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2024/4/24 6:30

舞台『蒲田行進曲』でヒロインを演じる日比美思が語る、つかこうへい作品に懸ける思いと、愛用するカメラ「そのときの自分の気持ちを写したいんです」

「ようかい体操第一」などのヒット曲を飛ばしたダンスボーカルグループ「Dream5」のメインボーカルとして活動後、現在は俳優として様々な映画やドラマ、舞台に出演中の日比美思が、5月1日に初日を迎える舞台『蒲田行進曲』でヒロインの小夏を務める。劇作家つかこうへいの代表作で、深作欣二監督の映画版も名作として語り継がれている『蒲田行進曲』へ懸ける思いや舞台の見どころとともに、大好きなカメラについて語ってもらった。

 

日比美思●ひび・みこと…1998年9月20日生まれ。神奈川県出身。2009年、『天才てれびくんMAX』(NHK教育、現Eテレ)の全国オーディションに合格。同年、ダンスボーカルグループ・Dream5のメインボーカルとしてデビュー。2016年にグループ活動終了後、女優として活動を始める。2017年「マジで航海してます。」(TBS・MBS)でドラマ初出演。主なドラマ出演に『さくらの親子丼2』(東海テレビ)、『太陽とオオカミくんには騙されない』(AbemaTV)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)、『真夏の少年~19452020』(テレビ朝日系)、『好きやねんけどどうやろか』(読売テレビ)、主な映画出演に『恋のしずく』(2018年)、『町田くんの世界』(2019年)、『生きちゃった』(2021年)、主な舞台出演に『陽だまりの樹』(2021年)、『点滅する女』(2023年)など。公式HPXInstagram

 

【日比美思さん撮り下ろし写真】

 

つかこうへいというジャンルを演じている気持ちになった

──今回の舞台が決まる前に、映画『蒲田行進曲』(1982年)を観たことはありましたか?

 

日比 十代後半のときに受けたワークショップで、講師の方に薦められて観ました。私が生まれる前の映画なのに新しさを感じて、時代を超えて笑って泣ける素敵な映画だなという印象でした。だから今回、オーディションに合格したときは、誰もが知っている名作に自分が携われるということでうれしかったです。

 

──ヒロイン小夏を演じるプレッシャーも大きかったのではないでしょうか。

 

日比 演出のこぐれ修さんは、俳優としても演出家としても、たくさんのつかこうへい作品に関わってきた方です。銀ちゃん役の田谷野亮さん、ヤス役の小谷けいさんも、2019年の初演に続く続投。私は、つかこうへい作品はもちろん、紀伊國屋ホールの舞台に立つのも初めて。そもそもスタートダッシュが皆さんと違うのでプレッシャーはありましたし、はいつくばる気持ちでやらないと駄目だなと気が引き締まりました。

 

──ちなみに、つかさん原作の舞台を観たことはありますか?

 

日比 映画『蒲田行進曲』を観た時期と同じぐらいに、『郵便屋さんちょっと』という舞台を観劇しました。

 

──今回、『蒲田行進曲』の台本を読んだ印象はいかがでしたか。

 

日比 基本的に、つかさんが書かれた戯曲に忠実なんですが、映画のイメージとは少し違っていて、終わり方も演劇ならではなんです。私が演じる小夏で言うと、艶っぽさのあるところは同じなんですが、戯曲のほうはおちゃめでガサツなところもあって、そこがかわいいんですよね。

 

──確かに原作の小夏は、映画版よりも強いイメージです。

 

日比 破天荒な銀ちゃんとやり合える小夏だからこそ生まれた物語なんだなと思いました。

 

──改めて小夏はどんなキャラクターだなと感じましたか。

 

日比 こぐれさんからお聞きしたんですが、つかさんは「小夏は天使なんだ」と仰っていたそうで。確かにキュートな部分もありつつ、全てを包み込むような母性も感じられる女性だなと感じました。

 

