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2022/10/28 6:30

のん&三田佳子「透明感っていつまでも保持していられるんだなって衝撃を毎日感じていました」映画『天間荘の三姉妹』

高橋ツトム氏の同名コミックを北村龍平監督が映画化した『天間荘の三姉妹』が10月28日(金)より全国公開する。そこで、主人公・小川たまえを演じたのんさんと、たまえとの出会いが閉ざした心に変化をもたらしていく財前玲子を演じた三田佳子さんにインタビュー。写真撮影では、三田さんとの撮影に、のんさんは恐縮しつつ、2ショットを喜んでいらっしゃいました。そんなお2人に、撮影中のエピソードやお互いの俳優としての魅力についてなどを語っていただきました。

 

【のんさん&三田佳子さんの撮り下ろし写真】

 

三田佳子さんの威力を感じながら演技ができて幸せでした(のん)

──小川たまえ(のん)と財前玲子(三田佳子)という役で共演していかがでしたか。

 

のん 財前さんは、最初は人を寄せ付けない気難しい女性ですが、たまえと打ち解けてからは笑ってくれたり、自分のことを打ち明けたりしてくれるようになります。そうなってからの温かさが本当に素敵で、たまえちゃんが好きになっちゃうのもわかるなってヒシヒシと感じながらご一緒させていただきました。

 

三田 のんちゃんが演じたたまえはピュアで何も汚れているものを持っていない珍しい子なんです。対する玲子はいろいろあって、誰に何を言われても偏屈だったのに、たまえに会ってから変わっていきます。おそらく、玲子はたまえにどこか自分の青春時代と共通するものを感じて「かわいいな」と思ったんでしょうね。天と地の狭間にある天間荘に留まっている玲子にしてみれば、そんな感情を抱けたことは幸せだと思うんですね。2人の関係性はこの映画の芯の1つでもあって。北村監督に声をかけていただいきましたが、私は撮影が始まる直前に病気をして、この役を降りようと思ったこともありました。でも「体調が良くなるまで待つので出てほしい」と言ってくださって、キャストもスタッフも初めての方ばかりでしたが、思いきって出演したんです。のんちゃんにそう言っていただけて、良い役目を果たせたなって思っています。

 

のん ご病気をなさったことは限られたスタッフの方しか知らなかったので、私は現場で教えていただきました。でも、それを感じさせないくらいセリフや存在に威力を感じたので、素晴らしいなと思いました。めちゃくちゃ憧れました。三田佳子さんの威力を感じながら演技ができて幸せでした。

のん…1993年7月13日生まれ。兵庫県出身。2013年、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』のヒロインを演じ、人気を集める。アニメ映画『この世界の片隅に』、映画『私をくいとめて』などで主演を務める。2021年長編映画『Ribbon』では脚本・監督・主演を担当した。今年、さかなクンの自叙伝を映画化した、主演作『さかなのこ』が話題に。公式HPTwitterInstagramYouTube

 

(のんちゃんは)役者としても人間としても媚びないで立ち向かう(三田)

──北村監督の演出で印象に残っていることはありますか。

 

のん 撮影が始まる前に、「気になることがあれば何でも言ってください」とオープンに接してくださる方でした。お話しやすかったですし、コミュニケーションも取ってくださって、旅館のシーンで「ここはセンシティブなシーンだから」と、最小限のスタッフの方だけでドライやリハーサルをするようにしてくださったんですね。そういうふうに気遣ってくださる方でした。

 

三田 玲子が啖呵を切るシーンがあるんですが、そこは財前玲子という人の啖呵を切ろうと思って、少し人間っぽい感じにしようと思いました。そしたら監督に「三田さん、『極道の妻たち』でやってください」って言われたんです(笑)。「やだ、監督ったら。そんなことしていいの?」って思ったけど、「わかった、やってみるね」ってやったんです。そしたら啖呵を切った相手も涙を流しているし、映像もそっちのほうが良かったんです。ああ、そういうものなんだな~って感じました。

 

──三田さんは共演してみて女優としてののんさんの魅力はどんなところだと思いましたか。

 

三田 媚びないですよね。以前から感じていたことですが、役者としても人間としても、1つひとつの事柄に媚びないで立ち向かって行く。実際に一緒に芝居をしても、役柄とも相まってそれがなおさらストレートに感じられて気持ち良かったです。実はちょっと心配もしたのよ(笑)。「ずっとこのままでいいの?」って。でも出来上がったものを観たら、それは彼女の役の芯にある必要なものだったのね。長くこの仕事をやっていると、いろんなことをやりたくなっちゃうんだけど、1つのことをやり通した勝利だなと思いました。

 

のん うれしいです。三田佳子さんに褒めていただけるなんて、役者をやっていてよかったーって思えるというか。

 

三田 そんな褒めるなんておこがましいですよ(笑)。

 

のん そう感じてくださったことがうれしいです。

三田佳子●みた・よしこ…1941年10月8日生まれ。大阪府出身。1960年高校卒業と同時に、東映に入社。日本を代表する女優として、1986年『いのち』、1994年『花の乱』でNHK大河ドラマに2度主演を務めるなど、映画、舞台、テレビ、出版など幅広い分野で活動を続ける。公式HP公式blog

 

三田さんは晴れを引き連れて現場にいらっしゃる(のん)

──のんさんは共演して、三田さんについて発見したことはありましたか。

 

のん 三田さんがご出演されたドラマや映画を観て、心にグッと入り込んでくる魅力を持って演じていらっしゃるのが本当に素敵だなと思っていました。大先輩にこんなことを言うのはなんですが、「めっちゃかわいい!!」って言いながら映画やドラマを観ていたんです。だからドキドキしながら撮影を待ち望んでいて、実際に現場でお会いするようになると、三田さんがいらっしゃると晴れるんですね。

 

三田 そうなの! 晴れ女なの(笑)。

 

のん 晴れ女神でした(笑)。それくらい晴れを引き連れて現場にいらっしゃるというか。撮影していても三田さんが立っていらっしゃる真上が晴れて、雲が切り裂かれたみたいに晴天になるんですよ。

 

三田 あれは天にいたずらされているのかしらね(笑)。

 

のん (笑)。でも素敵でした。

 

──昔から晴れ女でいらっしゃるのですか?

