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カメラ
2017/7/26 15:00

【決定版】打ち上げ花火の正しい撮り方――手軽にできる花火写真家の実践テクニックを大公開!

今年も花火シーズンがやって来た。ここから数か月、日本各地で花火大会が目白押しだ。今年こそ、ダイナミックな打ち上げ花火をきれいに撮ろう! というわけで、出掛ける前にはぜひこの記事をチェック! 持っていく機材からカメラ設定、シャッターを切るタイミングなど、“決定版”の名にふさわしく、打ち上げ花火の撮影テクニックをまとめてご紹介しよう。

↑ワイドスターマイン。この花火を撮るなら、横位置で捉えると収まりがいい。広角レンズがなくて花火全体が写らない場合は、上空の花火を中心に構図を作ろう 16ミリ相当 マニュアル露出(F8 8秒) ISO100 WB:3200K ND4使用
↑ワイドスターマイン。この花火を撮るなら、広角レンズを使って横位置で捉えると収まりがいい。広角レンズがなくて花火全体が写らない場合は、上空の花火を中心に構図を作ろう/16ミリ相当 マニュアル露出(F8 8秒) ISO100 WB:3200K ND4使用

 

花火撮影に必要な機材

●一眼カメラ(長秒撮影ができるもの)

●標準ズームレンズ(広角レンズもあれば◎)

●レリーズ(リモートコード)

●三脚(座って撮るなら小型なものでもOK)

●NDフィルター(ND4かND8が使いやすい)

●小型ライト(暗いなか操作をするときに便利)

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コンパクトカメラやスマートフォンでも花火撮影は可能だが、きれいに撮るためにはやはり高画質な一眼カメラがイチバンである。チョイスすべきレンズは、花火をアップで撮りたいのか、夜景と一緒に撮りたいのかによって変わるが、どう撮りたいのかわからないのであれば、まずは標準ズームレンズを持っていこう。この1本で十分なことも多い。

 

そして、長秒露光で撮るため三脚は必須だ。立って撮る場合は、風の影響を考慮してしっかりしたものを選ぼう。座って撮る場合は、小型三脚でも問題ない。花火撮影ではカメラの縦横を頻繁に変えるので、自由雲台だと水平を合わせるのに時間がかかる。そのため、3ウェイ雲台がおすすめだ。また、シャッターの開け閉めを撮影者が手動で行うため、手ブレを回避するためにもレリーズを使おう。

 

このほか、昨今の花火はとても明るく、ISO感度と絞りの調整だけでは露出オーバーになってしまいがち。また、絞りを絞って露出を調整すると、回折現象によって像が不鮮明に写る。これらの失敗を極力避けるために重宝するのがNDフィルターだ。NDフィルターは減光量別に何種類もあるが、花火撮影では減光4段分の「ND4」や3段分の「ND8」が使いやすい。

 

花火撮影のカメラ設定

●【撮影モード】マニュアル露出またはBULB(バルブ) 

●【シャッター速度】2~20秒

●【絞り】F8前後(ND 使用時)、F13前後(NDなしのとき)

●【ISO感度】100~200

●【ホワイトバランス】色鮮やかな花火は「電球」または「3200K」

●【ピント合わせ】AF でピントを合わせてMF に切り替える

●【階調補正】「標準」または「オート」

●【長秒撮影時ノイズ低減】OFF

●【手ブレ補正】OFF

 

撮影モードはマニュアル露出(M)を選び、シャッター速度を「BULB」や「TIME」などの長秒露光が行える設定にする(BULBモードが単独で用意されているカメラもある)。シャッターを開けている時間(露光時間)は花火の開花によるが、おおよそ2~20秒で撮ることが多い。ISO感度は一眼ならではの高画質を生かすためにも低感度に。絞りは、NDフィルターを使わない場合は露出オーバーになりやすいので少し絞ってF13前後に、ND使用時ならF8前後に設定する。背面モニターで撮影した写真を確認し、露出オーバーやアンダーなら絞りの開閉で露出を調整する。

