毎年、春が近づき暖かくなってくると、つらいのが花粉の飛散が引き起こす症状。2023年は、花粉の飛散量が昨年の2.7倍、過去10年のなかで2番目となる大量の花粉が飛ぶと予想されており、すでに晴れた日や風の強い日には症状に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
マスクして薬も飲んでいるのにそれでもつらいなら、食べ物にも気をつかってみましょう。管理栄養士のひろのさおりさんに、花粉症の時期に積極的に摂取したい栄養とレシピを教えていただきました。
花粉症ならとっておくべき栄養素
花粉症は、いわば花粉のアレルギー。体内に入ったスギやヒノキなどの花粉が “異物” とみなされることで、目がかゆくなったり鼻水が出たりする症状のことをいいます。花粉症を緩和するといわれている食べ物はさまざまありますが、今回は栄養素に着目。花粉症の人が摂取するべき栄養素を4グループに分けて紹介します。
「花粉症だからといって、とくに食べてはいけないものはありません。逆に、下に挙げた栄養素も、ひとつのものばかり偏ってとりすぎてしまうと、また別の問題を引き起こすこともありますから、あくまでバランスの良い食事を心がけてください」(管理栄養士・ひろのさおりさん、以下同)
1.ビタミンD……サケ・たまご・干ししいたけ
ビタミンDは、免疫力向上に役立ち、体の機能を正常に戻す役割を果たしてくれます。
「花粉を吸い込んで体が反応を起こすのは、体が花粉を異物だと認識してしまっているから。ビタミンDには、免疫反応が適切な状態になるよう調節し、過剰反応を抑える働きがあります。きのこや魚、卵黄などがビタミンDを多く含んでいますが、日光に当たると体内で生成することもできる栄養素です。日焼け止めを塗りすぎないことや、日光に適量当たるなど、ビタミンDを増やす行動をしてみるのもよいでしょう」
2.ビタミンA……にんじん・春菊
ビタミンAは、粘膜のサポートに役立つ栄養素です。
「鼻水や目がかゆいなどのトラブルで、弱くなってしまった粘膜のバリア機能を回復させるサポートをしてくれます。皮膚や粘膜を健康になることで、花粉が入りにくい体を目指しましょう。緑黄色野菜にたくさん含まれています」
3.オレイン酸・オメガ3系脂肪酸……ナッツ類・オリーブオイル・サバ
アーモンドを代表とするナッツ類やオリーブオイルに含まれるオレイン酸や、くるみに代表されるナッツ類とサバ缶に含まれるオメガ3系脂肪酸には抗炎症作用があり、炎症やアレルギー反応を抑える物質を作ることができます。
「オレイン酸にもオメガ3系脂肪酸にも、炎症作用を緩和させる働きがあります。オメガ3系脂肪酸はくるみのほか、サバ、さんま、イワシなど青魚にたくさん含まれています。ちなみに、動物性の油に多く含まれるオメガ6系脂肪酸はアレルギー症状を起こしやすくするので、花粉症の時期はとくに注意が必要です」
4.乳酸菌・オリゴ糖……ヨーグルト・はちみつ
乳酸菌やオリゴ糖はおなかの調子を整え、腸の働きを活性化したり整えたりする役割を果たします。
「腸は最大の免疫器官であり、腸内環境を整えると、免疫力が上がるといわれています。また、腸内細菌の中には、消化管の粘膜免疫を高めるものもありますので、腸を健康にしておくと免疫機能が整い、アレルギー症状の緩和につながり花粉症対策にも役立ちます」
花粉症の人が摂取するべき栄養素を理解したところで、これらを多く含む食材を使ったレシピを3つ、教えていただきます。
ビタミンDたっぷり! 干ししいたけの出汁がおいしい「鮭と干し椎茸の和風オムライス」
干ししいたけとサケを炊き込んだ旨みいっぱいのごはんに、半熟オムレツをトッピング。ビタミンDを豊富に含む食材がたっぷりとれるだけでなく、枝豆やたまごも入って栄養バランス抜群のレシピです。
「ふわふわに焼いたたまごに、サケやしいたけの風味豊かなごはんが合います。炊飯器で炊き、たまごをのせるだけなので、簡単に作れますよ。彩りのよい枝豆は冷凍のものを使い、さらに手軽なレシピに仕上げました」
【材料(2人分)】
・米……1合
・生サケ……1切れ
・干ししいたけ……3枚
・枝豆(冷凍)……15さや
・しょうゆ……小さじ2
・酒……小さじ2
・砂糖……小さじ1/2
・和風顆粒だし……小さじ1/2
・たまご……3個
・塩、サラダ油、パセリ(みじん切り)……各適量
【作り方】
1.米はといで30分以上浸水させ、水気を切る。干ししいたけは水で1時間以上戻す。枝豆は解凍し、さやから出す。
「戻す時間やお米の浸水に時間がかかるので、早めに準備しておきましょう」
2.干ししいたけは5mm角に切り、戻し汁はとっておく。
「干ししいたけの軸は硬いので取ります。戻し汁には栄養と旨みがたっぷりなので、捨てないように注意」
3.炊飯器の内釜に米、しいたけの戻し汁、調味料を入れてかき混ぜる。1合の目盛りに足りなければ水を加え、サケとしいたけをのせて炊く。
