シンギュラリティ(技術的特異点)に向かって突き進むAI(人工知能)。世界各国がその開発にしのぎを削っていますが、GetNavi webも人工知能の動向を注視しています。この分野ではこの1年間にどんなことが起きたのでしょうか? 2019年に取り上げたAI技術を6つ紹介しながら振り返ってみます。
1: 料理の可能性が膨らむAI
料理の技術は、作り手の経験や勘に頼っていた部分が大きく、プロの味を一般家庭で再現することはほとんど不可能でした。でもそんな食のシーンにAIが力を貸してくれるかもしれません。敵対的生成ネットワークを使った「ピザGAN」は、ピザの写真を見て、そのピザに使われている食材を判別。さらに食材の生地からの深さも検知して、どの順番にトッピングが重ねられているかを推測し、そのピザのレシピを生成してしまうAIなんです。作り方を調べたり、新しいレシピを開発したりするのはもちろん、将来的には料理そのものまでAIが担ってくれる日もくるかもしれません。
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2: 身に付けるだけでパフォーマンスを解析
これまでにもテクノロジーを導入してさまざまなデータ解析が行われてきたスポーツ界ですが、さまざまなAIウェアラブル機器が誕生しています。例えば、オリンピックの水泳選手も愛用しているという「Triton 2」は、練習時にスイミングキャップのなかに入れるだけで、水泳のタイムや距離、ストロークの回数、ターンにかかった時間などをリアルタイムで計測するというアイテムです。2020年東京オリンピックに出場する水泳選手たちのなかにも、このようなテクノロジーを利用しているアスリートがいるでしょう。
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3: ドライブレコーダーにも活用
あおり運転対策としてドライブレコーダーを車に取り付ける方が増えています。そんなドライブレコーダーの進化版として、AIを搭載したタイプも生まれています。例えば、「VEZO 360」は、クルマのフロントガラスに付けるだけで360度あらゆる方向を撮影できるドライブレコーダー。運転中の撮影はもちろん、防犯カメラと同じように駐車中に異変があるとスマホに通知がくるほか、ドライバーの表情を検知して居眠り運転をアラームで阻止する機能も搭載しています。愛車や自分たちを守るために、AIの力を借りるという方法もこれからもっと一般的になっていくことでしょう。
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4: 医師より高い精度で病気を検出
AIは医療分野でも大きく活用が進んでいます。AIの特徴のひとつに、大量のデータを分析しそれをもとに、人間では判断できないような早期段階で病気を発見できることがあります。Googleは約3年前から医療分野でのAIの開発に取り組んでおり、肺ガンを検出するAIの開発を進めています。その精度は放射線医師よりも高く、誤って陽性と判断される「偽陽性」の割合も医師より少ないという結果が発表されています。このようなAI病気診断が実用化される日も恐らくそう遠くない未来にやってくるでしょう。
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5: 面接官や上司は人工知能
AIの利用はビジネスシーンにも広がっています。企業におけるAIに関する調査結果で、AIを職場に導入している割合の高い国に、インド(78%)、中国(77%)、アメリカ(53%)が挙がりました。日本は、調査対象国の10か国中でもっとも低く、29%にとどまっています。しかしAIの導入の世界的な流れを見ても、日本でも今後もっと加速していくと予想できます。
そして、AI導入による影響を私たちがもっとも大きく受けそうなことに、就職活動でのAI面接があります。筆者はこのAI面接をSHaiNで実体験させてもらったのですが、人が行う面接と違って、相手(AI)が納得できるまでしつこいほど同じ質問を繰り返し聞かれるなど、感想は「難しい!」の一言。「AI面接が当たり前に導入されるようになったら、厳しくなるなぁ……」と感じたことをはっきりと覚えていますが、AI面接は過去にどのような経験を積んできたか、それをどのように乗り越えてきたかという経験について平等に評価してくれるというメリットがあります。
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6: 詐欺事件も発生
AIが進歩するにつれ、そこに潜むリスクも浮き彫りになりつつあります。いま大きな問題として盛んに報じられているのがディープフェイク。AIを使って、画像や動画の人の表情をリアルに動かしてしまうのです。サムスンAIセンター・モスクワの研究者たちは、顔の静止画から人が話している動画を作る技術を開発しましたが、これが悪用されれば、第三者によって嘘の発言の動画が作られてしまうという危険も。
さらに、AIが作った本人そっくりの声を使った詐欺事件も発生しました。上司にそっくりな声で電話がかかってきて、約2600万円を振り込むよう指示。その指示を受けた部下は後から疑念を持ったものの、それに気づいたときにはお金の行方はわからなくなってしまいたそうです。AIの合成音声による詐欺事件は、新たな犯罪を世界中で助長することになりかねないかもしれません。
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あらゆるジャンルで発展しているAI。これからは私たちの身近な生活で、AIの恩恵をたくさんの場面で受けることになるのでしょう。それとあわせてAIによるリスクについても理解して、上手に共存していくことが求められていくのではないでしょうか?