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鉄道
2017/12/17 18:00

大江戸線と浅草線は全然違う乗り物だった

2017年12月9日、好天のなか、「都営フェスタ2017 in 浅草線」が東京都交通局馬込車両検修場で開かれた。普段入ることができない車両基地が公開されるとあって、当日は多くの鉄道ファンや親子連れで賑わった。馬込車両検修場が一般に公開されるのは2年ぶり。発見も数多くあり見ごたえ満点だった本イベントで、特に目を引いたポイントを紹介しよう。

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2018年春から浅草線を走る新型5500形もお披露目

都営フェスタ2017で1番の注目を集めたのが新型の5500形。浅草線としては20年ぶりに導入される新車で、淡いピンク色のラインが車体に入る。新たな浅草線の“顔”となる車両だ。今回は、外観のみの公開で車内を見ることはできなかったが、座席に江戸らしい寄せ小紋の柄が採用されるなど凝った内装となっているそうだ。

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↑浅草線の現役車両5300形と並ぶ5500形。淡いピンクラインがアクセントの車体には、これまでにない機能も数多く搭載されている

 

5500形には東京を訪れる外国人向けに多言語対応の液晶モニターが設置されるなど、現代流の味付けがなされている。さらに高速運転も可能となり、現状の5300形では行われていない成田スカイアクセス線への乗り入れにも対応している。今年度は1編成8両のみだが、平成30年度には7編成が導入の予定とのことで、期待したい。

 

都営大江戸線の車両整備のために使う専用機関車に注目!

都営浅草線の西馬込駅の南側にある馬込車両検修場では、都営浅草線と都営大江戸線の車両整備を行っている。大江戸線と浅草線の線路は汐留連絡線(大江戸線汐留駅〜浅草線新橋駅間)でつながってはいるのだが、大江戸線は鉄輪式リニアモーターカーというシステムを利用しており、浅草線の電車とは仕組みが異なっている。そのため大江戸線の電車は、浅草線の路線を自走することができないのだ。それでどうしているかというと、連絡線から先はE5000形電気機関車が大江戸線の電車を牽引して、馬込車両検修場へ入場する。

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↑大江戸線の電車は浅草線を自走できない。そのため牽引用の電気機関車が必要となる。2車体連結のE5000形は、連絡線の48‰勾配をクリアし、最高時速70kmの能力をもつ

 

都営フェスタでは馬込車両検修場の留置線に、浅草線5300形と大江戸線12-000形、牽引用のE5000形電気機関車が並んだ。見比べると、鉄輪式リニアモーターカー方式を採用した大江戸線の特徴でもある車体の小ささが良くわかる。その横で長いパンタグラフを高々と持ち上げたE5000形の姿が凛々しく見えた。

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↑都営浅草線の5300形に比べて大江戸線12-000形はかなり小さい。その横にE5000形電気機関車が並ぶ

 

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↑車両基地内の一部レールには、鉄輪式リニアモーターカーに対応したリアクションプレートという装置が付けられている

 

車体の小さな大江戸線12-000形はパンタグラフもかなり小さい!

検修庫内には大江戸線の12-000形電車のパンタグラフやリニアモーターなども展示されていた。それにしても、大江戸線のパンタグラフはかなり小さい。それでいて重量は85kg(浅草線用は180kg)と、大きさに対して意外に重いようだ。

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↑検修庫内ではパンタグラフの上げ下げを試すことができた。こちらが通常の電車のパンタグラフの大きさ。目の前で見るとかなり大きい

 

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↑こちらは大江戸線のパンタグラフ。8両編成に4台のパンタグラフが装着される。小さめだが、重量は85kg(浅草線用は180kg)と重め

 

そして心臓部ともいえるリニアモーター。こちらは主要パーツということもあるのだろう、大江戸線の小さい車体に比べて大きい印象。1編成8両に16台も搭載されている。重量は1機あたり1320kgとかなり重い。

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↑大江戸線の電車の車両下に付くリニアモーター(主電動機)。レール側に付くリアクションプレートとの間に生じる反発・吸引力で電車を動かし、また制御している

 

縁の下の力持ち。この基地特有の事業用車にも興味津々

都営フェスタでは多くの事業用車も展示されていた。屋外には保線用の軌道検測車や、点検車両などが並ぶ。特に筆者の目を引いたのは、検修庫内に停まっていた大小の車両移動機。なかでも大型の車両移動機には、3タイプの連結機能が付いていて興味深い。さまざまな連結器を持つ車両を検査する馬込車両検修場独自の装備である。小さめの大江戸線の電車は、連結器もまた一段低い位置になっている。

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↑留置線から車両検修庫に車両を移動させるために使われる車両移動機。自動連結器に密着連結器、さらに大江戸線用の密着連結器まで装備されている

 

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↑こちらは検修庫内の移動用に使われる小型の車両移動機。鉄道ファンには“アント”という通称で親しまれる専門工作機メーカーのアント工業が製作している

 

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↑こちらは台車移動機。道路だけでなく線路上も走れるようにタイヤと鉄輪が付いている。フォークリフトを改良した非常に珍しい車両だ

 

車両基地は、普段は立ち入ることができない世界。公開では車両だけでなく、それぞれの車両基地で使われる特別な装備を見ることができ、それが車両基地公開の1つの魅力となっている。鉄道ファンならずとも楽しめるこうした車両基地の公開イベントが、今後も各社で続けられることを願いたい。

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↑東京都交通局以外にも鉄道各社のブースも設けられた。さまざまな関連グッズが販売され、車両展示とともに大変な賑わいを見せた