デジタル
2016/4/6 11:00

「e-Sports」や対応ソフトの拡充によりPCゲームが人気上昇中! いま注目の「ゲーミングPC」に迫る

近年、スマートフォンやタブレットに押され、元気がないといわれるPC市場。実際、コンテンツを消費するコンシューマ(一般)向けモデルは出荷台数が頭打ちとなっています。しかし、そんなPC市場のなかにも現在、注目を集めているカテゴリがあります。それが、ゲーミングPCです。

 

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↑ASUSのゲーミングPC「ROG GX700VO」

ゲーミングPCとは、3Dゲームなどをより高いグラフィックスで再現するために構成されたPCのこと。基本性能が非常に高いうえ、PCゲームを快適に楽しむため、高音質のサウンド機能や独自の冷却システムなどを搭載しているのが特徴です。

 

昨年ごろから、日本でも「e-Sports」という言葉を耳にする機会が増えてきました。今、世界では、PCゲームをe-Sportsというスポーツのひとつとして、楽しむ文化が誕生しています。市場調査会社Newzooによると、2016年のe-Sports世界市場は2015年より43%増加して、4億6300万ドル(約525億円)規模になるとそうです。さらに2019年には11億ドルにまで成長すると予想されています。

 

日本でも東京MXが「e-Sports」を取り扱うテレビ番組「ゲームクラブ eスポーツMaX」を放送開始。また、4月より、フジテレビもCS放送にてe-Sportsの実況生番組「いいすぽ!」をスタートする予定です。また、海外では優勝賞金1億円を超えるe-Sportsの大会も開催されており、そういった大会で活躍する日本人プロゲーマーも増加して言います。そして、e-Sportsの大会も日本でも今年、大きく広がる可能性があります。このe-Sportsに欠かせないのがゲーミングPCなのです。

 

日本はPCゲームが他国に比べ普及していない特殊な状況

ゲーミングPCについて解説する前に、PCゲーム市場について説明しましょう。まずはゲームに詳しいテクニカルライターの西川善司さんに話を伺いました。

↑最新GPU事情からゲーム開発までに精通するテクニカルライターの西川善司さん
↑最新GPU事情からゲーム開発までに精通するテクニカルライターの西川善司さん

 

「世界的にみるとPCゲームは非常に普及しています。例えば、ヨーロッパや中国などはPCゲームの普及率が非常に高い。それに対して、日本はコンシューマゲーム機が非常に強い特殊な国です。アメリカは比率こそわかりませんが、PCもコンシューマも両方普及しています」(テクニカルライター 西川善司さん)

 

日本で「ゲームをする」というと、PlayStation シリーズやWii Uなどの据え置き型ゲーム機や、ニンテンドーDSなどの携帯型ゲーム機を指すことが多いようです。そして、この数年はそれらに加えてケータイ、スマートフォンによるソーシャルゲームが大きく広がっています。

 

まだ、日本市場でPCゲームが盛り上がっいる、と言える段階ではありませんが、この流れに変化が訪れつつあります。そのひとつがゲームタイトルのリリースタイミングです。

 

「近年のトリプルAタイトル(グローバルで数百万本以上売れるゲームのこと)の多くは、PC環境で開発されています。このため、家庭用ゲーム向きだけでなく、PC用も同時に発売されることケースが増加。最近では、カプコンの『STREET FIGHTER V』も、PlayStation 4版と同じタイミングで、PC版が発売されました。そしてハードウエアの垣根を越えて、オンライン対戦ができます。ボクも実際プレイしていますが、PC版でプレイしている人が意外と多いと感じています」(西川さん)

 

以前は、PCゲームといえばいわゆる「洋ゲー」と呼ばれる海外製のゲームや、美少女が主人公の「萌えゲー」が中心で、コンシューマーゲーム機市場で人気のあ るタイトルとは一線を画していました。しかし、近年ではコンシューマゲーム機とPCで同一タイトルの発売が増えています。そして同じゲームをPCでプレイ することに意味があるそうです。「いわゆる3DゲームならPCの方がクオリティの高い表現ができます。例えば、コナミの『Metal Gear Solid V: The Phantom Pain』でもPCの方がよりクオリティの高い表現ができ、結果として、よりよいゲーム体験が可能です」(西川さん)

