Vol.166-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はグーグルが発売したスマートフォン「Pixel 11」の話題。同社が日本市場でPixelシリーズを重視する理由とは何か。
今月の注目アイテム
グーグル
Google Pixel 11
直販価格136,800円~

Googleのスマートフォンである「Pixel」は、他社に比べかなり独自性の高い製品である。
Androidをベースにしており、外観は、特徴があるといってもスマホの範疇を出るものではない。しかし、プロセッサーには自社で開発した「Tensor Gシリーズ」を使い、セキュリティチップにも、独自開発した「Titanシリーズ」を搭載している。OSであるAndroidも、多くの機能について他社向けのAndroidよりも新しい機能を搭載している。要はそれだけ、開発コストのかかった製品なのだ。
同様のことをしているメーカーは少ない。国内事情が影響している中国メーカーを除くと、アップルとサムスン、ファーウェイくらいのものだ。共通しているのは、スマホの出荷台数が多いということ。アップルとサムスンはそれぞれ世界のスマホの3割を作っていて、年間出荷台数は2億台を超える。それでも、近年サムスンは、プロセッサーについてはQualcommから供給を受けるのが基本になった。自社開発よりも、そのほうが効率良く、進化したプロセッサーを利用できるからだ。
日本において、Pixelシリーズは人気も知名度も高い。だが「世界中で人気があるか」というとそうでもないのが実情だ。グローバルでのシェアは1%程度で、知名度がある国はアメリカと日本くらいのものである。
とはいえ、シェア1%は“全世界のスマホ出荷台数”でのこと。年間に12億台が出荷されるうちの1%=1200万台程度だから、決して小さな量ではない。日本のスマホメーカーが出荷している台数に比べればずっと大きい。Googleが自社開発するのは、ひとえに“絶対量がそれなりにある”からではある。
だがそれでも、サムスンが自社開発からQualcomm製への切り替えを進めたように、プロセッサーの自社開発は大変だ。アップルのように“ありとあらゆる自社製品で使う”前提でプロセッサーを作るなら効率は上がるが、Googleの場合には基本「スマホ用」だ。
Googleが自社開発する理由は、量だけの問題ではない。“Androidスマホの将来はどうあるべきか”を自分たちで作るためだ。必要な性能を吟味し、過剰でないスペックで、ソフトウェア面も先行して開発する。それによって、Android自体の方向性も示す。
そのうちの1つが、今年春から展開している「AirDrop互換機能の提供」だ。AirDropは利用者をiPhoneに留め続ける理由の1つだが、現在はPixelやGalaxyなど、複数のAndroidデバイスから使えるようになった。そのテストも、最初はPixelで行われている。
AndroidへのAI機能実装もその一例だ。どんな機能が求められるのか、どのくらいの性能が必要とされるのかといった部分を検証してから実装するので、自社でコントロールできるハードウェアが望ましい。
ただ、最近はサムスンとGoogleの関係が近づき、AI機能などはサムスンも“できる限り早く実装するパートナー”になってきている。販売数量が多いこと、AI機能がプロモーション上重要になってきたことが理由だ。その上で、カメラや通話などについては“Pixelというデバイスを差別化する機能”としてAIが搭載されている……と考えるのが良いだろう。
では、デザインも含めた部分で、今年のPixelはどのような差別化を行っているのだろうか? その点は次回のウェブ版で解説したい。
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