Vol.161-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は突如開発中止となった、ソニー・ホンダの電気自動車(EV)「AFEELA」の話題。共同開発の難しさと、今後の見通しについて解説する。
ソニー・ホンダモビリティ
AFEELA 1
2020年のCESで発表されたコンセプトEV「VISION-S」がその出発点。2022年9月には「ソニー・ホンダモビリティ」が設立され、2025年1月には「AFEELA 1」を発表。カリフォルニア州で先行予約が開始されていた。

ホンダの計画変更による突然の開発中止発表
3月25日、ソニー・ホンダモビリティは、2026年中にアメリカでの発売を予定していた「AFEELA 1」の発売と開発の中止を発表した。同時に、2027年以降の発売を予定していた第2世代モデルについても開発を中止している。
この発表は青天の霹靂だった。1月のCESでは出荷直前の製品を展示し、3月中旬にはアメリカで出荷に向けたセレモニーも開催している。だが、3月25日になっていきなりのビジネス中止。こうなることを予測していた人はほぼいなかった。
しかし、「まさか」と思いつつも、「やはり」と思った関係者が多いのもまた事実なのだ。
理由は、ソニーのパートナーであるホンダが「EVの製造について計画を大幅に見直す」と発表していたからだ。ホンダは3月12日に、EV戦略見直しに伴い最大2兆5000億円の損失の可能性を示唆している。ホンダが単体で製造するEVである「Honda 0」も製造を中止し、構築中だったEVの製造拠点もすべて見直しとなる。
ソニー・ホンダのEVも、製造はすべてホンダが米オハイオ州に持つ工場で対応し、部材の調達もホンダ経由となっていた。そのため、「ホンダのEV見直しは、ソニー・ホンダにも影響を及ぼすのでは」という声はあった。しかし、ソニー・ホンダが発表するまで、ホンダ側も方針については無言を貫いていた。
生産面でのパートナーは替えが利かない存在
結果として、3月25日に急遽発表され、ソニー・ホンダが開発してきたEVは、そのまま世に出ることはなくなってしまったのである。
すでに述べたように、AFEELAの開発を中止した理由は、生産に使うはずだったホンダの工場が使えなくなったためだ。
「だったら他の工場や、他社の工場を借りてもいいのでは」
そう思う人もいそうだが、自動車生産はそんなに簡単なものではない。独自のノウハウも多いし、パーツ調達も大変だ。自動車生産工場と生産設備を整えるには多額の出資が必要になる。ソニーは生産をパートナーに委託し、自社はソフトと差別化要素を開発する「アセットライト戦略」で自動車市場への参入を計画していた。ホンダはそのためのパートナーなのだ。
ビジネスの大前提が崩れたので、まずは計画を見直さねばならない。だからAFEELAの生産と開発は中止された。そして4月現在、次の計画に対する発表はない。ホンダとの合弁を維持するのか、それとも分かれるのかについての方針も定まっていないという。
ソニーは2020年に自社で試作したEV「VISION-S」を発表以降、6年間にわたってEV開発を続けてきた。製品が出るまでの期間が長すぎて、結果としてホンダのトラブルに巻き込まれた、という言い方もできる。
では、なぜホンダはEV戦略を大きく見直さねばならなかったのか? また、ソニーが作っていたEVの資産・価値はどこに行ってしまうのだろうか?
このことは、日本の自動車産業が抱える課題の写し絵と言える部分がある。 それはどういうことか? 今後の両社のビジネスはどうなっていくのか? その点は次回以降で解説していくことにしよう。
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