 

三田 昔からなの。台風の真っただ中でロケしていたときも、私の出番の間だけ晴れちゃうの。事務所から「三田さん、さすがに今回は酷い天気でしょう?」って連絡が来たけど「いや、晴れているわよ」なんてこともあったくらい。のんちゃん、そう感じられたんだ?

 

のん はい。かっこいいなって思いました。そして透明感があっておきれいだなって思いました。透明感っていつまでも保持していられるんだなって衝撃を毎日感じていました。

 

今の時代に、まさに求められている作品なんだろうなって(三田)

──もしも天間荘のような生と死の狭間のような場所があるとしたら、人生がもっと豊かになるのかもしれないなって思いました。完成した作品を見てどんなことを感じられましたか?

 

三田 人間は罪深いから、考える余裕もなく残虐な死に方をする人がいたり、今でも戦争が起きたりしますよね。そんな今の時代に、まさに求められている作品なんだろうなって思いました。天間荘って、天と地の間の場所のことだって、今さらタイトルに気が付いたんだけれど、そういう場所で生活し直してみたり、悩んでみたりして、納得して死んでいく。私の役のような臨死状態の人は、天間荘でもう一度命について考える余裕ができる。そういうドラマが素敵だなって思いました。

 

のん 原作を読んだときに、ファンタジーで「死」というものをこんなふうに描けるんだなって納得できたんです。大切な人たちを亡くした人の気持ちも救われるなって思いました。『天間荘の三姉妹』は、亡くなった方々が今生きている人たちのことを思ってくれているということを感じられる作品だと思います。もしかしたらこういう場所があって、自分の大切な人も魂を癒しているのかもしれない、そう思うと頑張って生きていこうと思えるなって感じました。

 

三田さんの水色のダウンコート姿が、めちゃくちゃかわいかったです(のん)

──ここからはモノやコトについてお聞かせください。三田さんは今ファッションにハマっていらっしゃるそうですね。最近好きなファッションはどんな感じですか。

 

三田 年齢が相当高いので本来は大人しくなっていかなきゃいけないのかもしれないけど、私は逆に冒険をしたいんですね。私は子供を産んだのも遅かったので、子供から新しいファッションを知って、さらに孫から今の勢いのあるファッションを見ています。のんちゃんの普段着も現代的でかわいらしさも取り入れていて素敵なんです。だから「それいいわね」って、教えてもらったりしました。いつもそうやって興味を持って、若い人たちから吸収して、同じようなファッションをして生き抜きたいなって思います。10年したら90歳を超えちゃいますからね。今を楽しく前向きに、自由に生きていかないと。ファッションも新しいものを怖がらずに取り入れています。

 

のん 普段のファッションをお見かけしたことがあるんですが、素敵だな、おしゃれだなって思いました。現場で水色のダウンコートを着ていらっしゃって、めちゃくちゃかわいかったです。

 

──のんさんはアクセサリーにハマっていらっしゃるそうですね。

 

のん はい。以前は失くしちゃうから付けなかったんです。でもイヤーカフやネックレスを付けるようになりました。

 

──三田さんにおすすめするならどんなアクセをおすすめしますか。

 

三田 今日付けているのも素敵じゃない? それは何ていうの?

 

のん イヤーカフです。耳に引っかけるだけなんです。

 

三田 いいわね、それまねしたい。

 

のん お似合いになると思います。

 

三田 イヤーカフね。メモに書いておきます(笑)。

 

天間荘の三姉妹

10月28日(金)より全国公開

【映画「天間荘の三姉妹」よりシーン写真】

(STAFF&CAST)
原作:高橋ツトム
監督:北村龍平
脚本:嶋田うれ葉
出演:のん、門脇麦/大島優子、
高良健吾、山谷花純、萩原利久、
平山浩行、柳葉敏郎、中村雅俊(友情出演)/三田佳子(特別出演)、
永瀬正敏(友情出演)、寺島しのぶ、柴咲コウ

(STORY)
天界と地上の間にある街、三ツ瀬。美しい海を見下ろす山の上に、老舗旅館「天間荘」がある。切り盛りするのは若女将の天間のぞみ(大島優子)だ。のぞみの妹・かなえ(門脇麦)はイルカのトレーナー。二人の母親にして大女将の恵子(寺島しのぶ)は逃げた父親をいまだに恨んでいる。

ある日、小川たまえ(のん)という少女が謎の女性・イズコ(柴咲コウ)に連れられて天間荘にやってきた。たまえはのぞみとかなえの腹違いの妹で、現世では天涯孤独の身。交通事故に遭い、臨死状態に陥ったのだった。

イズコはたまえに言う。「天間荘で魂の疲れを癒して、肉体に戻るか、そのまま天界へ旅立つのか決めたらいいわ」。しかし、たまえは天間荘に客として泊まるのではなく、働かせてほしいと申し出る。

(C)2022高橋ツトム/集英社/天間荘製作委員会

※高橋ツトムの「高」の字はハシゴ高になります。

 

撮影/映美 取材・文/佐久間裕子 ヘアメイク/菅野史絵(クララシステム)(のん)、森田光子(三田) スタイリスト/町野泉美(のん)、村井 緑(三田) 衣装協力/ワイズ(三田)、デビアス フォーエバーマーク(三田)