大画面テレビにおける今年のトレンドはなんといってもRGB Mini LEDでしょう。赤・緑・青の各色が独立して光るMini LEDを採用することで、色再現性や輝度をこれまで以上に高める技術です。各メーカーからこのRGB Mini LED搭載テレビが登場しており、盛り上がりを見せています。
そんななかで、異彩を放つのがTCLです。バックライトをエリアごとに分割して高精度に制御するローカルディミング、量子ドットを進化させたスーパー量子ドット、広い色域を再現するカラーフィルターを組み合わせた「SQD-Mini LED」と称する高画質技術をフラッグシップモデルなどに搭載しています。
今回、TCLの中国本社や製造拠点を見学する機会をもらい、担当者にSQD-Mini LEDの特徴を説明してもらいました。その様子をレポートしていきます。

SQD-Mini LEDはRGB Mini LEDよりも色の再現力が高くて正確
まずは2つの画像を見てみましょう。なお、デジカメで撮影した画像を編集してはいませんが、テレビに表示された画像を正確に表現できているわけではありません。また、TCLが用意したデモ画像であることもご了承ください。
1枚目はTCLのフラッグシップモデル「X11Lシリーズ」に表示した画像で、2枚目はRGB Mini LED搭載テレビに表示した画像です。X11Lの方は赤と白がくっきりとわかれて表示されていますが、RGB Mini LED搭載テレビは白い十字に赤が若干にじんだように見えています。


別の画像を表示してみると、赤いプロペラ機に乗った動物の色が違うことがわかります。3枚目のX11Lは灰色の毛やくちばしの黄色が表現されているのに対して、4枚目のRGB Mini LED搭載テレビは動物全体に赤が移ったように表現されています。


これらは、色の再現力が高くて正確であるとするSQD-Mini LEDの特徴がよくわかるということで見せてもらったデモです。
X11Lは75V型だとバックライトを11,520のエリアに分割。98V型だと20,736のエリアに分割しており、緻密に光を制御できます。加えて色域が広く、色の純度も高いスーパー量子ドットでRGBの3色に変換。さらにカラーフィルターを通して画像として表現しています。これにより、デモでいえば赤とそれ以外の色がしっかりとわかれて、正確に再現できるというのです。
もちろん映像においてもSQD-Mini LEDの実力は遺憾なく発揮されます。たとえば青や黄色で明るく光るネオンはそれぞれの色がハッキリと出ている一方、建物内から見える日差しは周りの色に影響されることなく、白く再現されます。


緻密なローカルディミングを実現する独自のMini LED
製造拠点ではSQD-Mini LEDの技術を解説してもらう場も設けられました。
まず、TCLではテレビの画質を評価するうえで、「解像度」「輝度」「コントラスト」「色彩」「リフレッシュレート」の5つを指標にしています。このうち、解像度とリフレッシュレートは人間が知覚できないほど高いレベルに達しているため、画質で求めるべきなのは輝度、コントラスト、色彩だといいます。

輝度は自然界の光源下だと、多くの物体の表面輝度が5,000nits以上あるそうです。そのため高ければ高いほど、自然界のダイナミックレンジを再現しやすいのと同時に、画面の色彩表現もより鮮やかになります。コントラストは比率が高いほど、画像の立体感が強まり、ディテールがより鮮明に表示されるほか、奥行きもはっきりします。色彩はBT.2020のような色域規格で数値化でき、規格のカバー率が高いほど広色域といえます。
SQD-Mini LEDはこれらの求められる画質に対して、コントラストを高める高精度なローカルディミング、高いピーク輝度と優れた色彩表現をかなえるスーパー量子ドットと独自のカラーフィルターの、主に3つの技術で実現しているわけです。

そのローカルディミングひとつとっても、「単一ではなく総合的なテクノロジーの積み重ね」だと説明。なかでも注目してほしいのは、Mini LEDそのものだとしています。
発光チップは6個のダイをひとつのチップに集約することで、一般的なチップに比べて輝度とエネルギーの効率を高めています。チップの発光をナノレベルの薄膜「DBRナノ均一化フィルム」が反射させ、文字通り光を均一化。その光が拡散してしまわないよう、集光するレイヤーを通してシリコンマイクロレンズに光が届きます。

シリコンマイクロレンズはアーチブリッジを逆さにしたような構造を採用。隣り合うMini LEDの光源が干渉しないよう遮断し、自身の光源を収束させるためのデザインだそうで、外部の光を遮りつつ、発した光をまっすぐ届けることができるわけです。


こうした光学的な技術に、ソフトウェアも組み合わせています。明るい部分の光が暗い部分に漏れてしまうハロー現象を抑えるために、独自のアルゴリズムを開発。AIも活用し、RGBのカラーを再現する際に起こりがちな色にじみや色被りといった問題を軽減しているそうです。

従来の量子ドットを改良して色純度と色域を大幅に向上
量子ドットは単一の光をRGBの3色に変換する役割を担っています。そのため、量子ドットを改良することで、光源の段階でRGBの色純度を高めることができるとのこと。
実際、SQD-Mini LEDのスーパー量子ドットは従来の量子ドットに比べて色域のレンジが33%拡大し、色の純度は17%向上。ブルーライトカットの効果も45%増したといいます。

従来の量子ドットとの違いは内側の構造にあります。従来は発光の結晶体を保護層が包んだシンプルな構造。対してスーパー量子ドットは高効率な発光素材、高密度な保護層、水と酸素を保護する合金層、発光効率と耐久性の向上を図るパッシベーション層、高純度なスペクトル層と、複数の層が重なっています。


結果として、SQD-Mini LEDのテレビは従来のQD Mini LEDテレビよりも色域の面積が31.8%広がり、BT.2020の色域を100%カバーしたとのこと。
カラーフィルターは顔料から染料に変更。サイズも超小型化して発色を高めた
カラーフィルターも色の質を向上する役割を果たしますが、スーパー量子ドットとは異なる役割で、連携することによって高い色彩を実現しているそうです。不純な色を減らすことで、より正確な表現を可能にしているといいます。
これまでフィルターの素材は粒子サイズが60~70nmの顔料でしたが、新たに粒子サイズが5nm以下の染料を採用。この変更によって、より優れた発色を実現させています。

以上の解説はTCLの博士と呼ばれる開発者が複数名で担当し、それぞれの専門家が入れ替わり説明してくれました。解説でわかるのは、大きく分ければ3つの技術がSQD-Mini LEDの核心といえますが、ひとつひとつの技術は多くの細分化された技術に支えられているということでしょう。
今後もSQD-Mini LEDを打ち出す姿勢のTCL
ここまで専門的に解説できるということは、技術のほとんどを自社ないしはグループ企業で研究開発していることを意味しています。特にディスプレイの技術においては、パネル製造企業「TCL CSOT」が300億元を投資して開発を進めていると説明。この開発力と規模感は強力でしょう。
他メーカーに追随せず、あえて『RGB Mini LEDを推進しない』という選択肢を取ったのは、膨大な研究・開発コストをかけてSQD-Mini LEDを完成させた自信の裏返しともいえるでしょう。それでいてフラッグシップモデルにおいても、決してけた違いの高額というわけではありません。75V型のX11Lは実売で690,000円(税込)前後です。価格面でもユーザーは自社開発の恩恵を受けているといえるでしょう。
説明の終わりには「次回のフラッグシップモデルも期待してほしい」と自信をのぞかせていました。RGB Mini LEDが盛り上がるなか、今後もTCLはSQD-Mini LEDを打ち出していくようで、期待を持たせてもらえる見学となりました。