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2017/12/26 17:00

決算書不要のオンライン融資、どう審査? ニーズは? 新時代のレンディングサービス「LENDY」の狙い

五反田スタートアップ第15回「クレジットエンジン」

 

年末――どこの飲食店も宴会やパーティーの予約のため繁忙期に入る。このシーズンに合わせ、設備を拡充したり新しくしたりする店舗もあることだろう。とはいえ、先立つものがないと設備投資もままならない。繁忙期を乗り越えればまとまったお金が入るのに……。

 

そんな中小事業者のニーズに応えるのがオンラインレンディングサービス「LENDY」だ。五反田スタートアップ第15回は、LENDYを提供するクレジットエンジンの代表取締役 内山誓一郎氏に話をうかがった。

 

手間も時間かかる、これまでの融資が抱える課題を解決したかった

――:まず、「LENDY」がどういうサービスなのか教えていただけますでしょうか。

代表取締役 内山誓一郎氏(以下、内山):LENDYは、個人事業主または規模の小さい法人向けのオンラインレンディングサービスです。

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↑クレジットエンジン代表取締役 内山誓一郎氏

 

――:オンライン、ですか? 

内山:はい。来社いただいたり、直接面談していただいたりする必要がなく、オンラインデータで審査をし、融資します。

 

従来の融資には決算書に加えて、事業計画書や、資金繰り表などの資料の提出が必要でした。慣れていればいいのですが、個人事業主が、忙しい仕事の合間を縫って作るのは大変です。知識も時間も必要ですから。それだけ時間をかけて作っても、早くて1か月、⻑いときは3か月も融資が下りるのに時間がかかる。

 

でも、LENDYならPCまたはモバイルからオンラインで申し込んでいただき、最短で2営業日で融資可能。なぜなら、利用者の申し込み時にその事業の決済に関係するクラウドデータと連携してもらい、そのデータをわたしたちの機械学習アルゴリズムで判定しているからです。

 

これは、これまでローカルのPCに保存していたようなデータが、クラウド上に置かれるようになったいまの時代だからこそ実現可能になりました。例えば、クラウド会計システムやオンラインバンキングのデータ、モバイル端末を利用したPOSシステムなど。従来の手書き決算書よりリアルで細かい情報を得られるため、より質の高い審査を行えていると考えています。

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↑オンラインレンディングサービス「LENDY」の仕組み図。事業主は申し込み時に、利用中のクラウド会計やオンラインバンキングなどとのデータ連携の設定をする。あとは独自の機械学習アルゴリズムが自動で判断。データがそろっていれば2営業日というスピーディーな融資が実現する

 

――:確かに、手書きの場合だと書類の不備や偽装に気づきにくそうですね。決算書の審査に時間がかかるのも納得です。

内山: LENDYで利用するクラウド上にあるデータは生のデータです。先ほど挙げたもの以外では、美容室や飲食店の評価サイトの星の数や口コミ、Amazonや楽天などで運営しているECサイトの売上記録などとも連携して判断可能です。実店舗の有無に関わりなく審査することができるので、新しい形態の業種にも対応できるのがLENDYの強みですね。

 

――:サービスを開発するきっかけは何だったのでしょうか?

内山:海外でオンラインレンディングが一般化してきていたことが大きいです。Fintechのなかでもレンディングというのは非常に大きな要素の1つで、海外では多くのサービスが生まれ、成長しており、日本でもこのようなサービスができるのではないかと常々考えていました。実際に立ち上げのきっかけとなったのは、チームに入ってくれているエンジニアと出会って、このチームならできると思ったことです。

 

振り返って考えると、過去に銀行で融資を行っていたことや、その後震災復興事業で中小企業の支援をしていたことの経験が課題意識にありました。銀行の稟議だとどうしても時間がかかるため、できるだけ収益性の高い案件にフォーカスせざるを得ず、少額の案件は対応できませんでした。

 

また、中小企業の資金調達は『どれだけ綺麗な資料を作ることができるか』ということが成否を決めており、『実際のビジネスの状況』とは必ずしも一致していませんでした。

 

LENDYであれば、オンラインデータの連携により『実際のビジネスの状況』を元に審査を行うことができるため、既存の資金調達にある課題が解決できるのではと考えています。

 

銀行など既存の金融機関とバッティングしない理由とは?