──小夏が惚れるスターの銀ちゃん。そんな銀ちゃんを慕い、銀ちゃんの子どもを身ごもった小夏を押し付けられる大部屋俳優のヤス。この二人には、どんな印象を持ちましたか。

 

日比 銀ちゃんは言葉遣いも荒いですし、言ってることもめちゃくちゃ。だけど、いつでも前向きでヒーローみたいな存在の銀ちゃんに惹かれる気持ちも分かります。それに対して、小夏に献身的に尽くしてくれるヤスも魅力的です。稽古で田谷野さんとけいさんのお芝居を間近で見ると、台本で読む以上に銀ちゃんとヤスの魅力をひしひしと感じましたし、子どもを身ごもって、精神的にも肉体的にも大変な状態の中で、銀ちゃんとヤスの間で揺らぐ小夏の気持ちも、より理解できました。

 

──これまで田谷野さん、小谷さんとの共演経験はあったのでしょうか。

 

日比 お二人とも初めましてでした。田谷野さんとは最初にオーディションでお会いしたんですが、キャストを選ぶ立場の方なので怖い印象でした(笑)。銀ちゃんという破天荒なキャラクターを演じられるから、私生活もギラギラと獣のような方なのかなと勝手に想像していたんですが、実際に話してみると、ものすごく優しくて。どうすれば、みんなが気持ち良く現場が回るのかを第一に考えている方です。

 

──小谷さんの印象はいかがですか。

 

日比 沖縄県出身ということもあってか、朗らかな方で。「やりづらいところはない?」「台本で分からないところはない?」と親身に聞いてくださいます。もちろん締めるとこは締めて、稽古中は真剣そのものなんですが、稽古が終わったら、親しくお話しさせていただいています。

 

──稽古が始まってからも、プレッシャーはありましたか?

 

日比 多少の不安はありましたけど、実際に稽古をしてみると、すごく楽しくて。演劇というジャンルから飛び出て、つかこうへいというジャンルを演じているんじゃないかという気持ちになりました。みなさんに甘えつつも、楽しめたもん勝ちなのかなと思っています。まだ全力で楽しめるまでは辿り着いていないかもしれませんが、稽古を重ねていって、本番でその域まで持っていきたいです。

 

銀ちゃんとヤスがかわいらしくて抱きしめたくなる

──稽古場の雰囲気はいかがですか。

 

日比 皆さん仕事が早いなというイメージです。早朝ではなく、ちょうど気持ち良い時間に起きて、ゆったりと稽古場に入って、びしっと稽古をして、早めに解散みたいな。詰めてやるというよりは効率的というか。でも決して怠けている訳ではなく、皆さんしっかりと台本を読み込んで現場にいらっしゃるからスムーズなんです。早く稽古が終わるので、みんなでご飯にいくこともあります。

 

──良い関係性を作られているんですね。

 

日比 皆さん明るくて優しいから、休憩中も一緒にお菓子を食べて過ごしています。舞台は役者同志の関係性が大きく影響するので、仲良くなることは大切だなと感じます。

 

──そういう輪に入るのは得意なほうですか?

 

日比 人見知りなので、前は苦手でした。でも、このままじゃ駄目だ、自分から心を開いていかないといけないと思って、人見知りを改善しようと意識するようになって。そしたら、ちょっとずつ自分の本音を話せるようになってきました。今回の舞台は年上の方が多くて、かわいがってもらえるので、心も開きやすいですね。

 

──どういうことを意識して役作りをしていますか。

 

日比 あまり意識していないかもしれません。セリフの量が膨大で、最初は話すだけで精いっぱいでした。でもセリフが頭に入ると、セリフを話しているだけで自然と気持ちも乗ってきます。まだまだ私は子どもで、母性からかけ離れている自覚があったので不安も大きかったんですが、今では銀ちゃんとヤスがかわいらしくて、抱きしめたくなります。初めて通しで稽古をしたとき、そういう気持ちが自然と出てきたのは自分の中でも発見でした。

 

──セリフ回しはいかがですか?

