【西田宗千佳連載】ホンダだけではない、AFEELA開発でソニーが抱えていた問題とは

ink_pen 2026/5/21
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【西田宗千佳連載】ホンダだけではない、AFEELA開発でソニーが抱えていた問題とは
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.161-3

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は突如開発中止となった、ソニー・ホンダの電気自動車(EV)「AFEELA」の話題。共同開発の難しさと、今後の見通しについて解説する。

ソニー・ホンダモビリティ

AFEELA 1

2020年のCESで発表されたコンセプトEV「VISION-S」がその出発点。2022年9月には「ソニー・ホンダモビリティ」が設立され、2025年1月には「AFEELA 1」を発表。カリフォルニア州で先行予約が開始されていた。

↑なぜ「AFEELA」は消滅したのか?

ソニー・ホンダモビリティのEV「AFEEELA 1」の開発・製造が中止されたのは、ホンダのEV開発計画の見直しが行われたためだ。

ソニー側はそのことを、ホンダのEV計画見直しの直前まで知らなかったようだ。3月13日にホンダの発表があった後も、すぐには体制が決まらなかった。3月25日に開発・製造の中止が発表された際にも、直前まで情報は錯綜していた。

完全にホンダ側に翻弄された印象があるが、ソニー側に問題がなかったかというと筆者は「そうではない」と思っている。

ソニーが初めてEVを試作して公開したのは2020年のこと。当時は「VISION-S」という名称の完全な試作モデルであり、量産も販売も予定はされていなかった。それから2022年にホンダとの合弁事業が決まり、AFEELAに至る。EVとしてのベースは同じではないが、車内ソフトウェアの構成やネットワーク連携の構想は共通項が多い。

しかしその結果、ソニー側が主軸となって提示するEVとしての価値は、極論、2020年から大きな変化がなかった。「巨大なディスプレイを内部に持ち、アプリを含めてカスタマイズする」という意味で、スマートフォンのような価値観を提供する、という要素は初期から提示されていた。それは2020年には新鮮なものとして受け止められたが、発売を控えた2026年まで同じことがアピールされている状況は、あまり良いものではなかったように思う。

過去の記事でも説明しているが、実際には大きな軸となる要素があり、それは明確にはなっていなかった。EVとしての移動やドライバーに紐付き、「次はどこに行くのか」「これからどう過ごすのか」といった情報がセットになり、「AIとともに移動しながら価値を提供するEV」を目指していた。だが、そうした進化はEVが発売されてから明確になり、使えるようになるのは「販売された後」と予測されていた。

結果として、AFEELAらしい魅力がアピールされる要素は少なかった。10万ドル(約1600万円※)クラスの高級車となることが予定されていたので、「魅力が見えない」のは大きな課題だった。そして、ソニー・ホンダの中でも、「進化するクルマとしての本質」が通じていない社員がいたようだ。

※1ドル=約160円で換算(4月30日現在)

ソフトで進化する新しいクルマを作ることが目的であっても、そのメッセージを明確に提示できていなかったことは、AFEELAのビジネスの行方を不安視させるものだった。

低価格なEVが世に出ていく中、「魅力があやふやな部分がある高価なEV」であったことが、AFEELAの先行きを不安視させた。結局のところ、ホンダがAFEELAを生き残らせなかったのは、ソニー側の提示する魅力、ソニー・ホンダとしての独自性が薄く感じられたからだろう。

そしてもう1つ、ソニー・ホンダにとって厳しかったのは「スピード感」の問題だ。それについては次回考察することにしたい。


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