 

グローバルで20年の歴史を誇るゲーミングPCブランド、「ALIENWARE(エイリアンウエア)」のマーケティングマネージャーを勤める柳澤真吾さんも、ゲーミングPCの普及に期待を向けるひとり。

 

「日本市場ではゲーミングPCの状況は横ばいといった状況。しかし、グローバルでは、地域によって若干の差はあるものの1ケタは伸びており、平均すると年5%ぐらいは成長しています。つまり日本市場もそれぐらいは成長する余地があります」(柳澤さん)

 

「日本ではJRPG(いわゆるドラクエ的なRPG)やアニメなど独自の文化があります。しかし、最近では『Fallout 4』など海外ゲームが受け入れられ初めています。それしてそれらをコンシューマゲーム機でプレイして、その後PCでやってみると、『あれ?なんでこんなにロード速度が違うの?』とか、グラフィックスの違いとかに気付くと思うんですね。それでPCゲームに移行したって話多いです。なので同時タイトル発売は長期的には追い風だと思っています」(柳澤さん)

 

デスクトップ比約8割の性能が発揮できるゲーミングノートPCが続々登場

PCゲーミングを楽しむ上でハードルとなるのが、ハードウエアが高価だということです。例えば、ハイクオリティなゲーミング環境の構築に欠かせないグラフィックス機能を得るためには、専用のGPUを搭載したグラフィックスボードが必要です。しかし、ミドルクラスのGPU「NVIDIA GeForce GTX970」を搭載するグラフィックスボードでも5万円前後と、非常に高価。さらにこのグラフィックスボードはタワー型のデスクトップPC用のため、PCでゲームをするのは、それらを用意できる一部のマニアだけになっていました。

 

しかし、グラフィックス機能の進化により、この状況は大きく変化しています。それがゲーミングノートPCの登場です。世界市場でゲーミングブランド「R.O.G.」(Republic Of Gamers)を展開するエイスースジャパンの西 康宏さんによると、最新のノートPC用GPUの性能は、デスクトップ向けと比べて、約8割にまで高性能化しているそうです。このため、ノートPCでも本格的なPCゲームが楽しめる状況が生まれています。

↑ASUS JAPAN システムビジネス部 プロダクトマネージメント テクニカルプロダクトシニアマネージャーの 西康宏さん(左)と、同マーケティング部 システムプロダクトマーケティング シニアマーケティングスペシャリスト 福島美穂さん(右)
↑ASUS JAPAN システムビジネス部 プロダクトマネージメント テクニカルプロダクトシニアマネージャーの 西 康宏さん(左)と、同マーケティング部 システムプロダクトマーケティング シニアマーケティングスペシャリスト 福島美穂さん(右)

 

「数年前のノートPCに採用されていた400MシリーズのGPUはデスクトップ用と比べて約40%程度の性能しかありませんでした。しかし、現在搭 載されている900Mシリーズでは約80%のパフォーマンスが発揮できます。これならノート型でも十分な性能が発揮できます」(西さん)

 

このノートPC用のグラフィックス機能の進化により、ゲーミングノートPCのラインナップの拡充が広がっています。 これまで、ゲーミングノートPCでは、大画面ディスプレイと高性能GPUを搭載するため30万円超の高額モデルが中心でした。しかし、現在ではエント リー向けのゲーミングノートPCは、10万円台から登場しています。

 

例えばASUSの「ROG GL552VW」は10万円台半ばで購入できるゲーミングノート。フルHD表示の15.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載し、CPUにCore i5-6300HQを、グラフィックス機能としてNVIDIA GeForce GTX 960Mを搭載しています。GPU性能としては中の下といったところですが、ノートPCでのゲーミング体験をこの価格でスタートできると考えると非常に優秀です。

 

「ASUSではゲーミングノートは1モデルのみのラインナップだったが、今シーズンより3モデルに増やしました。ノートなら家でも外でも、海外でもゲームが楽しめます」(福島さん)

↑ASUS「ROG GL552VW」実勢価格14万7720円
↑ASUS「ROG GL552VW」実勢価格14万7720円

 

ゲーミングPCと一般のPCの差は歴然!

