家電製品の「ネーミング」について深掘りする記事の第2弾。今回は、東芝ライフスタイルの洗濯機「ZABOON(ザブーン)」が誕生した経緯を追っていきます。
日本の洗濯機の歴史は東芝から始まる
日本の洗濯機の歴史は東芝から始まっているといっても過言ではありません。1930年(昭和5年)、東芝の前身である芝浦製作所が国産洗濯機第1号となる「撹拌式ソーラーA型」を開発、1956年には日本初のドラム式全自動洗濯機「DA-6」(乾燥機能はなし)を発売しています。

1966年には二槽式洗濯機を発売し、ブランド名として「銀河」を採用しました。この時期、他社も積極的に二槽式の新製品を投入し、それぞれに愛称を付けてイメージ戦略を強めていきます。
ユーザーが洗濯機に求めるものは確実な汚れ落ち。そのため、洗濯槽の強力な水流や、洗濯後に白く輝く衣類を想起させるブランドが相次いで登場したのですが、東芝の銀河も洗濯槽の“うず”を銀河に見立てたものと思われます。
新ブランドのZABOONでドラム式のネガティブイメージを払拭
そして2009年。それまで40年以上にわたって使用してきた銀河に代わり、新たに「ZABOON」を採用することとなりました。なぜ長年親しんできたブランドを変えたのか、東芝ライフスタイル リビングソリューション事業部商品企画部の秋田真吾部長は、次のように説明します。
「2000年にドラム式洗濯乾燥機を発売し、そのときは21世紀に向けた新時代の洗濯機ということで『銀河21』というブランドを付けたのですが、2009年12月に発売を予定していた新製品は、それまでにない新技術を投入することもあり、ドラム式に対するイメージを一新したかったのです。従来の延長線上にある製品ではなく、新しいドラム式による新しいスタートということを印象付ける狙いがありました」(秋田さん、以下同)

当時、ドラム式洗濯乾燥機は縦型洗濯機に比べて使用水量が少ないぶん、汚れ落ちが悪いというイメージが蔓延していました。
このネガティブなイメージを払拭するため、東芝では当時としてはいくつかの新技術を投入したのです※。1つ目が、独自開発の「ACTIVE S-DDモーター」を世界で初めてドラム式洗濯乾燥機に採用したこと。これは、モーターの磁力を可変させ、洗濯の工程ごとに最適なモーターの回転数を維持することで、洗浄力をアップしながら省エネ性を実現するものです。
※ ここで紹介する技術は当時のもので、現在は別の技術に変わっており、まったく同じ技術がいまも採用されているわけではありません。

たとえば、モーターのトルクが必要な水洗い時には磁力をアップし、駆動力を従来に比べて約20%高めて重い衣類でも持ち上げ、急停止させて叩き洗い効果を高めます。脱水時には磁力を弱めることでモーターの回転数を上げて、水切れをよくして乾燥を早めます。
2つ目が、従来機種よりも水圧を高め、高水圧でドラム槽の手前から奥まで均一に洗剤液を噴射する2本の「高圧ダブルシャワー」。衣類にまんべんなく洗剤液を浸透させることで洗浄力のアップが実現しました。

「こうした新技術による洗浄力の高さを一言で表せる言葉を模索しました。当時は、長いフレーズも候補に挙がったそうですが、やはり覚えやすいよう3~4文字程度、濁点が入っていると覚えやすい、ということで、海の波の力をイメージした“ZABOON”に決まった、という経緯があります」
「東芝の洗濯機をください」から「ZABOONをください」に
このリブランディング戦略は功を奏します。店頭販売の景色が大きく変わったのです。
「ZABOONの名称を使ったテレビコマーシャルや広告を積極的に展開したこともあって、認知率は急速に上がっていきました。それまでは、家電量販店の店頭で『銀河が欲しい』というお客さんは皆無でしたが、以降は『ZABOONをください』というお客さんが増えたそうです」
その後、2013年には縦型洗濯機にもZABOONの名称を使うようになります。
「その際にも、従来から1歩も2歩も進んだ縦型モデルを開発しようということで、ZABOONを使うことを決めました。当時は他社の節水モデルが大人気だったのですが、当社は縦型でも乾燥機能を強化すべく、新しい乾燥方式を採用したり、乾燥時に衣類をほぐせるパルセーターを開発したりしたほか、液晶パネルの搭載や操作ホイールなど、当時のドラム式に搭載していた新技術も採用しました。そうした背景から、縦型洗濯乾燥機にもZABOONと名付け、ドラムと一体となった販促を展開したのです」
縦型洗濯乾燥機では新しいネーミングを作るべきではないかという意見もありましたが、ドラム式のZABOON登場から4年が経ち、“東芝の洗濯機=ZABOON”という市場イメージが定着していたことから、最終的には現在の形に落ち着いたそうです。

↑左は2026年10月発売「TW-137XP6」、右は2026年6月発売「AW-10DPB6」
洗濯機に関しては、「ウルトラファインバブル洗浄」「大風量ふんわリッチ速乾」「うるおい上質仕上げ」「バブルdeメンテ」など、製品特徴や機能に関するネーミングが付けられていますが、これらの名付け方法に関して、秋田部長は次のように説明します。
「製品名や特徴・機能の名前を決めるときには、商品企画部門や営業部門など洗濯機に関わるメンバー全員でアイデア出しをしています。時には広告代理店やコピーライターさんにも協力をいただくこともあり、毎回、100個以上の候補が出され、その中から決めています。以前、それでもどうしてもよいアイデアが出なかったときには、みんなでカラオケに行き、適当に番号を入れて画面で歌詞を見ながらブレストしたこともあります。アーティストの方は、一言に思いを込めるのが本当に上手なので、とても参考になりました」
特徴・機能を端的に表し、それでいて覚えやすい名前をつけるのは、簡単なようで意外に難しいものです。結果的にシンプルなネーミングですが、そこに至る経緯には、かなりの苦労があるのがわかります。それだけに、「ZABOONください」のように、自分たちが付けた名前で指名買いしてもらえるのはうれしいことでしょう。

東芝は2009年にオーブンレンジの「石窯ドーム」、2010年に掃除機の「トルネオ」、2011年には冷蔵庫の「VEGETA」と、2010年前後に相次いで生活家電のリブランディングを行なっており、これらは現在、洗濯機同様に東芝家電の代名詞といえる存在になっています。
ユーザーに愛され続けるには、その製品自体の機能・性能やデザインに対する満足度の高さもさることながら、愛着の湧くネーミングも欠かせません。
日本のヒットネーミングが集まるネーミング大賞が開催
GetNaviではネーミングの価値を社会に発信する「日本ネーミング大賞」を応援中。2026年9月1日から、日本ネーミング大賞 2026の募集が開始しています。過去には多くの人が知っている製品、ブランドも受賞。気になる人は公式サイトをチェックしてみてください。

「日本ネーミング大賞 2026」応募概要
応募対象:2025年10月1日~2026年9月30日の間に、日本国内で販売または提供されている「商品名」「サービス名」「社名」「ブランド名」等で、商標登録がされているもの(※20年前に発売されたロングセラー製品でも、期間内に販売されていれば対象となります)
応募期間:2026年9月1日(火)〜10月10日(土)
応募方法:公式ホームページのエントリーフォームよりオンライン応募
応募費用:ネーミング1件(1部門)につき5,500円(税込)
2026年度地域フォーカスエリア:「広島県」
※地域ソウルブランド部門において、広島県の企業・団体等が商標を持つネーミングの応募費用は無料となります。