 

日比 モノローグもダイアローグも、ちょっとだけ今の言葉遣いとは違っていて、笑うときも「ふげ!」って笑ったりするんですよ(笑)。普段の自分の喋り方とは違うから、自然と慣れさせないといけないなと思って、お風呂場で湯船に浸かりながら、ひたすら喋っています。大きい声を出すシーンも多いので、のどのケアも気をつけています。

 

──シーンによってはギターの生演奏もあるそうですね。

 

日比 そうなんです。ギターが加わると、自然と涙を流していることもあります。譜面通りではなく、セリフの熱量や流れによってギターを弾いてくださるので、すごく話しやすいし、より抑揚が出るんですよね。

 

──過去に生演奏でお芝居をした経験はありますか?

 

日比 2019年に悪い芝居という劇団の『ミー・アット・ザ・ズー』という舞台が生演奏だったんですが、そのときはバンド編成で管楽器もありました。今回はアコースティックギター1本なので印象も全然違います。

 

──舞台の見どころをお聞かせください。

 

日比 みんなが笑って、みんなが泣ける楽しい舞台で、特にクライマックスのシーンは感動的です。もともと『蒲田行進曲』を知っている方はもちろん、知らない方もいろいろな発見があると思うので、たくさんの方に楽しんでいただけるように、もっともっと私も努力してブラッシュアップしていきたいです。

 

舞台ではDream5時代のダンス経験が活きている

──初めて舞台に出演したのはDream5時代ですか?

 

日比 そうです。初舞台は14、15歳ぐらい。『PIRATES OF THE DESERT』(2013年)という舞台でした。お芝居の経験もなかったので、とにかくセリフを間違えないようにと、すごく緊張したのを覚えています、

 

──Dream5でのダンス経験が、舞台に活きている面もありますか?

 

日比 体の使い方は活きているなと思います。例えばアクション的な要素が必要なシーンだと、これぐらい横を向けば叩かれているように見えるかなとか、こういうふうに倒れたら激しく見えるかなとか、どういう角度だと、どういうふうに見られるかが何となく分かります。

 

──これまで出演した舞台でターニングポイントになった作品を挙げるとすると何でしょうか。

 

日比 日々、自分の中で更新されているので常に最新作ということで、昨年出演した『点滅する女』(2013年)です。みなさん魅力的なキャラクターを演じられていたので毎日稽古も楽しかったですし、本番は冷蔵庫やキッチン、テーブルなどを実際に置いた状態でお芝居をしたので、演劇だけど映像を撮影しているような不思議な感覚もあって新鮮でした。積極的に役者の意見も取り入れてくださったので、みんなで作っているという感覚もありました。

 

──舞台ならではの醍醐味はどういうときに感じますか。

 

日比 映像はシーンごとに、バラバラに撮影することが多いので、完成した作品を観るまで、どういう仕上がりになるのか分かりません。それはそれで楽しみではあるんですが、舞台は最初から最後まで一連の流れがあって、本番が始まったら止めることができないという緊張感が醍醐味です。お客さんに全身を見られている感覚も、舞台ならではですね。

 

──初日と千穐楽では気持ちも変わるものですか。

 

日比 変わります。初日から自分ができる100%のところまで持っていくつもりで稽古を重ねていますが、客席にお客さんがいると全然違うんです。やっぱり演劇は生ものだなと思いますし、毎日、お客さんの反応で変わってくるものもあるし、そこも楽しいです。

 

──舞台は稽古期間も含めると、長く役に向き合いますが、終わった後も役は引きずるほうですか?

