積読という幻想
私の友人の一人は読書について途方もない幻想を抱き、何千冊もの本を集めて読もうとしたが、結局その一部しか読めないうちに亡くなってしまった。このように、人は読書について大いなる幻想を抱きがちである。
(『ハマトンの知的生活のすすめ』から引用)
難解な文学書や学術書を買うのは快感です。所有しているだけで賢くなった気分になれるからです。計画性のない人は、理解できもしない本を買い続けて、知的訓練を先送りして、読みあぐねているうちに亡くなります。
ハマトンは、「読書は計画性がなければできない」と述べています。たしかに、読書好きならば「名作文学と言われているものを読破したい」と思うものです。たとえば、プルースト『失われた時を求めて』は岩波文庫版で全14巻もありますが、まともに完走できる確率はきわめて低いです。計画性を発揮するならば、とりあえず『失われた時を求めて ─まんがで読破─ 』を読み終えましょう。
貧しさは知的生活を妨げる
かろうじて毎日暮らしていける程度の経済力しかないと、遠大な研究計画も実現することができないばかりでなく、ときには健康を害したり、人間性に悪影響が出たりして人生を破壊してしまうことがある。
(『ハマトンの知的生活のすすめ』から引用)
貧すれば鈍する。衣食足りて礼節を知る。腹が減っては戦はできぬ。先人たちは「貧しさの弊害」をよく知っていました。
ハマトンは、「貧しさは知的生活を妨げる」と述べています。なぜなら、家計が貧しすぎると「心身の健康」を損なうからです。先述した「健康は最高の投資である」という考え方にも通じます。知的生活を全うしたければ、お金儲けを嫌うべきではありません。
本書『ハマトンの知的生活のすすめ』を読み終えたら、原典の日本語訳である『知的生活』(渡部 昇一・訳/講談社・刊)にも手を伸ばすことをオススメします。お試しください。
【書籍紹介】
ハマトンの知的生活のすすめ
著者:P.G.ハマトン
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書は英国の著述家であり美術雑誌の編集者であったP・G・ハマトンが1873年に刊行した知的生活論、自己啓発論の世界的名著である『知的生活』から現代人に必要な部分を精選して編訳したものです。