“ビールらしくない”名前とコンセプトでヒット。2024年日本ネーミング大賞も受賞したキリンビールの「晴れ風」は、ビール業界の常識を飛び越え令和の定番となった。その勝因とは?

キリンビール
晴れ風
オープン価格(実勢220円前後)
ビールのうまみと飲みやすさの両立を目指し2024年に誕生。麦のきれいなうまみと国産ホップの爽やかな香りが織りなすすっきりとした後味で、食中酒としての評価も高い。
【名付け親】
キリンビール株式会社
マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当
村井志帆さん
大阪府出身。営業を経てマーケティング部門へ異動し、ノンアルコールビールや一番搾りの育成、商品開発に携わる。入社8年目の2023年にブランド開発を任され、翌年に新定番ビールブランド『晴れ風』を誕生させた。
味わいや製法を伝えるのをやめた
“令和の一番搾り”を作って欲しい。それは2023年の春、入社8年目の村井志帆さんに課された重大なミッションだった。
「コンセプトは自由。発売は1年後の4月。条件はたったそれだけでした。それも単発の新商品ではなく、これから何年もかけて育成していく、約17年ぶりの新定番ビールブランドの開発です」
日本の酒類市場が平成初期をピークに縮小の一途を辿るなか、主力商品であるビールの新たな価値創造は社運を賭けたチャレンジ。絶対に失敗できない空気感のなか、村井さんが最初に着目したのは、ビールそのものではなかった。

「何百人ものお客様にヒアリングした結果、多くの方が物価高や将来不安に悩みながらも、前向きになるきっかけを求めているように感じられました。ならば、明日に向かうポジティブな力をくれる、未来を明るくできるようなビールを作ってはどうかと考えたんです。イメージでいうと、晴れた日に外で風に吹かれながら飲む、あのビールのおいしさ。ビールで世の中とお客様を晴れやかにして、良い風を吹かせたい。そんな思いを凝縮して『晴れ風』という名前が生まれました」
100年間に培った技術を反映したビールらしいうまみと、初心者でも飲みやすくキレのある後味の両立。味のイメージは徐々に固まっていったが、初期の社内プレゼンでは「名前がビールらしくない」という意見もあった。なぜなら同社の定番ブランドは、味わいや素材、製法を想起させる“一番搾り”や“淡麗”といったワードを採用してきたからだ。
「従来の、ビールの機能面を伝えるような名前ではなく、あくまで“日々の閉塞感から抜け出す気持ちよさ”というお客様価値に振り切りました。造語で変わった名前ではありますが、口にするたび不思議と自信がついたことをよく覚えているんです」
そしてある日、一人の役員が発した「なんだかこの名前が気に入ってきた」という一言に対し、その場で共感が広がっていった。
「『成功させていい風を吹かせよう』という営業スローガンが勝手に生まれていたり、お客様からは『雨の日でも晴れみたいな気分になれそう』『縁起が良い』といった声もいただきました。社内外の多くの方々が、こちらが説明していない価値まで受け取って下さった。良いネーミングとは、作り手が意味を押し付けるのではなく、その人の中で個々に解釈が生まれ、特別な意味が育っていくものなのだと学びました」
CM※でブランド名をアピールするのをやめた
※発売前のCM。
爽やかさと開放感、喜びや多幸感。『晴れ風』の響きからは、ビールを楽しむ場のおめでたい空気感や、人をポジティブにする情緒的な力=エモさが自然と感じられる。開発現場の内外で多くの関係者が得たその体感は、CMの表現にも活かされた。
「発売は2024年の4月でしたが、3月中旬からテレビCMなどで大々的にティザー広告を展開しました。新ビールの発売はアピールしつつ、名前は発売日まで隠すことで話題化を図ったんです。名前のお披露目は、一生にたった一度しかない大切なシーン。どうすればお客様にワクワクしていただけるかを考えた結果でした」
ネーミングの伝え方
発売時の広告戦略では、商品情報をあえて小出しにして関心を惹くティザー広告の手法を採用。ブランド名を発売日に“お披露目”することでインパクトを最大化した。


名前を初公開した当時のCMは、まさに誕生日を彷彿とさせる、これから始まる日々への希望を感じさせる内容だった。その一方で、発売当時から、桜や花火といった各地で消えゆく日本の風物詩を保全・継承する活動を支援する『晴れ風ACTION』を実施。この活動こそ『晴れ風』ブランドに果たせる“約束”なのだと村井さんはいう。
「ネーミングとは単に商品に名前をつけることではなく、ブランドとお客様の約束を考える作業。こういった視点をいかに持ち続けられるかが大切なのだと、一連の経験からわかりました。その約束と時代の願いが重なったとき、ブランドの価値は最大化するのだと思います」
果たすべき“約束”

「日本ネーミング大賞 2026」応募概要
■応募対象
2025年10月1日〜2026年9月30日の間に、日本国内で販売または提供されている「商品名」「サービス名」「社名」「ブランド名」等で、商標登録がされているもの(※20年前に発売されたロングセラー製品でも、期間内に販売されていれば対象となる)
■応募期間
2026年9月1日(火)〜10月10日(土)
■応募方法
公式ホームページのエントリーフォームより
【エントリーフォームはコチラ】
■応募費用
ネーミング1件(1部門)につき5500円
■2026年度地域フォーカスエリア
「広島県」
※地域ソウルブランド部門において、広島県の企業・団体等が商標を持つネーミングの応募費用は無料。
日本ネーミング大賞2026
https://j-naming-award.jp