近距離モビリティはいま、単に「歩く代わり」の乗り物から、行動範囲そのものを広げるモビリティへと変わろうとしています。自宅周辺だけで使うのはもちろんのこと、クルマに積んで出かけ、目的地に到着してからの移動に活用する。そんな使い方をより身近なものにしようと登場したのが、折りたたみ式近距離モビリティ「WHILL Model C Lite」です。
最大の特徴は、カーボン素材の採用によってWHILL製品史上最軽量を実現しつつ、フラッグシップモデル譲りのオムニホイールによる高い走行性能を両立したこと。「軽くて持ち運びやすく、しかもしっかり走れる」という新しい方向を目指したモデルなのです。

軽量化の狙いは「気軽にクルマへ積めること」
Model C Liteを理解するうえで重要なキーワードが「車載」です。
WHILLの調査ではユーザーの94%が「ウィルを車載して出かけたい」と回答しています。また、「もっと軽く楽に持ち運びたい」「身体に制約があっても簡単に折りたたみたい」「コンパクトさを維持しながら悪路も気兼ねなく走りたい」といった声も寄せられているそうです。



自宅周辺だけで使うなら、本体重量をそれほど意識しないかもしれません。しかし、クルマと組み合わせると事情は変わります。出発時に荷室へ積み、目的地で降ろし、帰宅すれば再びクルマから降ろさなければならないからです。この作業が負担になれば、WHILLを所有していても持って出かけること自体をためらってしまうでしょう。
そこでModel C Liteが目指したのは、単に「持ち上げられる軽さ」ではなく、日常的に「持って出かけよう」と思わせてくれる“軽さ”だったのです。

特殊カーボンで約5.4kg軽量化し、折りたたみのしやすさも重視
そのための大きな武器となったのが、フレームへのカーボン素材の採用です。本体重量はバッテリーを除いて18.6kg。折りたたみ式のModel F(24.0kg)に比べて約5.4kg、率にして約22.5%軽量化されています。

この5.4kgの差が大きな意味を持つのは、クルマへ積み降ろしするときです。電動車椅子は重量があるほど、利用者本人だけでなく家族や介助者にも負担がかかります。Model C Liteでは、そこを軽くすることで「クルマに積んで出かける」際のハードルを下げているのです。
この軽量化に貢献したのが、フレームの一部に採用された帝人製の炭素繊維複合材料「Sereebo P」です。これは炭素繊維と樹脂を組み合わせた素材で、軽さと強度を両立できるのが特徴です。

ただ、Model C Liteで車載性を高めているのは重量だけではありません。アーム部分には手を掛けやすい凹みを設け、持ち上げるためのグリップハンドルもわかりやすく配置。さらに片手によるワンタッチ操作で折りたたみと展開ができ、その簡単さは片手に荷物を持った状態で展開する様子も実演されるほどでした。

つまり、Model C Liteは「折りたたむ→持ち上げる→クルマに積む」という一連の動作を、できるだけ楽にすることも含めて、設計されているのです。
オムニホイールで「降ろした先」もしっかり走れる
もうひとつの特徴が、軽量モデルでありながら前輪にWHILL独自のオムニホイールを採用したことです。

車輪の外周に複数の小さなローラーを配置した構造によって、最小回転半径81.1cmという小回り性能を実現。室内や店舗、狭い歩道などでもスムーズに方向転換できます。さらに約5cmの段差を乗り越える能力を備え、凸凹道や芝生にも対応します。

ここはModel C Liteの取り回しを考えるうえで重要なポイントです。クルマに積みやすくても、観光地に着いた途端、段差や石畳で移動しにくくなっては意味がありません。逆に高い走破性を備えていても、重くて積み降ろしが大変なら気軽には持ち出せないことになります。
まさにModel C Liteは、「クルマに積むまで」と「クルマから降ろした後」の両方を考えて作られたモデルといっていいでしょう。
サスペンションとシートの両面から乗り心地を向上
そして、興味深かったのが乗り心地へのこだわりです。
Model C Liteは前輪にコイル式サスペンション、後輪には板状のカーボンそのものに弾性を持たせたカーボンブレードサスペンションを採用。4輪で路面からの衝撃や振動を吸収し、石畳や荒れた路面での快適性向上を図っています。

