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2021/11/3 11:30

Negicco・Megu、アナログレコードの魅力を熱弁!「デジタルにない“ひと手間”に触れてほしい」

音楽を聴くメディアがCDからサブスクへと移行する流れと逆行するようにして、アナログレコードの魅力が全世界的に再認識されるようになっている。所属グループ・Negiccoがアナログ盤をリリースしたことをきっかけに沼にハマったというMeguさんも、試行錯誤しながら新たな音楽生活を満喫中。サウンド面の違い、ジャケ買いの魅力、機器購入の悩み……深淵なる世界へとご案内!

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:小野田衛)

Megu(めぐ)◎6月3日、新潟県生まれ。2003年に結成された新潟発のアイドルユニット・Negiccoのメンバーとしてデビュー。グループとして活動する傍ら、DJ Megu名義でクラブイベントに出演することも。カレー好きとして知られ、CURRY RICE RECORDSという架空のレーベルを冠したブランドと、Life to meet you!という2つのブランドを運営している。11月9日にはソロシングル『So good』をリリース。lyrical schoolのプロデューサーであるキムヤスヒロがプロデュースを担当し、Meguが本格的にラップに挑戦した。CDには36ページの豪華フォトブックが付属。TwitterInstagram

 

レコードは新鮮な感覚

──50代以上の人だと「懐かしい」という気持ちも強いレコードですが、Meguさん世代にとってはどういう存在なんですか?

 

Megu  物心がついた頃から音楽を聴くのはCDやMDが多かったので、懐かしいというよりは新鮮な感覚がありますね。私が自分の意思で最初に買ったCDって『だんご3兄弟』なんですよ。たぶんそれが小学校3年生くらいだったと思うんですけど、シングルが短冊の形をしていたことを覚えています。

 

──『だんご3兄弟』以前にも音楽を聴く習慣はありました?

 

Megu  もちろん。うちは車の中ではカセットテープだったし、CDが登場する前はレコードを聴いていたと思うんです。このへんはだいぶ記憶が曖昧なんですけど(笑)。それでもよくよく思い出してみると、父親はマドンナさんをよく聴いていた気がしますね。特にベスト盤を。あとは沢田知可子さんの『会いたい』という曲を車の中で繰り返し流していたことも印象に残っています。

 

──Meguさん自身の音楽遍歴は?

 

Megu  私が小学校のころってアイドルがすごく流行っていたんですよ。モーニング娘。さん、SPEEDさん、w-inds.さん……このあたりは私も夢中になってCDを買っていましたから。特にハロー!プロジェクトさんは自分の中でも特別な存在でした。それがちょうど小学校の高学年くらいだったんですけど、時代的にはCDシングルが短冊形から正方形に移りつつあったんですね。ところが、どういうわけかCDを買うという習慣が自分の中からなくなった時期が訪れるんですよ。

 

──音楽に対する興味を失ったとか?

 

Megu  いや、そういうわけでは決してないんです。モーニング娘。さんの『Mr.Moonlight ~愛のビッグバンド~』(2001年10月リリース)。あそこまでは確実に自分でCDを買っていたんですよね。じゃあ聴きたい音楽はどうしたかというと、ラジオを利用するようになっていったんです。新潟のFM局で放送されていたヒットチャートを紹介するタイプの番組を聴いていて、「これだ!」と思った曲だけ慌ててラジカセで録音するんです。だからCDから若干アナログに戻った感じかもしれません(笑)。

 

──そのころにはもう芸能活動もスタートさせていたんでしょうか?

 

Megu   Negiccoが結成されたのは2003年なんですけど、私はそれ以前にも地元のタレント養成スクールに通っていたんです。当時はSMAPさんやビートルズさんが課題曲になっていて、それを覚えて披露していました。それでNegiccoとしてデビューしてからは自分がCDを出す立場になったんですけど、2013年にリリースした『圧倒的なスタイル/ガッター!ガッター!ガッター!』というシングルでCDと同時にアナログ盤も同時に出そうという話になりまして。これが自分にとっては大きな転機でした。

 

──レコードも出すとスタッフから聞いたときの率直な感想は?

