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2018/9/3 22:30

8K・有機EL・AI化――これからのテレビの進化を占う「IFA2018」レポート

世界最大級のエレクトロニクスショー「IFA2018」がドイツ・ベルリンで開催されています。今年、ソニーやパナソニック、シャープをはじめとするメーカーが展示した最新のテレビを、サムスン、LGエレクトロニクスなど海外勢の動向と合わせてご紹介したいと思います。

↑毎年ドイツの首都ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」に今年も最新の多くの新製品が集まりました

 

テレビのトピックスは4K/HDR映像の正常進化以外にも、「8K」の製品、または技術展示を積極的に行うメーカーがありました。Googleアシスタント、アマゾンAlexaなどAIアシスタントへの対応はヨーロッパでも話題になっています。

 

ソニーはフラグシップの有機EL&液晶“4K/HDRブラビア”を同時発表

ソニーは日本でも2018年後半に発売が期待される4K/HDR対応のブラビアを発表しました。それぞれに新しく開発された映像プロセッサー「X1 Ultimate」を搭載したことで、画質がまた大きく飛躍したところに注目が集まります。映像クリエーターの意図をそのまま過程に届けられる高画質を、新たに「Master Series」というフラグシップモデルだけが冠することのできる名前を設けてアピールしています。

 

ヨーロッパでも人気の有機ELテレビは「AF9」として65型と55型の2サイズ展開。液晶テレビ「ZF9」は75型と65型の2モデルが展示されました。

 

AF9シリーズは有機ELの特性を活かしながら、より“深い黒”から高輝度の映像まで自然、かつ忠実に再現する「Pixel Contrast Booster」を新搭載。現行モデルのA1で初めて実現した、フロントパネルから音が鳴るような体験が味わえる「Acoustic Surface Audio+」は、アクチュエーターの数を追加して、サブウーファーも背面に横向きに開口部を付けて搭載するなど、より臨場感あふれるサウンドに仕上げていました。

↑ソニーの4K/HDR対応フラグシップ有機ELテレビ「AF9」シリーズ

 

液晶テレビのZF9シリーズは、広視野角の液晶パネルの上にソニー独自の光学設計技術により開発した特殊なフィルムを配置して、横から画面をのぞき込んだ時にも鮮やかな色彩やコントラスト感が失われない新技術「X-Wide Angle」が見どころです。

↑液晶のフラグシップは「ZF9」シリーズ。ともにMaster Seriesとして高画質をアピールしています

 

両シリーズともに、ヨーロッパでは本体にGoogleアシスタントをビルトインして発売されます。リモコンのGoogleアシスタントボタンを押すだけで、「OK グーグル」の発声が省略できるところがテレビならではのポイントですが、AF9とZF9は本体にマイクを搭載します。画面が消えているスタンバイ状態の時にもトリガーワードに反応して、スマートスピーカーのようにスマート機能を音声で操作できるようになります。

↑Googleアシスタントをリモコンなしで起動できるところも特徴

 

パナソニックはHDR10+をアピール

パナソニックはテレビのビエラシリーズに新製品の発表はなかったものの、画質の進化に関連する大きなアップデートのアナウンスがありました。

↑パナソニックの展示テーマは“Hollywood to your home”。各家庭で映画館の臨場感を再現できる4K/HDR有機ELテレビが一堂に揃いました

 

昨年夏に20世紀フォックス、サムスンと3社共同で起ち上げた新しい映像の高画質化技術の規格「HDR10+」に対応したテレビを2018年度に発売。ヨーロッパで展開しているFZ950/FZ800/FX780/FX740/FX700の各シリーズにもアップデートで提供することが明らかになりました。

↑パナソニックは「HDR10+」の高画質化技術をアピールしています

 

HDR10+に対応する映像コンテンツには、映像の各フレームに「ダイナミック・メタデータ」と呼ばれる情報が収録されます。対応する映像機器は、このメタデータ情報を読み込むことで作り手の意図を忠実に再現する色彩、明るさとコントラストを再現できるようになります。メーカーはダイナミック・メタデータをもとにHDR映像を忠実に再現するアルゴリズムをテレビに搭載するだけで、高度な映像処理エンジンを開発・搭載するために必要な開発の負担を軽減できることが大きなメリットになります。引いてはHDR10+に対応する「お手頃な価格のHDR対応・高画質テレビ」も作りやすくなって、HDRの普及を後押しする期待があります。

 