 

色の調整はホワイトバランスで行うが、現在主流の色鮮やかな“洋火”と呼ばれる花火は、WB「(白熱)電球」または色温度設定「3200K」が、日本古来のオレンジ色の“和火”花火は、WB「太陽光(晴天)」または色温度設定「4500~4800K」がおすすめだ。

↑これは和火花火。上がる花火に合わせたホワイトバランスの切り替えが難しい場合は、色温度設定3800Kで撮るといい
↑これは和火花火。上がる花火に合わせたホワイトバランスの切り替えが難しい場合は、色温度設定「3800K」で撮るといい

 

ピント合わせは、花火大会の最初に上がる花火にAFでピントを合わせ、すぐにMFに切り替える。いわゆる置きピン撮影である。構図を変えるごとに、これを繰り返す。

 

このほか、階調補正は白とびを防ぐために「標準」もしくは「オート」に。一眼レフであれば1分くらいの露光ではノイズはあまり目立たないので、利便性を優先して長秒露光のノイズ低減は「OFF」にする。さらに、三脚を使用するので手ブレ補正は「OFF」。手ブレ補正をONにすると誤作動でブレが発生してしまうこともあるので注意しよう。

 

花火の撮り方

単発花火ならば、下のイラストのように、地上から伸びる昇火が上がる前にシャッターボタンを押し(開けて)、上空で花火が開いて消えるまで待ってからシャッターボタンから指を離し、シャッターを閉じる。こうすると、昇火と花開く様子が写し撮れる。

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スターマインの場合は、小さな花火と大きな花火が順番に上がっていく。小さな花火が始まってもシャッターは押さずにしばらく観察。大きな花火の昇火が上がってきたら、そのときシャッターボタンを押して、大きな花火が消えたらシャッターボタンから指を離す。スターマインのスタート時からシャッターを開けてしまうと露出オーバーになってしまうので、大きな花火のタイミングに合わせてシャッターの開閉をすることがポイントだ。

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2.5~3号玉の牡丹花火扇型打ち上げ。この花火は右側から左側へ順番にゆっくりと開花していく。10秒露光することで、扇型の全体像を1枚に収められた 32ミリ相当 マニュアル露出(F9.5 10秒) ISO200 WB:3200K ND8使用
↑2.5~3号玉の牡丹花火扇型打ち上げ。この花火は右側から左側へ順番にゆっくりと開花していく。10秒露光することで、扇型の全体像を1枚に収められた/32ミリ相当 マニュアル露出(F9.5 10秒) ISO200 WB:3200K ND8使用

 

花火撮影の場所選び

短時間にたくさんの花火を打ち上げるスターマインが始まると、あっという間に煙が立ち込めて見えなくなることがある。夏は湿気が多いため、花火の煙が増大する。撮影場所を決めるときには風の流れを読んで、風下にならない場所を選ぶといい。

 

単発花火や1か所から打ち上がるスターマインなら、どこから撮っても同じ構図で撮れるが、打ち上げ場所が複数あるワイドスターマインなどは正面で撮りたいもの。しかし、多少斜めの構図でも立体感が出てよい写真が撮れることも知っておこう。また、ワイドスターマインは裏側でも正面と変わらない構図で撮影できる場合もある。いずれにせよ花火撮影では明るい時間帯に現地に行き、風の流れを見ながら会場の下見をすることが重要だ。

↑風上で撮影。煙は出ているが、風速1m程度の弱い風が吹いていたので、煙で花火が見えなくなることはなかった。この程度の煙ならば写真への影響は少ない
↑風上で撮影。煙は出ているが、風速1m程度の弱い風が吹いていたので、煙で花火が見えなくなることはなかった。この程度の煙ならば写真への影響は少ない

 

↑風下では煙で花火が見えなくなることがある。特にスターマインでは大量の煙が発生するので、風下はできるだけ避けたほうがよい
↑風下では煙で花火が見えなくなることがある。特にスターマインでは大量の煙が発生するので、風下はできるだけ避けたほうがよい