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2018/2/22 19:00

その「常識」、勘違いかも? カメラを買う前に知っておくべき15のこと

限られた予算内でできるだけ高性能なカメラやレンズが欲しい、と考えるのは誰もが同じです。しかし、高スペックな点ばかりをアピールするメーカーの宣伝文句を鵜呑みにするだけでは、自分に合ったカメラを選ぶことはできません。ここでは、一眼をまだ所有したことがない人や、エントリー一眼を所有して買い足していきたい人向けに、購入時に気をつけたい、カメラ選びにおける15の誤解を挙げてみました。

 

(1)画素数が多ければ画質がいい

(2)センサーサイズは大きいほうがいい

(3)最高感度は高ければ高いほうがいい

(4)スポーツを撮るなら連写が速ければいい

(5)ミラーレスカメラよりも一眼レフカメラのほうが動体撮影に有利

(6)一眼レフカメラよりもミラーレスカメラのほうが携帯性に優れる

(7)最新モデルのほうが性能がいい

(8)高感度性能が高いカメラがあればストロボは必要ない

(9)手ブレ補正機能搭載のカメラがあれば三脚は必要ない

(10)ズーム倍率は高いほどいい

(11)レンズの開放F値は明るいほどいい

(12)レンズの最短撮影距離は短いほうが接写に強い

(13)サードパーティ製のレンズは純正レンズよりも性能が低い

(14)最初はとりあえずレンズキットを買えばいい

(15)カメラは古くなるが、レンズは一生使える

 

それでは、ここからは1つ1つ解説していきましょう。

 

【カメラ編】

1●画素数が多ければ画質がいい(……とは限らない!)

画素数はデジカメの性能を決める重要なポイントの1つ。画素数が増えるほど被写体の細部までを正確に再現しやすくなります。ただし画質には、画素数だけでなくセンサーサイズやレンズ性能なども関わってきます。ゆえに、必ずしも多画素=高画質とはいえません。例えば1.0型2010万画素センサー機よりも、APS-Cサイズ1620万画素センサー機のほうが高画質というケースもあります。

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↑デジカメの画質は、画素数だけなく、センサーサイズやレンズ性能などによっても差が生じます

 

2●センサーサイズは大きいほうがいい(……とは限らない!)

デジカメに使われる主なイメージセンサーをサイズの小さい順に並べると、1/2.3型、1.0型、4/3型、APS-Cサイズ、35mmフルサイズとなります。画素数が同じである場合、基本的にはセンサーサイズが大きいほど高画質になります。ただし、センサーサイズに比例してボディとレンズは大きく、重くなる傾向があります。いくら高画質でも、持ち歩いて使わなければ宝の持ち腐れでしょう。

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↑左は35mmフルサイズセンサー、右はAPS-Cサイズセンサー。センサーサイズが大きいほど高画質ですが、そのぶんボディやレンズも大きくなります

 

3●最高感度は高ければ高いほうがいい(……とは限らない!)

最近のデジカメは高感度化が進み、最高感度ISO12800やISO25600は珍しくなく、なかにはISO102400以上に対応したフルサイズ一眼もあります。こうした超高感度は、屋内スポーツなど薄暗い場所で被写体ブレを防ぎたいときなどに役立ちます。ただし一般的な用途で、これほどの高感度が必要になるケースはあまりないともいえます。私自身はISO12800以上はめったに使いません。スペックの数値に惑わされず、自分の用途に合った機種選びを心がけましょう。

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↑薄暗い水槽内を泳ぎ回る魚でも、ISO12800程度の高感度があれば、その動きを写し止めることが可能です

 

4●スポーツを撮るなら連写が速ければいい(……とは限らない!)