――:まだサービスインから10か月ほどですが、利用件数はどれぐらいでしょうか?

内山:正確な数字はお伝えできないのですが、これまでに数百件の融資を行うことができました。まだまだこれからですが、徐々に利用される方が増えて来ています。

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↑利用件数は「まだまだこれからですね」という内山氏。「オンラインレンディングという仕組みがもっと知られるようになればいいのですが」と語る

 

――:このサービスをやっていて良かったと感じた瞬間がありましたら、教えていただけますか?

内山:必要なときに必要なお金が手元にあるかどうかは死活問題。でも、突然銀行に行って「お金貸してください」といっても貸してもらえるはずありませんし、決算書など必要書類を整えていっても、その銀行と普段からお付き合いがなければ、審査に時間がかかるのが一般的です。中小事業者さんにとっては、やはりそこが不満だったようです。

 

でも、我々の場合は一度登録さえしておけば、必要なときいつでも資金の引き出しをすることができる。「このような融資方法が主流になれば、資金調達しやすいのに」と高く評価していただけるのは、素直にうれしいですね。

 

――:お話しいただいているように、銀行など既存の金融機関でも中小事業者向け融資商品があると思うのですが、将来的にはそのシェアを取っていかれるというイメージでしょうか?

内山:それは考えていません。銀行には銀行の、LENDYにはLENDYの良さがそれぞれあると思うんです。

 

銀行では人の目を介して審査するので融資までに時間がかかるのですが、返済に長期間かかる場合や、金額が大きい場合は利息が低いぶん銀行に分があります。例えば、これからお店を作りたい、といったような場合ですよね。

 

逆に、「いますぐ」「少額で」「少しの期間だけ」お金が必要だ、という場合ならLENDYに分があります。例えば、税金を来月までに払わないといけないとか、繁忙期に備えて設備投資しておきたい、などのニーズに応えられます。

 

――:マネタイズの方法について教えていただけますか?

内山:そこはほかの金融機関と同じで、利息のなかから利益を得ています。

 

 【五反田編】 なんでもそろい、採用にも有利な土地柄

――:五反田にオフィスを構えられたのはどういう経緯なのでしょうか?

内山:オフィスを探すとき、考えたのが「どうしたら優秀なエンジニアたちに来てもらえるか」というところでした。エンジニアの採用の観点では、東京のなかでも⻄側のほうが有利だと考えたので、原宿から大崎の間で探していました。

 

そのほかにも、貸金業では、面談スペースを設けなければいけない、という決まりがあるので、そのためにある程度の広さも必要。それらの条件をクリアし、かつ家賃が安い、ということで五反田で創業することになりました。

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↑「実際、ここに来て良かったと感じています。必要なものはなんでもそろっていますし、物の値段も安いですしね。もちろん、アクセスもいいですし」と語る内山氏

 

――:よく利用される飲食店はありますか?

内山:このビルの下にある「スペインバル・ジローナ」でよくランチを食べます。会社の近くでは1番のお気に入りですね。夜食べに行くとしたら、韓国料理「王豚足家」。野菜が食べ放題のサムギョプサルセットがオススメです。本当においしいですから。中華料理「陳麻家」の麻婆豆腐も花山椒がきいていて辛くて最高ですね。

 

――:ところで、五反田にはスタートアップが多く集まっていますが、コラボしたい企業がありましたら教えていただけますか?

内山:同じぐらいの規模のスタートアップ企業と一緒に何かできたら、と思います。あとは、お金まわりというところでfreeeさん、個人事業主に飲食店が多いというところでトレタさんと協業できればいいなぁと思っています。

 

――:最後に、今後の展望と読者へのメッセージがあればお願いします。

内山:現在、オンラインストアプラットフォームを提供しているSTORES.jpとサービス提携していて、出店者向け融資を展開しています。今後は、同様の提携先を増やしていき、そこでの売上情報をもとに、よりシームレスに「いま借りたい」というニーズに応えていけるようにしていきたいですね。

 

また、クラウドデータを取ってレンディングするというモデルを確立し、それを販売できるようにしたい、とも考えています。そのためには、エンジニアやほかの業務を担当してくれる人材が必要なので、興味のある方はぜひ一度ご来社ください(笑)。

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↑「連携企業も、一緒に働くメンバーも、絶賛募集中です」