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2018/1/11 20:20

【濃厚レビュー】スマホで音楽/動画再生するならコレ! MQA再生に対応した“いい音スマホ”「isai V30+」

いま国内で発売されているiPhoneを除くAndroidスマホの上位モデルは、多くがハイレゾリューションオーディオ(ハイレゾ)音源の再生に対応しています。ハイレゾ音源にはCDのディスクに比べて数倍以上の豊富な音楽情報が収録可能。ハイレゾ音源の再生に対応するスマホなどのプレーヤーに、同じくハイレゾ対応のヘッドホンやイヤホンなどを組み合わせれば、従来よりもいい音で音楽が聴けるというわけです。今回は昨年末にKDDIが発売した注目のハイレゾ対応スマホである、LGエレクトロニクス製「isai V30+/LGV35」(以下:V30+)を紹介したいと思います。

↑KDDIが発売したLGエレクトロニクスのハイエンドスマホ「isai V30+/LGV35」
↑LGエレクトロニクスのハイエンドスマホ「isai V30+/LGV35」

 

多彩なエンターテインメントが高品位に楽しめる

今回V30+の魅力として集中的に取り上げるのは本機の「オーディオ力」ですが、LGが持てるスマホのための最先端技術を惜しみなく詰め込んだ本機は、約6インチの有機ELディスプレイによる高精細な映像視聴や、カメラ機能も一流です。

↑約6.0インチ、わずか7.4mmの厚みサイズに最先端のイノベーションを詰め込んだ
↑わずか7.4mmの厚みサイズに最先端のイノベーションを詰め込んだ

 

↑イヤホンジャックは本体のトップ側に配置している
↑イヤホンジャックは本体のトップ側に配置している

 

ディスプレイは解像度が2880×1440画素(QHD+)と高精細なだけでなく、より自然な明暗のバランスや色再現が楽しめるHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)コンテンツのネイティブ再生をサポートしています。NetflixやAmazonプライム・ビデオなどで配信されている、スマホ向けのHDR作品を再生すると、よりリアリティの高い映像の世界に没入すること間違いなし。没入感といえば、グーグルのVRプラットフォーム「Daydream」のVRコンテンツを高画質&スムーズに楽しめるのもV30+の特徴です。

↑より高精細なHDR映像コンテンツの表示にも対応する有機ELディスプレイを採用。アスペクト比は18対9とやや縦長でスリムに見える
↑より高精細なHDR映像コンテンツの表示にも対応する有機ELディスプレイを採用。アスペクト比は18対9とやや縦長でスリムに見える

 

背面のメインカメラは2つのカメラユニットを搭載しています。F値1.6の明るいガラスレンズを搭載しているので、少し暗めの場所で撮影しても手ブレを抑えたシャープな写真が撮れます。まるで映画のように色鮮やでキレのある映像が取れる「Cine Effect」やスローモーション、パノラマ撮影などのトリック機能も充実しています。

↑高性能なデュアルレンズカメラを搭載
↑高性能なデュアルレンズカメラを搭載

 

isai V30+は「音の良さ」に要注目

筆者がV30+に最も注目しているポイントはその「音の良さ」です。おそらく毎日スマホを使っていて、多くの方々がカメラや動画再生と同じくらい、またはそれ以上に音楽を聴くことに時間を費やしているのではないでしょうか。いわゆる音そのものを愛でる音楽リスニングに限らず、動画やモバイルゲームの音声を聴くことも含めれば、スマホにイヤホンやヘッドホンを装着して、あるいは内蔵スピーカーで音を出しながら活用する機会はとても多くあります。

 

でも、かたやスマホのサウンドは、音楽専用のポータブルオーディオプレーヤーに比べてボリュームが貧弱だったり、解像度が少し足りなくて不満に感じているという声も少なくありません。スマホは何より通信機器であるため、内部を丁寧に設計しないと通信用のモジュールが音楽プレーヤーとして再生する音に悪い影響を与えてしまうこともあります。そして最近のスマホは「軽くて薄い」のが常識になりつつあるため、そのうえエンターテインメント系の機能に限らず、沢山のセンサーやボイスアシスタント機能などを詰め込むことが必要となれば、音楽再生のために割けるパフォーマンスは通常限られた範囲になりがちです。

 

その点、V30+は上記の映像再生やカメラまわりの機能にとことんこだわりながら、本体も薄く・軽くしてポータビリティにも妥協していません。そして驚くべきはさらにオーディオまわりの大胆な仕様も盛り込んでいることです。