「サケと干ししいたけはかき混ぜず、お米の上にのせて炊きます」
4.炊き上がったらサケを取り出し、皮と骨を取ってほぐして戻す。
「ここで骨や皮を丁寧に取っておきましょう」
5.枝豆を加え、全体をさっくり混ぜる。
「ごはんが潰れないよう、ふわっと軽く混ぜます」
6.ボウルにたまごを割り、塩を加えて混ぜる。フライパンでサラダ油を熱して溶きたまごを半量流し入れ、かき混ぜながら半熟たまごを作る。合計2個作る。
「火を通しすぎないよう、固まりはじめたら火を止め、余熱で固めていきます」
7.器にごはんを盛り、たまごをのせる。パセリを散らす。
「フライパンの上を滑らせて、たまごがひっくり返ってしまないよう、スライドさせてごはんの上にのせましょう」
シャキシャキ野菜とコクのあるサバが合う! 「サバ缶と春菊のサラダ」
まさに旬を迎えていて葉も柔らかな春菊を、サバ缶と合わせてサラダにしました。ドレッシングを使わず最低限の調味料だけでおいしいのは、サバの旨みのおかげ。
「オメガ3系脂肪酸をとるには青魚が効果的ですが、なかなか食べる機会がない方も多いと思います。サバ缶なら手軽にとれますし、こんなふうに野菜と取り合わせるとボリュームも出て、おいしく食べられますよ」
【材料(2人分)】
・サバの水煮缶……1缶
・春菊……100g
・にんじん……1/3本
・オリーブオイル……大さじ2
・しょうゆ……小さじ2
・塩、こしょう……適量
【作り方】
1.サバは骨を中心に半身ずつ切る。
「あまりぼろぼろになってしまうと、サバがフレークのようになってしまうので、そっと半分に切って形を残しておきます」
2.春菊はざく切りにし、にんじんは皮をむいて千切りにする。
「春菊の茎はそのままだと太くて食べづらいので、縦に細切りにしていきます」
3.ボウルに調味料を入れ、泡立て器でよく混ぜる。
「ここに野菜を入れていくので、少し大きめのボウルを準備しましょう」
4.野菜とサバを入れてよくあえる。
「春菊がしんなりしてきてしまうので、食べる直前にあえるのがおすすめです。サバにも調味料を軽くまぶしますが、壊れないようそっと大きく混ぜます」
腸内環境を整える! おやつや朝食に「ヨーグルトのカッサータ風ディップ」
オリゴ糖と乳酸菌たっぷりのディップは、ドライフルーツとはちみつの優しい甘さ。ナッツがぎっしり入っていてボリュームがあるので満足度が高く、小腹が空いたときやパンに塗るバターの代わりにもぴったりです。
「水切りヨーグルトを作るのに一晩かかりますが、しっかりと水切りしたヨーグルトはチーズのようで、濃厚な味わいです。朝食にしたいときは夜のうちに冷蔵庫の中で水切りしておくのもいいかもしれません」
【材料(2人分)】
・プレーンヨーグルト……200g
・ドライフルーツミックス……40g
・好みのナッツ(アーモンド、くるみ、カシューナッツなど)……20g
・はちみつ……大さじ1
・バゲットやクラッカー……適量
【作り方】
1.ヨーグルトを半日〜1日程度置いて水切りする。
「ボウルにザルをのせてキッチンペーパーを敷き、その上にヨーグルトを入れます。上から軽くラップをして冷蔵庫に入れておくと、水切りできますよ」
2.ナッツを粗めに刻む。
「ナッツはドライフルーツの大きさに合わせてカットすると、食感がいいですよ」
3.ボウルに水気を切ったヨーグルトとナッツ、ドライフルーツミックス、はちみつを入れて混ぜ合わせる。
「全体が混ざればできあがり。パンやクラッカーなどにのせていただきましょう」
花粉症シーズンはまだまだはじまったばかり。スギやヒノキは、関東では3月〜4月にかけてピークを迎えますが、イネ科の花粉が5月にピークとなり、種類や量がもっとも多くなるのは5月といわれています。体調を整えられるよう、バランスのよい食事を心がけたいですね。
プロフィール
管理栄養士・料理家 / ひろのさおり
株式会社セイボリー代表。お茶の水女子大学管理栄養士養成課程在学中に、企業でお弁当の商品開発やフードスタイリングを経験。卒業後は同大学大学院にて食品科学を専攻し、料理を科学的においしく作る方法や原理を研究した。大学院在学中にフリーランス管理栄養士として開業し、レシピ開発や執筆業、出張料理サービスなどに携わる。大学院修了後は、特定保健指導やセミナー・料理教室講師としても活動を広げ、2020年に株式会社セイボリーを設立。レシピ開発・料理撮影や、調理器具・食品関連のコンサルティングのほか、自身でディレクションを行いながら、現場での調理や写真撮影も担当している。
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『小鍋のレシピ 最新版』(辰巳出版)
鍋料理は調理が簡単でおすすめ。ひろのさん考案の栄養バランスのよいレシピがたくさん掲載されています。