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2015/12/1 11:02

【西田宗千佳連載】10年ペンにこだわったマイクロソフトの執念

「週刊GetNavi」Vol.37-2

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マイクロソフトが初代Surfaceを発売したのは、2012年のこと。Windows 8で、OS戦略を大きく変更した時だ。だが、マイクロソフトとペンの関係は10年にも渡るものであり、Surfaceからのアプローチは「新しい一章」といった方が適切である。

 

IT業界では定期的に、ペンに対するアプローチがブームになってきた。マイクロソフトも、古くは1992年にOS「Windows for Pen」を開発し(なんとベースは95より前、Windows 3.1だ!)、97年にはPDA向けOSとして「Handheld PC」「Pocket PC」などを手掛けた。だがそれらは、決して実用的とは言い難かった。

 

しかし、2002年にマイクロソフトが発表したOS「Windows XP Tablet PC Edition」は少々違っている。例えば、OneNoteに手書きでメモをとりながら音声を録音したり、ストレスのない速度で漢字仮名交じり文を手書き入力したり、といった要素は、この当時にすでに実現されている。このOSを搭載したPC本体の質量やバッテリー動作時間、ペンの精度こそ違うが、やろうとしていることはSurfaceと変わりない。当時のハードウェアは未熟で、その結果ヒットには至らなかったものの、「PCに手書きを持ち込むとどうなるか」は、当時すでにかなりの精度で予測されていた、といえる。「Windows XP Tablet PC Edition」や、そこで不可欠なアプリである「OneNote」の開発には、OSチームではなく、MSオフィスの開発チームが深く関与していた、という。マイクロソフトにとっては、ある意味、次世代のオフィス環境を考える試みだったのだ。

 

一方、マイクロソフトはPCというハードウェアは開発してこなかった。「Windows XP Tablet PC Edition」についても、パートナーとの共同作業だった。初期にもっとも成功したHPのタブレット「TC1000」シリーズも、実は元々、HPが買収したCompaqが、ある大学から依頼を受けて開発中だった「大学内で学生が板書して勉強に使うためのPC」を流用したものだったという。その後も、なかなか理想に遠い時代が続いた。

 

Windows 8でビジネスプランを変える時、マイクロソフトとしては、いままでやってきたペン路線で、「こんどこそ思い通りのハードウェアを作る」と決めたのだろう。複数のマイクロソフト関係者が、Surfaceについて「スタイルを作る」ことが狙いだった、と話している。マイクロソフトが作りたいものを作るまでには、結局、ビジネス環境を変える必要があった、ということなのだろう。

 

では、今後PCとペンの関係はどうなるのか? その辺は次回Vol.37-3で考えてみよう。

 

●「Vol.37-3」は12/8(火)ごろ更新予定です。

 

 

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