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2023/2/22 6:30

小野莉奈「1/4の確率で“この子の気持ち、よく分かるなぁ”と思える作品に」映画『少女は卒業しない』

直木賞作家・朝井リョウ氏の連作短編小説を原作に、廃校前の高校を舞台に4人の少女の卒業式までの2日間を描いた『少女は卒業しない』が2月23日(木・祝)より公開。河合優実さんら若手演技派が共演する本作で、進学のため上京するバスケットボール部部長・後藤由貴を演じた小野莉奈さんに本作への思いや、現在22歳の小野さんが感じていることなどを語ってもらいました。

 

小野莉奈●おの・りな…2000年5月8日生まれ。東京都出身。主な出演作に映画『アルプススタンドのはしの方』『左様なら今晩は』、短編映画『牡丹の花』、ドラマ『中学聖日記』『コントが始まる』『部長と社畜の恋はもどかしい』、大河ドラマ『青天を衝け』など多数。今後の出演作に、23年公開予定の映画『真夜中のキッス』がある。Instagram

【小野莉奈さん撮り下ろし写真】

 

どこかキラキラした“光”や“希望”のようなシーンになってほしい

──最初に、脚本を読んだときの感想を教えてください。

 

小野 4人のヒロインがそれぞれジャンル分けされているので、後藤を演じる自分に与えられた役割やバランスみたいなものを見つけていかなきゃいけないと思いました。後藤はバスケ部で部長をやっていることもあって、4人の中では一番明るい性格で、責任感の強い女の子だと思いました。そう言えば、私、よく「バスケしてそうな顔」って言われるんですよ(笑)。

 

──そんな後藤も、“ある悩み”を抱えていますよね。

 

小野 高校を卒業して、東京の大学への進学が決まっているので、地元に残る彼氏の寺田(宇佐卓真)との関係性に悩んでいます。現実的な考えを持っている大人っぽい部分もありつつ、特別な悩みというより同じようなことに悩んでいる子が多いだろうと思いました。この映画は4人の少女それぞれがいろいろな悩みを抱えていて、中には重いテーマも扱っている作品なので、私が出ているパートだけは、どこかキラキラした“光”や“希望”のようなシーンになってほしいという気持ちもありましたね。

 

「ずいぶん大人っぽくなったね」と言われました(笑)

──リアリティーを求める中川 駿監督とのリハーサルや演出はいかがでしたか?

 

小野 撮影前に、彼氏役の宇佐卓真さんや親友役の坂口千晴さんと一緒にリハーサルをみっちりしました。でも、そのときには自分の中で後藤という役は出来ていて、中川 駿監督にいろいろ聞くというよりは、「私、こんな感じで後藤を分析したんですが、いかがですか?」という感じで撮影していきました。監督は私のアイデアにすごく寄り添ってくださったのでかなり自由にやらせていただきました。

 

──完成した作品を観た感想は?

 

小野 4人それぞれのパートのバランスが取れている感じがしました。だから、お客さんが観たときに、1/4の確率で「この子の気持ち、よく分かるなぁ」と思えるんじゃないかと。すごく青春している感じも伝わると思うし、いろんな人から共感を得られる作品になったので嬉しかったです。あと、2回目を東京国際映画祭の上映で観たんですが、自分の顔があんな大きいスクリーンに映し出されることが初めてで、素直に恥ずかしかったです(笑)。そのとき、両親も観に来ていて、2人の心にも響いたように、この映画は年代など関係なく、楽しめる作品だなと改めて思いました。

 

──現在公開中の『銀平町シネマブルース』では映画監督役を演じられていますが、『アルプススタンドのはしの方』以来となる城定秀夫監督の現場はいかがでしたか?

 

小野 久しぶりの城定組は、前回と一切変わらなくて、穏やかな雰囲気でした。今回は2日間だけの参加だったんですが、とても独特で落ち着くんですよね。自分では全く思っていないし、変わっていないんですが、皆さんからは「ずいぶん大人っぽくなったね」と言われました(笑)。

 

今がどこか自分にとっての節目なような気がする

──当時の19歳だった時のインタビューでは「大学に行った同級生が社会に出る22歳までに結果を残したい」と言われていましたが、実際に22歳になられていかがですか?

 

小野 自分が想像していた22歳ではないなと思っていますし、その発言をしたときの自分と変わらないですね。今回のような映画のヒロインや、大河ドラマ(『青天を衝け』)に出演させていただいているんですが、「まだまだ……」と感じる部分が多いです。どの現場でも完全にできたと思ったことはないですし、いつも納得していない気がします。そのような気持ちは、いつになっても忘れたくないです。ただ、今がどこか自分にとっての節目なような気もしています。

 

──撮影現場に必ず持っていくモノやアイテムがあれば教えてください。

 

小野 iPhoneのイヤホンです。ロケバスでの移動時間や待ち時間に音楽を聴いたり、映画を観るだけで、ちょっとした気分転換になります。『少女は卒業しない』のときは、自分が高校時代によく聴いていたback numberさんやAimerさん、YUIさんを聴き直して、当時の感情をよみがえらせていました。基本、撮影中はキャストの方と話すことが多いですが、自分の世界に入りたいときや集中したいときには、やっぱり必要なモノなんですよね。だから、忘れてしまうと、かなりショックが大きいんです(笑)。

 

 

(C)朝井リョウ/集英社・2023 映画「少女は卒業しない」製作委員会

少女は卒業しない

2月23日(木・祝)より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国公開

(STAFF&CAST)
監督・脚本:中川 駿
原作:朝井リョウ『少女は卒業しない』(集英社文庫刊)
主題歌:みゆな「夢でも」(A.S.A.B)
出演:河合優実
小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望
窪塚愛流、佐藤緋美、宇佐卓真 / 藤原季節

(STORY)
廃校により校舎の取り壊しが決まった島田高等学校。最後の卒業式まであと1日。卒業生代表として答辞を務めることになった料理部部長の山城(河合)、心理学の職に就くことを夢に持ち、東京の大学に進学することを決めたバスケ部部長の後藤(小野)、恒例の卒業ライブの準備に追われる軽音楽部部長の神田(小宮山)、クラスになじめず図書室で過ごす時間が多かった作田(中井)は、それぞれの“別れ”を胸に卒業式への時を過ごしていた。

【映画「少女は卒業しない」よりシーン写真】

(C)朝井リョウ/集英社・2023 映画「少女は卒業しない」製作委員会

 

撮影/金井尭子 取材・文/くれい響 ヘアメイク/伏屋陽子(ESPER) スタイリスト/瀬川結美子