 

日比 稽古している間は、明るい役だと自分も明るく、控えめな役だと自分も控えめになるなど、役になり切るところはあるんですが、終わった後は役が抜けすぎるというか、抜け殻のようになります。そこの切り替えは、いまだに試行錯誤しながらという感じですね。

 

──稽古期間中、オフはどう過ごすことが多いですか。

 

日比 ひたすら体を休めながら、台本を読んだり、マンガを読んだり、ゆっくり過ごしています。先日は一人で岩盤浴に行きました。

 

思い出の詰まった3台のカメラ

──最後に日比さんの趣味はカメラということで、愛用しているカメラを持ってきていただきました。

 

日比 3台持ってきたんですが、一つはフィルムカメラでCONTAXの「Carl Zeiss Sonnar 2.8/38」。一つはデジタルカメラでNikonの「COOLPIX7600」。もう一つはチェキで「INSTAX SQUARE SQ1」です。

 

──それぞれ紹介をお願いします。まずは「Carl Zeiss Sonnar 2.8/38」から。

 

日比 いつもお世話になっている写真家・木下昂一さんのカメラなんですが、ずっとお借りした状態で3年経っています。高価なカメラなので、なかなか自分では手が出ないんですが。

 

──3年も経つと、もはや日比さんのものですよね(笑)。

 

日比 木下さんからも「あげるよ」と言われるんですが、「いえいえ。あくまで私の気持ちはお借りしているんです」と(笑)。

 

──それまでフィルムカメラを使ったことはあったんですか?

 

日比 一時期、「写ルンです」が若い子の間で流行ったじゃないですか。私も大好きで、よく使っていたんですが、それでフィルムの質感にハマって。ジャンク品に近いようなフィルムカメラは何度か自分で買って使っていたんですが、お値段のする、しっかりしたものを持ったのは初めてです。

 

──どういうときにフィルムカメラを使うのでしょうか。

 

日比 友達と会ったときとか、今回の舞台のように稽古中とか、人物を撮ることが多いです。

 

──今は現像するのも大変ですよね。

 

日比 フィルムによっては1週間以上かかるものもあるんですが、待つ時間も楽しいんですよね。

 

──その時々でフィルムを変えているんですね。

 

日比 そうですね。今はカメラの中にコダックの400が入っています。普段は100を使うんですが、ちょっと贅沢して800を使うこともあります。

 

──続いて「COOLPIX7600」について。

 

日比 私の祖父が使っていたカメラを受け継いだんですが、この入れ物も祖母がカメラ入れ用に編んだものです。だいぶ前のデジカメなので、画質は良くないですけど、それはそれで味がありますし、コンパクトで軽いので、いつも持ち歩いていて。お花や水溜りに反射した太陽、誰かとご飯に行ったときなどに、さっと出して撮ります。

 

──最後は「INSTAX SQUARE SQ1」。

 

日比 木下さんとは2021年に写真展をやったことがあって。そのときに撮影していただいたポラロイド写真も今日は持ってきたんですが、それとは別に、2023年に木下さんとスクエアチェキ展「往復写簡」を開催したんです。そのときに協力してくださった富士フィルムの方が、ふらっとご来展して、この「INSTAX SQUARE SQ1」をプレゼントしてくださいました。

 

──チェキはどういうときに撮影するんですか。

 

日比 物として残るので、形にして取っておきたいときです。ちょうど今やろうと思っているんですが、稽古場で一人ずつ撮らせていただいて、そのチェキにメッセージを書いて渡そうと思っています。SQUAREなので写真は真四角なんですが、画角が広めだから、どう撮るか考えるのも楽しいんです。

 

──写真を撮影する上でのこだわりはありますか。

 

日比 思い出を大事にしたいので、そのときの自分の気持ちを写したい気持ちが強いですね。

 

 

紀伊國屋ホール開場60周年記念公演
たやのりょう一座第13回公演『蒲田行進曲』

会場:紀伊國屋ホール
公演期間:2024年5月1日(水) ~5月4日(土)

価格:S 席 10,000 円 一般指定席 7,000 円
企画・制作:合同会社一座

(STAFF&CAST)
作:つかこうへい
演出:こぐれ修(劇団☆新感線)
出演:田谷野亮 日比美思 小谷けい ほか

公式サイト:https://www.tayanoryo1za.com/

 

撮影/友野雄 取材・文/猪口貴裕 メイク/江原理乃 スタイリスト/鬼束香奈子