パナソニックではヨーロッパ向けのモデルにソフトウェアのアップデートにより、Chromecast built-in/Works with Google Assistantへの対応を進めていくことも発表されました。Googleアシスタントを搭載するスマートスピーカーなどから、テレビの起動や音楽コンテンツのキャスト再生などが手軽に楽しめるようになります。海外ではAmazon Alexaを使ってUltra HDブルーレイプレーヤーのディスク再生を音声でコントロールする機能もスタートしていますので、新しいインターフェースまわりの機能が日本のビエラにも近く乗ることを期待したいところです。

↑パナソニックのテレビもGoogleアシスタントによる音声コントロールに対応予定

 

シャープはAQUOS 8Kの第2世代機を展示

シャープは昨年からまたIFAの出展を復活。今年もAQUOSのテレビとモニター、サウンドバーにスマホなどを積極的に紹介していました。

↑シャープは8Kテレビの第2世代モデルをIFAで初めて披露しました

 

日本国内では昨年末から70型の“AQUOS 8K”テレビ「LC-70X500」を発売していますが、今年は第2世代へのアップデートを予定。サイズ展開も80型と60型を上下に加えた3サイズに広がります。

↑60型の8Kテレビが今年は日本でも発売予定

 

ヨーロッパ市場向けとして、チューナーを搭載しないモニター仕様の第2世代機がIFAで展示されました。このうちヨーロッパでは80型のモデルのみが来春ごろを目処に商品化が予定されているそうです。シャープの広報担当者は「日本向けには3サイズともにチューナーや録画機能を内蔵するモデルを投入したい。Dolby Atmos対応のサウンドバーも用意する予定」と説明していました。コンテンツについてはユーザーがデジタルカメラで撮影した静止画の再生などを含めた高画質訴求を行っていくそうです。

 

シャープはヨーロッパで一時テレビの販売を撤退していたので、ブランドイメージを再構築するための取り組みにも力を入れています。AQUOSのテレビも、イタリアでフェラーリなど高級自動車のデザインやエンジニアリングを手がける会社として有名なピニンファリーナと組んで、デザインを一新したプロトタイプを出展。プレミアムブランドとしてのイメージ戦略に力を入れています。

↑ピニンファリーナによるAQUOSのプレミアムデザインモデルのプロトタイプ

 

LGエレクトロニクスは88型・8K・OLED

LGエレクトロニクスも8Kへの一歩踏み込んだ提案をしていました。ブースには88型の8K解像度を持つ有機ELを展示。パネルの技術をただ見せるのではなく、チューナーに独自の映像処理プロセッサー「α9」、その他の制御ソフトを組み込んだ「8Kテレビ」が作れる技術力をアピールしています。

↑LGエレクトロニクスは8Kテレビとして88型の大画面OLEDを検討中

 

ただ、8Kテレビとしての導入計画については「世界各地の市場性を見ながら、少し時間をかけて判断したい」(同社広報担当)ということで、すぐに新製品として発売する予定はいまのところないそうです。

 

現行の有機ELテレビはAI搭載もLGがアピールしている大きなポイントのひとつです。Googleアシスタントをビルトインしただけでなく、独自のAIアシスタントであるThinQ(シンキュー)も共存。音声操作でテレビのセッティングまで変えることができたり、LGが韓国にヨーロッパ、アメリカなどで展開するスマート家電のコントロールを、テレビを軸に置いて快適に音声で操作できるところにもスポットを当てて紹介していました。

↑LGのテレビはGoogleアシスタントとThinQの両AIアシスタントを搭載しています

 

サムスンも8Kテレビを展示

サムスンとLGはいつもテレビの最先端技術をIFAでお披露目して競い合っています。サムスンもQLED(液晶)の8K対応テレビを“QLED 8K”「Q900R」として、88/82/75/65型の4サイズで展開していくことを発表しました。こちらはヨーロッパでは秋頃に商品として販売をスタートする計画があるようです。コンテンツについてはアップスケーリングの技術を駆使してカバーする戦略を打ち出しています。

↑サムスンも8Kの液晶テレビを多数発表

 

また次世代のディスプレイ技術として、自発光型の映像素子であるマイクロLEDを使ったパネルを試作して展示も行っていました。こちらは家庭用というよりは、いまのところデジタルサイネージ用途などを検討しているようです。パネルモジュールを組み合わせることで大画面化にも対応。色鮮やかな映像が来場者を釘付けにしていました。

↑次世代のディスプレイ技術として注目されるマイクロLEDの試作機も展示されていました