デジタル
2017/3/6 13:08

2017年のスマホのトレンドは“HDR”! モバイル端末をHDR化する3つのメリットとは?

毎年恒例となった世界最大級のIT・モバイルの展示会「Mobile World Congress(MWC)」がスペイン・バルセロナで開催されました。このMWCは、世界各国のメーカーやサービスプロバイダーが一同に会するモバイル業界のビッグイベント。今後のモバイル業界のトレンドを予測する上でも欠かせないものとなっています。

 

モバイルでもトレンドになりそうな「HDR」

今回のMWC2017では、家庭用の大画面テレビでは少しずつポピュラーになってきた「HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)」の技術が、いよいよスマートフォンやタブレットにも広がったことが大きく紹介されました。

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↑HDR対応のスマホが複数登場

 

HDRとは、High Dynamic Rangeの略称で、映像の輝度情報のダイナミックレンジ(幅)を拡大するための技術。従来はHDR対応のディスプレイが存在しなかったため、HDR対応のカメラで記録した豊富な色彩・輝度情報を含む映像データをありのまま再現することができませんでした。HDR対応のディスプレイなら、より人間の目で見た情景に近いリアルな明暗のコントラスト感や、豊かな色合いを再現することができるようになります。

 

大画面テレビの世界ではHDRの技術が徐々に一般的なものになり、昨年の前半頃から採用するテレビも増えてきました。HDRのリアルな映像の世界を存分に味わうためには、基本的にはHDR対応のコンテンツが必要になりますが、最近ではNetflixやAmazonプライム・ビデオなどの動画配信サービスにHDR対応のコンテンツが揃ってきたほか、Ultra HD Blu-rayディスクと呼ばれるハリウッドの映画などHDR映像を収録したパッケージコンテンツも販売されています。

 

スマートフォンやタブレットにはまだ「HDR対応」の製品がなかったのですが、今年のMWCで3つのブランドがHDR対応のモバイル端末を発表しました。ひとつがソニーの「Xperia XZ Premium」、もうひとつはLGエレクトロニクスの「LG G6」、そして3つ目がサムスンの「Galaxy Tab S3」です。また、HDR対応のモバイル向けコンテンツはNetflixとAmazonプライム・ビデオから、HDR対応のスマホが発売される頃と同時にリリースされることも明らかになりました。

↑LGが発表したフラグシップスマホ「LG G6」。Dolby VisionとHDR10、ふたつの方式によるHDR映像の再生に対応したことが大きな特徴
↑LGが発表したフラグシップスマホ「LG G6」。Dolby VisionとHDR10、ふたつの方式によるHDR映像の再生に対応したことが大きな特徴

 

モバイル端末をHDR化するメリットとは

HDRの技術には主に「HDR10」と「Dolby Vision」という二つの方式があります。今回発表された端末はいずれも一般的な「HDR10」をサポートしていますが、LGエレクトロニクスのフラグシップモデルである「LG G6」だけが、HDR10とDolby Visionの両方に対応することが発表されています。またLGエレクトロニクスも端末の発売時期と重なるころに、NetflixとAmazonプライム・ビデオが提供するHDRコンテンツが視聴可能になるだろうとしています。

↑MWCの本開催前にLGエレクトロニクスは発表会を開催。LG G6をお披露目した
↑MWCの本開催前にLGエレクトロニクスは発表会を開催。LG G6を先行披露しました

 

日本国内でも販売されているLGエレクトロニクスの4K有機ELテレビも、HDR10とDolby Visionの両方に対応していることで話題を呼んでいます。今回、MWCの会場でドルビー・ラボラトリーズが開催したプライベートセミナーに参加して、モバイル端末向けの「Dolby Vision」の技術にどんな特徴があるのか、説明を聞くことができました。技術を解説していただいたのは、米ドルビー・ラボラトリーズ Interactive Entertainment Video部門VPのTaeho Ho氏です。

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↑LGの「LG G6」はHDR10とDolby Visionの2つの規格に対応

 

現在、Dolby Visionに対応するHDRコンテンツはハリウッドのメジャースタジオが制作したタイトルを中心に、85を超える作品があります。加えてNetflix、Amazonプライム・ビデオやNTTぷららの「ひかりTV」からもオリジナル作品を含むコンテンツが配信され、徐々にその認知が拡大しています。

 

一方では、オンライン動画配信を中心に映像コンテンツはテレビを使わずにスマホで楽しむというユーザーが、若年層を中心に増えつつあることから、プレミアムコンテンツを差別化するための技術としてモバイル向けのHDR技術にスポットがあたりはじめてきたのだと、ドルビーのHo氏が技術誕生の背景を語っています。

ドルビー・ラボラトリーズのプライベートセミナーにて、スマホ向けのDolby Visionの技術的な特徴について語るTaeho Ho氏
↑ドルビー・ラボラトリーズのプライベートセミナーにて、スマホ向けのDolby Visionの技術的な特徴について語るTaeho Ho氏

 

モバイル向けのDolby Visionには大きく「3つのメリット」があるとHo氏が語ります。ひとつは画質が良くなること。「スマホで見ても自然な色彩と輝き感、精細なディティールの表現力が高いことは明かです。コンテンツクリエーターは妥協することなく、それぞれが探求する最高の映像を表現することが可能になります」(Ho氏)

 

ふたつめは屋外などの明るい環境でも映像が見やすいこと。HDRの技術によって再現できるピーク輝度も高まるので、周辺が明るい環境でもキレイな映像が楽しめることは、モバイル機器だからこそ感じられるメリットになります。

 

3つめは、バッテリー消費を抑えられること。研究機関が実施した調査データによれば、HDR10と比べた時の優位性として、Dolby Visionの方が映像のストリーミング再生中に消費するデータのビットレートを約10%低く抑えられるとのこと。LTEなどモバイルネットワークによるストリーミング再生時に大きな効果を発揮してくれます。

 

また、Dolby VisionのHDR技術は輝度情報などを含むメタデータをシーンごとに設定できるため、映像表示を細かく制御しながら再生時に消費するバッテリーが低く抑えられます。「同じ作品の同じシーンを再生してみると、Dolby VisionのHDR映像は従来のSDR映像を再生した場合と比べて約15%も電力消費を抑えられます」とHo氏は強調しています。

 

ドルビーのプライベートブースでは「LG G6」を2台並べながら、HDRとSDRの映像をそれぞれ見比べることができました。明暗の鮮やかさだけでなく、青空の青色、肌の色などの自然さ、階調感のきめ細かさは誰の目にも明らかな違いとして映るはずです。

↑HDR映像とSDR映像を見比べることもできた
↑HDR映像とSDR映像を見比べることもできた

 

Ho氏は、Dolby Vision対応のコンテンツを再生する際、LG G6はDolby Audioの高品位なサウンドも一緒に楽しむことができると語っています。LG G6が日本で発売されるのか、MWCの会場ではまだ明らかにされませんでしたが、今年の夏モデルとして日本にも登場して、同時にNetflixなどで「スマホで楽しむHDRコンテンツ」が一気に揃う機会が待ち遠しい限りです。