家電
炊飯器
2023/8/19 20:00

ご飯に高級感がある!「火力の限界突破」を果たした「タイガー炊飯器100周年記念モデル」を試食

2023年で創立100周年を迎えたタイガー魔法瓶。アニバーサリーでもあることから、今年は未来的なコーヒーマシン「サイフォニスタ」など意欲作も発売する勢いですが、主力カテゴリーのひとつである炊飯器から100周年記念モデルが新発売されました。今回は、その発表会の様子をレポートします。

↑「土鍋ご泡火(ほうび)炊き JRX-T型」。色はムーンホワイトとコスモブラックがあり、左2つが3.5合炊きの「JRX-T060」(実売価格11万3420円)で、右2つが5.5合炊きの「JRX-T100」(同12万2490円)

 

コメ食の需要増が炊飯器の追い風となるか?

発表会ではまず、国内の炊飯器市場動向から解説。近年のポイントとしては、2019年の消費増税前の駆け込み需要、2020年からのコロナによる巣ごもり需要で、この2年は例年をやや上回る好調な出荷実績だったこと。しかし2021年と2022年はそれらの反動や、コロナによるインバウンドの消滅により、過去10年の目安であった年間500万台を下回る状況だったとのこと。

↑発表会における資料より

 

また、巣ごもり需要以降は購入金額の平均単価が上昇傾向にあり、加えてIH炊飯器の出荷台数は5万円以上のモデルが約3割を占める構造に。加えて直近では世界情勢や燃料・資材価格高騰により、販売価格の平均単価も高く推移しているとのことでした。

↑IH炊飯器は過去10年で、安価なモデルもシェアを拡大。高価格製品との二極化が進んでいます

 

加えて注目なのが、コメ食の需要増です。近年の食品高騰は特に輸入品のほうが影響大で、それに伴い小麦が原料のパンや麺類は、輸入に頼らずともまかなえるコメに比べて値上げがダイナミック。フード全体のトレンドとしても、近年は定食店やごはんバーガーが礼賛されていたり、おにぎり専門店が大人気になっていたりするのですが、そんなコメ人気に伴って炊飯器の需要が高まる可能性もあります。

↑こちらはタイガー魔法瓶の調査データ。おいしくご飯が炊ける炊飯器への見直しを検討している人は、約4割いるとのこと

 

こうした「追い風」といえる状況下で登場したのが「土鍋ご泡火炊き JRX-T100/T060」というわけです。そこには、電気炊飯器の進化を半世紀以上追求してきたメーカーとしてのプライド、そして限界突破をしたともいえる威信をかけた開発魂がありました。

↑こちらは同社の本格電気製品第1号の第2弾として発売された、1971年登場の「電子ジャー<炊きたて>(ELC型)」

 

お家芸“土鍋炊き”の特性を生かすための挑戦

「土鍋ご泡火炊き JRX-T100/T060」は100周年記念ということもあって、過去最高に熱が入ったモデルでした。ポイントは大きく2点。ひとつは、タイガー史上最高温度を実現したこと。もうひとつは、熱源であるIHコイル表面積を160%アップ(JRX-T100の場合)させたことです。

↑土鍋を直火で調理しているような抜群の火力を実現

 

とはいえこの改良は、あくまでも手段。目指したのは、一流料亭で味わうようなおいしいご飯を炊くことでした。そんな一流料亭の要となるのが土鍋です。もともとタイガー魔法瓶は老舗炊飯器メーカーで唯一土鍋を採用していますが、その土鍋炊きのポテンシャルをより生かすために、MAX温度の限界突破に挑んだのです。

↑タイガー炊飯器のお家芸ともいえる土鍋。「萬古焼き」の名称で知られる、三重県四日市市で作られています

 

その温度は、これまでの最高だった280℃を20℃も上回る約300℃(JRX-T100の場合)。ちなみに、これがどれぐらいアツいのかを例に挙げると、他社Aのフラッグシップは最高179.1℃、B社は148.8℃とのこと(タイガー魔法瓶調べ)。ちなみにこの高熱は、耐熱性と蓄熱性に優れた土鍋だからこそ実現できるそうです。

↑こちらは新(左)旧(右) のIHコイル部分。2層構造の採用で熱効率をアップするとともに、土鍋を直火で炊いたような炎の温度差を再現

 

ただ、「アツければいいってもんなのか?」と疑問も抱いた筆者。その回答は、“日本の米・食味鑑定に関する第一人者”として知られる、大坪研一先生(現・新潟大学農学部教授)によってなされていました。

 

大坪先生によると、大火力による強い加熱によって気泡が多く発生し、全体がよく撹拌(かくはん)されることで均一性も高まり、コメでんぷんの糊化(こか/α化のこと)が促進。また、強い沸騰の継続によってコメのでんぷんは充分に糊化し、ふっくらやわらかく、甘くて粘りのあるご飯になるとのこと。こうしたご飯は糊化度が高くおいしいうえ、冷えてもでんぷんが老化しにくく、米飯が硬くなりにくいことが報告されているそうです。

↑一流料亭の味にいっそう近づけるために火力と熱効率をアップ。なお、それでいて消費電力は同社の圧力IHジャー炊飯器より低く、電気代も抑えられるとのこと

 

あえて例えるなら職人握りの寿司のような“ほどけ方”

そうは言っても、論より証拠。「土鍋ご泡火炊き JRX-T型」によるご飯の味わいをチェックしてみました。ご泡火炊きのご飯は、粒がピンと立って、ふわりとほぐれるエアリーな舌離れが印象的。噛むとひと粒ごとの存在感がしっかり主張し、うまみや甘みも広がります。もっちりしていてもベタつきはなく上品で、わかりやすい高級感。確かに料亭っぽさを感じさせる、洗練されたおいしさです。

↑極端に例えるなら、職人が握ったお寿司のよう。口のなかでご飯がハラリとほぐれていきます

 

発表会の本編終了後、炊飯器のブランドマネージャーを務める、タイガー魔法瓶の岡本正範さんに質問。改めて土鍋の優位性をたずねると、特筆すべき点は「蓄熱性の高さ」だといいます。

↑タイガー魔法瓶の岡本正範さん

 

「ご泡火炊きは、蓄熱性が高い本土鍋とIHの高火力で、かまどのように発熱できるのが魅力です。また、沸騰時には土鍋特有の細かい気泡が発生し、お米一粒ひと粒に熱を均一に伝えますので、うまみを引き出しながらふっくらと粒の揃ったご飯を炊き上げられるんです」(岡本さん)

↑まさに炊きたての状態。ピンッとした粒立ちのよさがわかります

 

おいしさを追求するのはもちろん、使い勝手を高めて「電気炊飯器自体を、より道具に近づけていきたい」とのこと。「キッチンにこそ道具がピタッとハマるというか、そういう世界観に通じるデザインを目指しました」と岡本さんは語ってくれました。

↑遠くからでも炊飯器の状態がわかるエモーショナルランプ(左上)、重厚感のあるフックボタン(左下)、ボールレス構造でマグネット着脱式の内ブタ(右下)など、機能美も随所に

 

特に味わいに関しては「一流料亭のおいしさを超えることができた、という自負もあります!」と自信も聞かせてくれました。なお、同社の100周年企画はこれで終わらず、引き続き注目度の高いプロダクトを発表していくとのこと。さすがタイガーだけに、虎視眈々。今後も目が離せません!