【西田宗千佳連載】「合弁ではだめ」中国から見たAFEELA失敗の核心

ink_pen 2026/5/28
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【西田宗千佳連載】「合弁ではだめ」中国から見たAFEELA失敗の核心
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.161-4

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は突如開発中止となった、ソニー・ホンダの電気自動車(EV)「AFEELA」の話題。共同開発の難しさと、今後の見通しについて解説する。

ソニー・ホンダモビリティ

AFEELA 1

2020年のCESで発表されたコンセプトEV「VISION-S」がその出発点。2022年9月には「ソニー・ホンダモビリティ」が設立され、2025年1月には「AFEELA 1」を発表。カリフォルニア州で先行予約が開始されていた。

↑なぜ「AFEELA」は消滅したのか?

ソニー・ホンダモビリティが販売を予定していた「AFEELA 1」は、販売されることなくその使命を終えようとしている。

今回の出来事で感じたのは、AFEELAが2026年ではなく2年前に発売されていたら、話は大きく違ったのではないかという点だ。

ある中国のスタートアップを取材中、その会社のCEOは次のように話した。

「合弁ではだめだ。時間がかかる。本気でやるのであれば、自社の中に必要な要素を取り込み、自ら展開するべき。ソニーとホンダは、いまだに自動車を販売できていないじゃないか」

中国企業には功罪あると感じるところはあるが、とにかくスピードが速いのが特徴でもある。EVの分野で中国の存在感が大きくなっているのは、素早くさまざまな市場へと製品を提供しているからでもある。

ソニー・ホンダは中国企業より動きが遅かった。実際のところ、ホンダとソニーの間でも、ソニー側から見ると「ホンダの動きは遅い」と感じられたようだ。だが、そのソニーの動きも、中国企業から見れば「遅い」うちに入る。

もちろん、速ければいいというものではない。

自動車は、事故や不具合によって人が死んでしまうことがある危険な存在だ。日本の自動車メーカーが時間をかけて開発するのは、安全性や堅牢性、長期的な信頼性を重視するためでもある。だが、EVになって自動車の形が変わっていくのだとすれば、「新しい自動車」の姿は、素早く市場に提示されるほうが望ましい。

そもそも、市場にはテスラなどの「新しいEV」がある。少なくともテスラと同じ、もしくは劣らないスピード感で市場に出ていけないと競合するのは難しい。EVは価格戦略も重要であり、そこも大きく関係してくる。

ソニーとホンダの合弁という形態は、スピードの面でマイナスだったかもしれない。ソニーだけで「信頼が高く、安全なクルマ」は作りにくかっただろうから、既存の自動車メーカーとの連携は必須だった。しかし、そのことが「高価ではあるが出るまでの時間が遅い」という課題を生み出してしまったのかもしれない。

ソニー・ホンダモビリティという会社は存続するが、「ホンダと共に自動車を作る」ビジネスプランの継続は不可能になっている。そのため、社員は要望に合わせ、ソニーもしくはホンダに帰任することになったという。

だが、ソニー・ホンダで作ろうとしていた自動車自体を諦めてしまうわけではなさそうだ。開発の中で培った技術やコンセプトを生かすため、それぞれの企業の中で活用が模索されるという。

ソニーはいつの日か、ソニー・ホンダで開発したソフトウェアを、他の自動車メーカーに展開して活用することを考えているのかもしれない。

それ自体も茨の道ではあるが、「ソフトウェアを軸にした自動車を開発する」という考え方自体は今後もニーズのある技術である。 培ったものを今後どう生かすのか。それが見え始めるには、まだ1〜2年の時間が必要になりそうだ。


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