グルメ
2018/8/9 6:00

パンのおいしい香りは「パンの耳」から出ていた!――『パンの科学』

大量生産の食パンや菓子パン。じつは、最新の科学技術のかたまりです。わたしたちに「しあわせな香り」と「おいしい食感」を届けるため、製パンにまつわる研究が続けられています。

 

パンの科学』(吉野精一・著/講談社・刊)という本があります。ブルーバックスシリーズの新刊です。パンの歴史、材料、発酵、焼成、製法などを、わかりやすい解説で学ぶことができる1冊です。

 

 

パンの「腹持ち」を科学する

焼成後のパンには、スポンジ(海綿)状でやわらかい「クラム」部分と、外側のカリッとした焼き色のついた「クラスト」部分があります。

(『パンの科学』から引用)

 

あなたの朝食は、ごはん派ですか? パン派ですか? 1日のはじまり。昼食時間までのあいだ頭と体を動かすためには、どちらが「腹持ち」が良いのか。だれでも一度くらいは考えたことがあるでしょう。

 

本書では、パンが消化されるメカニズムについて説明しています。パンのクラム(スポンジ部分)は、胃酸や消化液を吸収して膨らみます。だから、パンは満腹感を得やすいわけです。クラムは、2時間ほどでドロドロのペースト状になります。

 

ちなみに、米飯がドロドロになるまでには3時間以上かかります。腹持ちは「ごはん派」の勝ちです。ただし、短時間で満腹感を得たいときには、食パンや菓子パンなど、すぐに食べられる「パン派」のほうに軍配が上がります。

 

 

おいしい香りの正体

炭水化物には、広義の常習性・中毒性があります。1日3食だけにとどまらず、毎日でも飽き足りないからです。焼きたてパンの香りは、理性を吹き飛ばすことさえできます。


焼きたてのパンの香りはその大半がクラスト部分の香りです。
(中略)
一般的な食パンやロールパンのクラム部分の香りは、エタノールが全体の約96%を占め、残りに数十種類以上の香気成分がごく微量含まれます。

(『パンの科学』から引用)

 

焼きたてパンにまつわる「香ばしさ」や「いい匂い」に関しては、科学的な解明がおこなわれています。パン耳(クラスト)が発する香りについて紹介します

 

パンのクラスト(外皮)が加熱されることによって、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メチルブタノール類、揮発性カルボニル化合物(エタノール、プロパノール、アセトン)、メラノイジン……などが生成されます。小麦粉に含まれるデンプン由来の天然フレーバーであり、焼き立てパンにおける「食欲をそそる香り」の正体です。

 

ちなみに、クラム部分も再加熱することによって、エタノール以外の揮発物質を生成します。つぎは、トーストの科学です。

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