GPUを搭載しない一般的なスタンダードノート(X555UA)と「ROG GL552VW」でベンチマークテストをしてみましたが、そのスコア(ゲームプレイへの最適度を点数化したもの)の差は歴然でした。

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↑「ファイナルファンタジーXIV: 蒼天のイシュガルド」ベンチマークによるスコア

 

上がゲーミングモデル「ROG GL552VW」のスコアもので、下がスタンダードモデル「X555UA」のもの。スコアの差は約5倍となっています。ゲーミングノートは、高性能のGPUを搭載しているため、ゲームだけでなくフォトレタッチやビデオ編集、そして3DCGのレンダリングなどにもその効果を発揮することができます。

 

さらにASUSからはモンスターノートも登場しています。「ROG GX700VO」は世界初となる外付け型の液冷ユニットが付属するゲーミングノート。大型のラジエーターを2基、本体の背面に搭載し、GPUにはノート PC用ではなくデスクトップPC用のGPU、GeForce GTX 980を採用しています。そしてこの液冷ユニットを取り付けることで、CPUとGPUを強力に冷却。限界まで性能を引き上げることができます。

↑ASUS「ROG GX700VO」実勢価格59万3780円
↑ASUS「ROG GX700VO」実勢価格59万3780円。後部に取り外し可能な水冷ユニットを備える

 

 

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↑「ROG GX700VO」のベンチマークスコア。「ROG GL552VW」のさらに倍のスコアを叩き出しました

 

さらに、ゲーミングノートPCは単に高性能なだけではありません。「R.O.G.」シリーズでは、ゲームごとに性能レベルを設定できるプロファイル機能を用意。また、1人称視点のゲームにおいて、どの方向から音がしたかを視覚的に表示できるレーダー機能なども採用しており、背後から突然撃たれるといったリスクを低減することができます。

↑ゲームの画面上にレーダーを表示する「Sonic Rader」機能が利用できます
↑ゲームの画面上にレーダーを表示する「Sonic Rader」機能が利用できます

 

ゲーミングノートを選ぶうえで見逃せないのが、デルのALIENWAREです。シリーズでは13.3型液晶を搭載するスリムゲーミングノートもラインナップしていますが、やはり、ALIENWAREを選ぶからには、フラグシップシリーズに注目。17.3インチ液晶を搭載する「ALIENWARE 17」ではカーボンファイバーボディを採用。さらに最高構成では4K液晶の搭載や外付けグラフィックスの利用も可能です。

↑デル「ALIENWARE 17」直販価格19万9980円~(構成による)
↑デル「ALIENWARE 17」直販価格19万9980円~(構成による)

 

このほかにも注目のゲーミングノートは数多く登場しています。例えばレノボの「ideapad Y700」シリーズは15万円台で4Kディスプレイを搭載できるなど低価格ながら非常にコストパフォーマンスが高いのが特徴。搭載するGPUは「NVIDIA GeForce GTX 960M」なので、初めてゲーミングPCを購入する方にオススメです。

↑レノボジャパン「ideapad Y700」実勢価格11万9232円~(構成による)
↑レノボジャパン「ideapad Y700」実勢価格11万9232円~(構成による)

 

PC向けゲームソフトのビックタイトルが続々登場していることや、コンシューマー機/PC用ソフトの同時リリースが増えていること、さらにe-Sportsという概念の広がりにより、日本でも今後、PCゲーミングの人気が高まっていきそうです。

 

【URL】

ALIENWARE http://www.alienware.jp/

エイスースジャパン https://www.asus.com/jp/

レノボジャパン http://www.lenovo.com/jp/ja/