さらに、身体が直接触れるシートにも工夫が施されています。
Model Fでは座面に布地を使用していたため、長時間使っているとたわみが生じることがありました。これに対してModel C Liteでは、非常に軽量でありながら高い強度を備えた日本製であるダイアテックスのKaRVO(カルボ)を採用しています。

事前取材では“水に浮くぐらい軽い”一方、一枚だけで乗員の体重を支えられるほど強度が高く、適度な反発力によって座ったときの硬さも和らげられると説明されました。しかも、この素材はシート自体の軽量化にも貢献しています。
つまりModel C Liteは、足まわりで路面からの入力を吸収し、シートでも身体への当たりを和らげるという2つの方向から乗り心地を高めているというわけです。
大容量バッテリーは購入時なら+2万円だがメリットは大きい
走行可能距離は標準バッテリーで23.4km、大容量バッテリーなら38.5km。最高速度は6km/h、登坂能力は10度、耐荷重は136kgです。価格は標準バッテリー付きで468,000円(非課税)からとなります。
購入時に注目したいのがバッテリーの選択です。
大容量バッテリー仕様は標準仕様より2万円高くなりますが、総重量は21.6kgから21.7kgへわずか100g増えるだけ。それで航続距離は23.4kmから38.5kmと15.1km延びます。クルマに積んで観光地などで一日使うことを考えれば、大容量仕様は魅力的な選択肢でしょう。

一方、後からバッテリーだけを購入する場合、WHILLに確認した価格は標準バッテリーが65,000円(税抜)/71,500円(税込)、大容量バッテリーが85,000円(税抜)/93,500円(税込)です。車両と同時に購入する場合はバッテリーを含めて非課税ですが、バッテリー単体で購入すると課税対象になります。
これを踏まえると、長い航続距離が必要になりそうなら、購入時に+2万円で大容量仕様を選んでおくメリットは大きいでしょう。
ただし、飛行機を利用する場合は注意が必要です。大容量バッテリーは航空機での機内持ち込みに対応していないため、Model C Liteを飛行機で運ぶ場合は標準バッテリーである必要があります。普段はクルマでの移動が中心でも飛行機に載せる機会があるなら、用途に応じてバッテリーを使い分けることになります。
実際のユーザーが実感した「軽さ」の価値
発表会にはWHILLを日常的に利用している3人のゲストも登壇しました。

パラアスリートの菅野 元揮さんは、カーボンを使ったデザインを評価するとともに、折りたたんでクルマに積み、気軽に出かけられる点に注目。声楽家の坂井田 真実子さんは、Model Fの携帯性とModel C2のオムニホイールという「欲しかった2つの良さ」が一台になったモデルと評価しました。
さらに印象的だったのが、公的機関に勤務する山元 瑞穂さんです。Model Fは自分で持ち上げられなかったのに対し、Model C Liteは実際に持ち上げることができたといいます。軽くなることで車載の負担が減れば、スロープ付き車両だけでなく、将来的にはクルマ選びそのものの自由度が広がるというわけです。
「軽さ」と「走り」を両立したModel C Lite
Model C Liteの魅力は本体重量18.6kgというスペックだけにとどまりません。
片手で折りたためる機構、持ち上げやすい工夫によって車載性を高めながら、オムニホイールによる取り回しと走破性、さらにサスペンションと新しいシート素材による快適性まで追求していることも見逃せないのです。

クルマに積みやすく、降ろした先でもしっかり走れて、快適に移動できる。「軽さ」と「走り」を両立することで、出かける選択肢を広げる。それがModel C Liteの最大の魅力といえるでしょう。
