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2023/4/29 18:00

サワーもイベントもバブリーだった! 醸造トップが語る「麒麟百年」開発秘話

4月4日に新発売した「麒麟百年 極み檸檬サワー」。キリンビールにとっても気合いの入った商品で、発売前日には特別仕様の限定列車「麒麟百年新幹線」を東京駅から京都駅まで走らせるという、前代未聞のイベントが開催されたほど。イベントの内容にも興味津々ですが、醸造責任者であるマスターブリュワーにインタビューできるということもあって、勇んで乗車。モノづくりに込めた思いに迫りました。

 

↑東京駅にて。左はキリンビール執行役員 マーケティング部長の山田雄一さん。右は言わずと知れた、CMに出演している俳優・西島秀俊さん。西島さんの映画初出演作は『居酒屋ゆうれい』で、お酒とも縁の深い役者です

 

一口目の味わいの感じ方はビールを上回る

まずは「麒麟百年新幹線」について。新型新幹線N700Sの一部車内がシャンデリアなどで特別ラッピングされ、そのなかで西島さんがトークしたり、「麒麟百年 極み檸檬サワー」とともにコース料理がふるまわれたりと、贅沢な内容でした。

↑「本格派で高級。お酒好きな人がゆっくり飲みたくなるレモンサワーですね」と西島さん。「きのう何食べた?」ならぬ「きのう何飲んだ?」と聞かれれば、そりゃあ「麒麟百年 極み檸檬サワー」でしょう(筆者の妄想)

 

実は、企業だけでなく個人でも車両貸し切りはできるそうですが、JR東海によれば、東海道新幹線の貸切車両パッケージが企業のPRイベントに使われたのは初めてとのこと。

↑料理は前菜、メイン(写真)、デザートのコース仕立て。なお「麒麟百年新幹線」には事前の抽選に当たった10組の方々も、メディア関係者とは別の車両に乗車していました

 

ではあらためて、「麒麟百年 極み檸檬サワー」の特徴に迫りましょう! 味わいの特徴は大きく1つめはキリンビール初となる、選び抜いたビール酵母で発酵させたレモン果汁を一部使っていること。2つめが、複数のレモン果汁による、ギュッと詰まったレモン感と複雑味。そして、3つめがビールの泡にヒントを得た、きめ細やかな泡によるなめらかな口当たりです。

↑配布された資料より。なんと、口に付けた瞬間の味わいの感じ方はビールをも上回っているといいます

 

コアな要素であるビール酵母発酵によるレモン果汁と複数のレモン果汁は、特別にサンプルをテイスティングさせてもらいました。飲んでみると、同じレモン果汁でも酸味やコクが段違い。これらを巧みにブレンドすることで、「麒麟百年 極み檸檬サワー」の味を設計していることがよくわかります。

↑例えば発酵させてない果汁は、ストレートな酸っぱさ。一方で発酵レモン果汁には醸造っぽいコクがあり、またレモンビネガーといえるような深みのある酸っぱさです

 

そして「麒麟百年 極み檸檬サワー」をグラスに注ぐと一目瞭然なのが、ボリューミーでシルキーな泡。前述の通りビールの泡にヒントを得たそうですが、液面に形成される泡の大きさは、キリンビールの他の缶チューハイと比べて約8分の1のきめ細かさになっているとか。

↑グラスに注ぐことでよりポテンシャルを発揮する、バブリーな泡。加えて、香りのボリュームも鮮烈です

 

最適な酵母を探した結果、行き着いたのがビール酵母だった

これまでにない特徴を持った「麒麟百年 極み檸檬サワー」は、どのようにして生み出されたのでしょうか。キリンビールの醸造責任者である、マスターブリュワーの田山智広さんにインタビューしました。

↑田山智広さん。ビール類や缶チューハイなどの開発時にゴーサインの最終チェックを行うことから、“味の番人”とも呼ばれています

 