 

まずピックアップしたいのは、昨年発売された「isai Beat LGV34」に引き続き採用された「Quad DAC」です。音楽専用のポータブルプレーヤーやヘッドホンアンプにも多く採用されている、ESSテクノロジー社の高性能なDACチップを4基搭載したQuad DAC回路を通すことで、音楽情報の品質劣化につながるノイズや歪みをグンと低く抑えています。

↑オーディオ製品にも多く採用されるESS TechnologyのDAC ICチップを搭載した
↑オーディオ製品にも多く採用されるESS TechnologyのDAC ICチップを搭載した

 

Quad DACの機能はヘッドホンジャックに製品をつなげば、設定アプリからメニューを「オン」に切り替えることができます。Quad DACの効果が実感できるのはハイレゾ再生の場面に限りません。例えばCDからリッピングした音源やSpotifyなどの音楽ストリーミングを聴いてみても、いままで聴こえてこなかった音にもピントが合うような高い解像感と透明な空気感に気がつくはずです。YouTubeやNetflixの動画を再生すると、豊かな音場の広がりとセリフの聴き取りやすさに差が表れます。

↑Quad DACのメニュー画面。サウンドプリセット(=イコライザー)やデジタルフィルターの選択ができる
↑Quad DACのメニュー画面。サウンドプリセット(=イコライザー)やデジタルフィルターの選択ができる

 

↑デジタルフィルターは3種類。MQA再生の時には無効になる
↑デジタルフィルターは「Short」「Sharp」「Slow」の3種類から選択可能。MQA再生の時には無効になる

 

オーディオ機器の音のバランスは最終段階であるチューニングのノウハウによっても大きく左右されます。LGエレクトロニクスでは前機種のisai Beatに引き続き、北欧のオーディオブランドであるB&O PLAYとコラボしながら、V30+も最終的な音のバランスを整えています。

 

筆者が感じる限り、日本国内でも発売され人気の高いB&O PLAYのヘッドホンやイヤホン、ワイヤレススピーカーはいずれも変なクセを持たず、どんな音ものコンテンツも心地よいフラットなバランスで聴かせてくれるところが大きな魅力であると捉えています。V30+も音楽プレーヤーとしてまさしく同じキャラクターにチューニングされているので、映像系コンテンツの音も含めて、長時間聴いていても心地よいリスニング感が持続します。

↑背面に指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンを配置。音質のチューニングに関わったB&O PLAYのロゴも配置されている
↑背面に指紋認証センサーを兼ねた電源ボタンを配置。音質のチューニングに関わったB&O PLAYのロゴも配置されている

 

ハイレゾの新技術「MQA」にも対応した

V30+はオーディオまわりの機能として新たに「MQA対応」にチャレンジしています。MQA(Master Quality Authenticated)とは、スタジオで演奏された音楽の感動をありのままリスナーの耳に届けるために、英メリディアン・オーディオが開発して、2014年に発表した高音質化のための技術。その詳細を説明しはじめると今回のレビューが終わらなくなるほど長くなってしまうので、また機会を改めたいと思いますが、スマホがこの技術を採用することのメリットをざっくりとまとめてしまうと、高音質だけれど1曲あたりのファイル容量が大きくなってしまいがちなハイレゾ音源の「音質をそのままに、ファイルサイズを小さくできる」ところにあります。

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MQAはいま据え置き型のホームオーディオ機器や、音楽専用のポータブルオーディオプレーヤーにも徐々に浸透しはじめているトレンドの最先端です。スマホでこの技術を採用した製品はオンキヨーのGRANBEAT「DP-CMX1」が初めてになりますが、LGのV30+はグローバルモデルとしては世界初のMQA対応スマホになります。

 

V30+でMQAの実力を存分に味わうためには、音楽コンテンツもMQAの技術によって収録されたものが必要です。現在MQA音源は国内ではe-onkyo musicで洋楽・邦楽のタイトルがダウンロード販売されています。MQAの実力は、“MQAじゃない方”の通常のリニアPCM録音のファイルと聴き比べてみるとよくわかるのですが、ひとつの作品を二つのバージョンともに買いそろえるのはお金の負担も大きいと思います。まずは北欧の高音質録音で有名なレーベル「2L」が無料で提供しているMQAのサンプル音源で聴き比べてみてはいかがでしょうか。URLは「http://www.2l.no/hires/」です。

 

