デジタル
2020/1/14 7:00

【西田宗千佳連載】タブレット市場、2020年のカギは「5G」か

Vol.86-4

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「タブレット市場」。iPadのニューモデル投入で、その優勢は決定的に。今後、各陣営はどう動くのか?

 

2019年のタブレット市場は、全体としては低調で減少傾向にあるものの、iPadがコストパフォーマンス向上とアプリの増加に伴い、人気を回復。さらに「タブレット市場におけるiPad比率」を高める結果になった。

 

では、2020年、タブレットになにが起きるのか?

 

ディスプレイやプロセッサーの面では、大きな変化はないだろう。超ハイエンド向けに有機ELやその先にあるマイクロLEDなど、新ディスプレイ採用の動きが見えるものの、それらは非常に高く、特別な存在に留まるため、数量が増えるとは考えづらい。メインは数万円までの機種で、Androidは低価格なビューアー的製品、iPadはある程度クリエイティブ用途を考えたもの、という住み分けになりそうだ。

 

ただ、出荷台数、特に日本だけの話をするのであれば、2020年以降は増加する可能性が高い。小学校・中学校でのタブレット導入が本格的に始まるからだ。一般的な、クラムシェル型の低価格PCを導入するところもありそうだが、「カメラを内蔵していることが望ましい」との見解もあり、iPad+キーボード、もしくはWindowsタブレット+キーボード、という組み合わせでの導入が増えるとみられる。ただし、それはあくまで市場的な話で、本誌読者には直接関係ない。

 

本誌読者にとって特に気になる動きとしては、「5G搭載タブレットが増える」可能性が高い、というところだろうか。5Gといえばスマホ、というイメージもあるだろうが、省電力やサイズに余裕があるタブレットは、より5Gを導入しやすい。もちろん、当面ハイエンド製品に限られるだろうが、5G搭載のタブレットが、スマホと同じように出てくる可能性は高い。5G搭載タブレットをモバイルWi-Fiルーターのように使い、PCやスマホとともに使うと便利そうだ。5Gでは動画視聴がより身近になるが、画面の大きなタブレットは動画にも向いている。

 

ただ、そうした「5Gタブレット」は、5Gがスタートする2020年春にすぐ出てくる、とは考えづらい。登場は、2020年も後半になり、5Gスマホのラインナップが増えるころになるのではないか、と予想できる。実はこのころ、同時にPCについても5G搭載モデルの登場が予想される。こちらは、x86系CPUを採用したものというよりも、QualcommのSnapdragon系プロセッサーを採用したもので、5G/LTEモデムがセットになって搭載されているデバイス、ということになるのではないだろうか。もちろん、「5G搭載iPad」の噂もある。

 

どちらにしろ、低価格製品には大きな変化はないし、2019年の製品と2020年の製品が劇的に違う、ということもないだろう。

 

だがハイエンド、特に通信機能の搭載された製品については、「4Gまでの対応なのか5G対応なのか」という差が生まれる。生活圏内が5Gエリアになるかどうか、という問題はあるものの、ハイエンドタブレットを選ぶなら「5G搭載モデルが出る可能性がある」ことをちょっと考えておいて欲しい。そうすると、2020年にそういう製品が出揃えばいいが、自分の好みのタブレットに5Gモデルが用意されない場合、2021年を見据えるべき……ということにもなるだろう。

 

 

 

Apple iPad
ディスプレイが10.2型に大型化し、Smart Keyboard にも新対応した第7世代。よりPC的な作業が可能に なったiPadOSを搭載しており、精密なペン入力が可 能なApple Pencilもサポート。ストレージ容量別に、 32GBモデルと128GBがラインナップされている。

 

低価格な製品を作るということは、差別化が難しくなるということである。例え、「タブレットはコンテンツを見るものだから、性能は高くなくていいし長く使いたい」と思われていたとしても、アップルとしては、ただでさえ買い換えサイクルが長くなっているタブレットを安売りの道具にして利益率を落とす事態を忌避した。なにより、単なる安さだけならiPadはAndroidタブレットにかなわないし、アップルのブランドを維持する目的からも、単純に価格を下げるわけにはいかない。

 

数年前までは、そのことがタブレット市場全体のブレーキを踏む原因となってしまっていた。だが、アップルは持続的にそうしたやり方を貫いたため、結果的に「PCに近い道具として使うタブレットの市場」は、iPadに席巻されることになった。市場の多様化という意味ではプラスとは言い難いのだが、タブレット市場が落ち込むなかで一社だけ地道に取り組んだことが、現在のシェアを形成している。

 

しかも大きかったのは、iOS(現在、iPad向けのものはiPadOSに名称変更しているが)向け有料アプリの市場が、Androidよりも健全に成長したことだ。どのデベロッパーに聞いても、「有料の、しかもゲームでないアプリについては、AndroidとiOSでは売れ行きに明確な差がある」というコメントが聞かれる。アドビもPhotoshopなどのiPad対応を進めた理由について「そこに市場があるから」とコメントしている。さらに、Androidを軸にした他のプラットフォーム向けの市場も存在するが、「数量を考えても優先度はiPad」としている。アプリ市場の構築も含め、アップルがブラインド維持のために数年間やってきたことが、結果的にいまになってプラスに働いている、といっても過言ではない。

 

では今後、この状況はどうなるのか? そこは次回のウェブ版にて解説する。

 

 

 

 

 

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