「麒麟百年 極み檸檬サワー」の誕生の経緯は、2021年3月にデビューした「麒麟 発酵レモンサワー」の開発時にきっかけがあったとか。それは、発酵によって生み出される複雑な味わいでした。

 

「この技術をもっと突き詰めて、絶対に真似できない凄い発酵素材を作ろうというところがスタート地点でした。発酵といっても、素材も酵母もたくさんありますし、発酵温度によっても味わい方が全く変わってくるんですね。そういったものをいろいろ試して、味のバランスがよく、変なフレーバーにならない組み合わせを導き出しました」(田山さん)

 

酵母に関しては、試行錯誤の末に最も適していたのが、結果的にビール酵母のひとつであるエール酵母でした。

 

「上面発酵(液面でビールの発酵が進む)のエール酵母はフルーティーさや華やかな風味づくりが得意で、後から思えばレモン果汁の発酵にエール酵母が合致したことには納得でした」(田山さん)

↑車内に特別展示された果汁とともに、ビール酵母のサンプルも

 

商品名で気になるのは、製法に大きな特徴がありながら、あえてそれを用いなかった理由です。自社のアイデンティティともいえるネーミングをタイトルに付けるプロダクトは、キリンの新ジャンルビールにおける大ヒット商品「本麒麟」にも通じるもの。そのあたりはどうなのでしょうか?

 

「ひとつは、ビール酵母だからこそ『麒麟百年』という商品名がふさわしいと思ったんです。私たちは100年以上昔からビールを造り続け、醸造技術や酵母発酵を研究してきた企業ですからね。あとはお客様に、私たちの自信作であることやこれまで以上に高品質なレモンサワーであることを、直感的にお伝えできたらという思いもありました。缶チューハイとしてはやや高価格帯のレモンサワーですし」(田山さん)

↑公式サイトより。1885年、横浜山手のスプリングバレー・ブルワリーの跡に、キリンビールの前身であるジャパン・ブルワリー・カンパニーが設立したのがルーツ(その後1907年に麒麟麦酒株式会社が創立されました)

 

なぜシルキーな泡になる?

泡がきめ細かくなる理由について尋ねると、「これは説明するのがなかなか難しいんですよね。というのも、様々な要素によって泡がきめ細かくなるからなんです」と田山さん。

 

「例えば、レモンの果汁だけでなく繊維のパルプによる泡立ちとか。ほら、『麒麟百年 極み檸檬サワー』ってけっこう濁りがありますよね。これは皮ごと搾った果汁や混濁レモン果汁などによるものなんですが、そういった素材の組み合わせも関係しています。あとは、泡をつくり出すだけではなく長く保持できるように調整するなど、そういった味覚設計の賜物ですね」(田山さん)

↑「もちろん缶からそのままでもおいしいのですが、形は何でも構いませんので、ぜひグラスに注いでいただきたいです」と、にっこり

 

キリンの缶チューハイといえば、「キリン 氷結」をはじめ数々のブランドがあるとともに、様々なフレーバーで展開されています。前述「麒麟 発酵サワー」にもレモン以外に「麒麟 発酵ジンジャーサワー」があり、「麒麟百年 極み檸檬サワー」にも今後エクステンション(既存ブランドの新商品)が登場するのでしょうか?

 

「まずは『麒麟百年 極み檸檬サワー』をお楽しみくださいというところですが、もちろんエクステンションにもチャレンジしたいです。それに実際、レモン以外の果汁も発酵させるなど、試作は続けています。開発には終わりがありませんからね。ただ、これだけ満足度の高い製品ができたので、負けないおいしさとなるとハードルがすごく高いんですよ。でも、ご期待ください!」(田山さん)

↑そして「麒麟百年新幹線」は京都に到着

 

何はともあれ、味、香り、シルキーな泡のライブ感などなど、圧倒的にハイクオリティーな「麒麟百年 極み檸檬サワー」。筆者も個人的に2023年上半期のヒット商品としても注目している商品です。ぜひお試しを。