外食業界における最新トレンドのひとつが、韓国酒場。雑誌『GetNavi』の2022年12月号(10月24日発売)では注目の3店を取材し詳報しましたが、そこで紹介しきれなかった、とっておきの一軒があります。その店とは「韓国酒場コッキオ グランスタ八重北店」。韓国酒場のトレンドを解説しつつ、同店をレポートします。
韓国酒場トレンドの背景は、第4次韓流ブームとコロナ禍
韓国酒場が人気な理由は2点。ひとつは、Z世代を中心に第4次ともいわれる韓流ブームが到来しているから。
それぞれの代表的アイコンは、第1次が日韓ワールドカップやドラマ『冬のソナタ』、第2次はチャン・グンソクやカンナムスタイル、少女時代やKARAに代表される韓国アイドル、第3次はBTSやTWICEなどのグローバルK-POP。そして現在の第4次では、第3次からの流れに加え『愛の不時着』『梨泰院クラス』といったドラマがより存在感を強めています。
韓国料理の存在感も年々増していて、第1次はキムチ鍋やスンドゥブなどピリ辛系が中心でしたが、第2次はサムギョプサルやホットクにマッコリ、第3次はチーズタッカルビやチーズハットグなど。これらを引き継ぎつつ、第4次はUFOチキン、チュクミ、マヌルパン、トゥンカロン、タルゴナコーヒーなど多様化、先鋭化、オシャレ化が進んでいるのです。
そして、韓国酒場が人気を集めるもうひとつの理由が、渡航しづらい(徐々に緩和されつつあるが)ことでしょう。コロナ禍により、外食業界では現地の雰囲気を再現したアジアン大衆酒場が増えていて、台湾酒場や香港酒場も活況に。
ポイントは、その多くが日本人経営者による大衆酒場風の業態であること。そのため現地出身者による“ガチ中華”ブームは、アジアン大衆酒場トレンドの文脈とは異なります。
何はともあれ、渡航がしづらいためアジアン大衆酒場が人気で、なかでも韓国業態は第4次ブームの影響もあって盛況というわけなのです。
チェーンだが家庭的な本格味。特に鶏の鍋は必食!
雑誌『GetNavi』では、「串カツ田中」グループの新業態「焼肉くるとん 代官山店」など新興ブランドを紹介しました。「韓国酒場コッキオ」を取り上げなかった理由は、運営企業が韓国食品卸の老舗であり、「コッキオ」ブランド自体は2015年より存在しているからです。
また、「コッキオ」が関西屈指のコリアンタウン・鶴橋に1号店をオープンしたことも、関東発祥の最新トレンドでくくるのとは違うといえるでしょう。ただ、「コッキオ」は姉妹ブランド「ビビム」とともに勢力を伸ばし、ここ数年で首都圏でも拡大中。そんな隆盛のなか、満を持して開業したのが「韓国酒場コッキオ グランスタ八重北店」なのです。
韓国食品に長年携わっていることもあり、料理の味は折り紙付き。名物はタッカンマリ(韓国風水炊き)とタットリタン(鶏×じゃがいものピリ辛鍋)で、“映え”要素よりもシンプルに味のおいしさを追求している点も特徴です。
そのクオリティは食べれば納得。兵庫の「但馬どり」を使い、セントラルキッチンではなく店内で炊いたスープは滋味深くまろやか。ゴロッと大きな鶏肉は柔らかくジューシーで、満足度も抜群です。
タットリタンも、ベースのスープが絶品なので圧倒的なおいしさ。どちらの鍋も、個人店でオモニ(お母さん)が丹精込めて作ったような、本格的で説得力のある味わいを感じます。