スポーツシーンなど動きの速い被写体を撮る際は、高速連写に対応したデジカメが有利です。ただし「最高10コマ/秒」といった連写速度の数値だけでなく、連続して何コマまで撮影できるか、つまり「連続撮影可能コマ数」も重要です。これが少ないカメラでは、連写したあとに待ち時間が生じ、シャッターチャンスを逃してしまう場合があります。

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↑こうした動体を快適に撮影するには、連写のスピードに加えて「連続撮影可能コマ数」も要チェックです

 

5●ミラーレスカメラよりも一眼レフカメラのほうが動体撮影に有利(……とは限らない!)

以前は、動きのある被写体を撮るには、ミラーレスカメラよりも一眼レフカメラが有利といわれていました。その理由は、ミラーレスカメラが採用している電子ビューファインダー(EVF)やAFの性能が、一眼レフカメラに見劣りしていたからです。しかし最近では、光学ファインダーに遜色のない見え方をするEVFを搭載したミラーレスカメラや、動体に対しても快適に合焦・追従できるAF性能を備えたミラーレスカメラが登場。もはや必ずしもミラーレスカメラが動体撮影に不向きとはいえません。

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↑動体の撮影ではAFや連写性能のほか、ファインダーの見やすさが重要なポイントになります

 

6●一眼レフカメラよりもミラーレスカメラのほうが携帯性に優れる(……とは限らない!)

ミラーレスカメラは一眼レフカメラとは異なり、ミラーボックスや光学ファインダーを搭載していないため、ボディを小型軽量に設計できることが大きな利点です。携帯性重視なら、一眼レフカメラよりもミラーレスカメラのほうが有利なことは間違いありません。ただし、開放値の明るい大口径ズームといった高価なレンズは、ミラーレス用でもそれなりに大きく重くなります。レンズも含めたサイズと重量では一眼レフと大差ない、といったケースもあります。

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↑ミラーレス用のソニー「FE 24-70mm F2.8 GM」は886gという重量級の標準ズーム。同スペックの一眼レフ用標準ズームに比べて特に小型軽量とはいえません

 

7●最新モデルのほうが性能がいい(……とは限らない!)

デジカメの各種技術は日々進化しており、基本的には旧機種よりも新機種のほうが高性能になります。ただし、その進化のスピードが落ち着いてきているのも事実。数年前に発売された型落ちのモデルでも、最新モデルに比べて画質やスピードはほとんど変わらず、いくつかの機能を追加しただけ、というケースも見られます。新機能にこだわりがなければ、お買い得な旧製品を狙ってみるのもいいでしょう。

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↑2015年発売のオリンパス「E-M10 Mark II」は、すでに後継機「E-M10 Mark III」が登場したため旧機種となりましたが、画質や性能が大きく劣るわけではありません

 

8●高感度性能が高いカメラがあればストロボは必要ない(……とは限らない!)

最近のデジカメは高感度性能に優れています。感度を高く設定すれば、薄暗いシーンでもストロボを使わずに撮ることが可能。ただ、だからといってストロボが不要とはいえません。ストロボには、被写体を明るく照らすだけでなく、被写体本来の美しい色合いを引き出す働きや、瞬間光によって動きを写し止めるといった効果もあります。

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↑こうした逆光のシーンでは、ストロボを強制発光させることで影になった部分を明るく再現し、被写体本来の鮮やかな色彩を引き出せます

 

9●手ブレ補正機能搭載のカメラがあれば三脚は必要ない(……とは限らない!)

最近の多くのデジカメは手ブレ補正機能を備えています。手ブレ補正を利用すれば、三脚を使わず、夕景や夜景を手持ちで撮ることも可能で、その点をセールスポイントに挙げるカメラも少なくありません。しかし、すべての撮影で三脚が不要になるかというと、そうではありません。三脚にはブレ防止だけでなく、画面を安定させ、狙いどおりの構図で撮るという働きがあります。また、10秒を超えるような長時間露光でも必須です。

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↑星空などの長時間露光や比較明合成、タイムラプス撮影などでは三脚が欠かせません

 

【レンズ編】

10●ズーム倍率は高いほどいい(……とは限らない!)

