008年編集デジュオ「おいしいしごと」を立ち上げ、現在に至る。雑誌に食やワイン関連の記事を執筆するほか、食の現場における書籍を企画・編集。企画・執筆を担当した共著『男と女のワイン術』『男と女のワイン術 22杯め ―グッとくる家飲み編 』は9万部、編集を担当した自然栽培に関する『ほんとの野菜は緑が薄い(河名秀郎著)』(いずれも日本経済新聞出版社)は3万部を超える。現在、九州の食を伝える雑誌『九州の食卓』にて、九州のワイナリー巡りの記事を連載中。

 

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