リストの最上段にある作品、トロンハイム・ソロイスツ楽団とニーダロス大聖堂少女合唱団による「MAGNIFICAT/Et misericordia」の、MQA版と通常リニアPCM版をダウンロードして聴き比べてみましょう。ちなみにこの作品のMQA版、つまりスタジオマスター版は352.8kHz/24bitの高解像度で録音されていますが、その通常リニアPCM版はV30+の音楽プレーヤーアプリで再生ができないため、今回は192kHz/24bitのファイルで雰囲気を比較してみたいと思います。

↑2Lに公開されているMQA音源から「MAGNIFICAT」を再生。カバーアートの左下隅にMQAのロゴとブルーのインジケータが表示される
↑2Lに公開されているMQA音源から「MAGNIFICAT」を再生。カバーアートの左下隅にMQAのロゴとブルーのインジケータが表示される

 

なおV30+でMQA再生を楽しむ時には、プリインされている音楽プレーヤーアプリを使います。MQA音源を再生するとプレーヤーアプリのカバーアートの画面、左下隅にMQA作品であることを示すロゴと青いインジケーターが表示されます。

 

通常のハイレゾ版とMQA版の音の違いを比べてみた

「MAGNIFICAT」は主旋律のソプラノとコーラスによるハーモニー、弦楽器の音色などプレーヤーが備える情報量の再現力がとてもわかりやすく表れる作品です。声の透明感に張りと艶、滲みのない高音の伸びやかさなどQuad DACの実力は通常のハイレゾ版を再生してみても存分に発揮されています。どの帯域もバランス良く再現されるので、浮かび上がってくる音のイメージは鮮度やリアリティがけた違いです。

↑ゼンハイザー「IE 800 S」をつないでMQA版と通常版を聴き比べてみた
↑ゼンハイザー「IE 800 S」をつないでMQA版と通常版を聴き比べてみた

 

続けてMQA版を聴いてみると、通常のリニアPCM版で柔らかく一体につながっていた演奏が少しほぐれて、分離感の方が一段と際立つ印象。声の輪郭がよりキリッと鮮やかになり、弦楽器の低音もさらに立体感が増してきます。音と静寂とのコントラスト感が高まり、まるで大聖堂の中に満ちたひんやりとした空気まで肌で感じられるようでした。音質については通常のリニアPCM版と“どちらの方が上”というものではなく、MQA版とそれぞれの魅力を比べながら楽しめるところに醍醐味があるのだと思います。

 

V30+が本体に内蔵するストレージは約128GBと通常のスマホに比べるとケタ違いに大容量なうえに、外部ストレージとして最大256GBのmicroSDカードも使えます。普通に音楽を聴く分には十分に頼もしいストレージサイズですが、ハイレゾの音源ファイルは1件あたりの容量がとにかく大きいのが泣き所。ましてやカメラで動画や写真を撮影したり、NetflixやAmazonプライム・ビデオから映像コンテンツをダウンロードすると、あれほど余裕たっぷりだったはずのストレージがあっという間にいっぱいになっていた、なんてこともありがちです。

 

ちなみに今回試聴した「MAGNIFICAT」の1曲あたりのファイルサイズは192kHz/24bit版が185MB、マスタークオリティの352.8kHz/24bit版はなんと410MB! もし10曲以上を収録するアルバムを買って保存したら、1作品で4GB超えは必至……。そう考えるとマスター音源の品質をキープしたまま、同じ楽曲のファイルが50MBにまで抑えられているMQA版のアドバンテージが強く実感されます。

 

e-onkyo musicでは洋楽・邦楽のMQA名作をカタログに続々と追加中。e-onkyo musicならばスマホのブラウザアプリで作品を購入して、PCを介さずにスマホにWi-Fi経由でダウンロードして手軽に楽しむことができます。

↑洋楽・邦楽の人気作品もe-onkyo musicで配信されている
↑洋楽・邦楽の人気作品もe-onkyo musicで配信されている

 

今回はV30+からの新機能であるMQA再生に注目して音を聴き比べてみましたが、「Quad DAC」に代表される本機の音質へのこだわりは他のスマホと比べてみると、何気なくWeb動画を楽しむ時などにも明かな違いとして実感できるはずです。音の芯が強く量感も豊かなので、アウトドアでの音楽リスニングには格別の心地よさが得られます。モバイルエンターテインメントを心地よく楽しむためには“いい音”が不可欠。ひと味違うV30+のサウンドに要注目です。