ズーム倍率の高いレンズは、レンズ交換の手間を省けるという大きなメリットがあります。ただし、ズーム倍率が高いほどレンズの開放F値は暗くなる傾向があり、手ブレや被写体ブレには要注意です。加えて、高倍率になるほどシャープネスや周辺画質が低下する傾向もあります。

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↑広角から望遠までを1本に集約した高倍率ズームは、抜群の利便性を誇りますが、その代わり、画質や開放値に物足りなさを感じる場合もあります

 

11●レンズの開放F値は明るいほどいい(……とは限らない!)

レンズの開放F値は明るい(数値が小さい)ほど、より速いシャッター速度が使えたり、より大きなボケを表現できたりするメリットがあります。ただし、明るいほどレンズのサイズは大きくなり、重量は重くなりがちです。

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↑開放値の明るいレンズでは、こうしたボケの表現が楽します。その代わり、レンズのサイズや重量はアップします

 

12●レンズの最短撮影距離は短いほうが接写に強い(……とは限らない!)

交換レンズのスペックに「最短撮影距離」というものがあります。これはセンサー面から、ピントが合う被写体までの最も短い距離のこと。数値が小さいほど接写に有利です。ただし、接写の強さは、最短撮影距離だけでは決まりません。例えば、最短撮影距離が20cmの広角レンズよりも、最短撮影距離が35cmの標準レンズのほうが被写体を大きく写せます。レンズの接写性能を知るには、どれくらい大きく写せるかの倍率を示す「最大撮影倍率」をチェックすべきです。

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↑こうした近接を楽しみたい場合は、「最大撮影倍率」の大きなレンズを選択しましょう

 

13●サードパーティ製のレンズは純正レンズよりも性能が低い(……とは限らない!)

サードパーティ製のレンズといえば比較的求めやすい価格が魅力ですが、性能面は純正レンズに見劣りする、と考えている人がいるかもしれません。しかし近年は、純正レンズと遜色ない高性能なサードパーティ製レンズも増えています。安かろう悪かろうは昔の話。純正か非純正かにこだわらず、自分の撮影スタイルに適したレンズを選ぶといいでしょう。

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↑サードパーティ製レンズは、純正レンズにはない焦点距離と開放値を備えていることも大きな魅力です

 

14●最初はとりあえずレンズキットを買えばいい(……とは限らない!)

初めて一眼レフやミラーレスを購入する際は、標準ズームなどが付属するレンズキットを選ぶのが無難です。キット付属の標準ズームは、幅広い用途に使いやすい焦点距離をカバーしたうえで、小さくて軽く、画質的にも十分なレベル。コストパフォーマンスは非常に高いといえます。ただし安価かつ便利な反面、写真が平凡になりやすいという弱点もあります。実用性の追求ではなく趣味として写真撮影を楽しみたいのであれば、キットレンズではなく、広角または標準の単焦点レンズから入門するのもおすすめです。

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↑開放値F1.4の50mm単焦点レンズで撮影。こうした奥行きのあるボケ表現は、キットレンズではなかなか味わえません

 

15●カメラは古くなるが、レンズは一生使える(……とは限らない!)

カメラのボディに比べると交換レンズは製品寿命が長く、「レンズは一生もの」といわれることがあります。確かに、しっかりとした作りの高級レンズは、長く使い続けることができます。ただ一方で、最近のレンズはAFや手ブレ補正用のモーターや電子回路などが凝縮されたデジタル機器です。シンプルな構造を持つフィルム時代のMFレンズに比べると耐用年数(法定上の意味ではない実質的な年数)は短く、さすがに一生使い続けるのは困難でしょう。

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↑フィルム時代のMFレンズは、構造が比較的シンプルな光学製品です。AFや手ブレ補正といった機能はありませんが、たとえボディを買い替えても長く使い続けることができます

 

以上が、カメラ初心者が購入時に気をつけたい誤解です。カメラ選びに、絶対にこうしなければならないというルールはありません。固定観念にとらわれず、自分に合ったカメラとレンズを見つけてください。