 

Megu  「アナログ? なんで?」って(笑)。こっちは馴染みがないものだから、意味がわからなかったんですよ。ところがNegiccoのファンというのは、いわゆる音楽通みたいな方も多いものですから、「これを待ってた!」みたいに喜ぶ反応がすごく目立ったんですよね。そこで「そうか。どうやらアナログにはアナログの魅力があるみたいだな」って私も関心を持ち始めるんですけど。

 

CDとは明確に違うレコードの魅力

──まずはどこからレコード生活をスタートさせました?

 

Megu   最初はプレーヤーも持っていなかったんですよ。だけど、DMR渋谷店さんでのイベントに出演させていただいたとき、プレーヤーをプレゼントしていただきまして。それはポータブルタイプの可愛い一台で、ものすごく感激しましたね。とはいっても針の落とし方もわからなかったし、埃の「ジジジ……」という音で「えっ、壊れた!?」ってオロオロうろたえたりしていました(笑)。「33」とか「45」とか書かれている数字も意味がわからなかったですし。

 

──何も知らない状態だと、そうなるかもしれませんね(笑)。

 

Megu   でも、アナログの魅力には一発でハマりました。面白いな、新鮮だなと感動しましたし。最初に聴いたのは自分たちの『圧倒的なスタイル』だったんですけど、音がCDとは明確に違う感じがしたんですよ。なんて言えばいいのかな……。これはあくまでも私の感想なんですけど、歌声がいつもより前に出てきているような気がしたんですよね。ボーカルがCDのときよりも温かいし、はっきり聴きとれるなって思いました。私はオーディオマニアとかでは全然ないものの、サウンド的にはカセットテープに近いなという印象も受けました。

 

──素晴らしい! そこからMeguさんなりにアナログ盤の魅力を探求していったわけですね。

 

Megu  でも、最初はレコードを見つけること自体が難しかったです。自分が好きなアイドルさんとかアーティストさんのレコードを探そうと思っても、なかなか売っていないんですよ。今でこそレコード専門店もだいぶ増えてきましたけど、2013年の時点では本当に一部の音楽好きの方しかアナログに興味を持っていなかったですし。いざレコード屋さんに入っても、みんな険しい目をしながら凄まじいスピードでジャケットを上下させているから、「私、この中に入っていけるかな……」って圧倒されちゃって(笑)。

 

──みなさん、殺気立ちながらディグっていますからね。

 

Megu  そんな中、最初に自分で買ったアナログ盤が松任谷由実さんの『SURF&SNOW』。これは内容ももちろん大好きなんですけど、Negiccoのアルバム『Rice&Snow』ともタイトルが若干似ているところがありまして……。

 

──似ているというか、オマージュを捧げているわけですよね(笑)。

 

Megu   そうです、オマージュです! 決してパクリじゃなくて(笑)。でもアナログで聴く『SURF&SNOW』は、なんだか時代の空気までパッケージされているような感じがしました。私はバブルの時代をリアルタイムで知らないし、『SURF&SNOW』が出た80年代初頭に対してはキラキラした印象を持っているんですね。その時代特有の雰囲気が、アナログだとよりダイレクトに伝わってくる気がするんです。松田聖子さんも、アナログで聴くことによって『ザ・ベストテン』(TBS系)出演時とかの雰囲気まで一緒に味わえる気がしますしね。音のクリアさなどの面でいえばCDのほうが優れているのかもしれないけど、逆にノイズが入ることがアナログの味になっている部分はあると思うんです。

 

「ひと手間」の大切さ

──人間が音楽を聴く環境はどんどん便利になっていますけど、逆にそこで失われたものもあるのかもしれません。

 

Megu  本当にそうかも。レコードやカセットからCDやMDになって、今はスマホのサブスク(サブスクリプション)で聴く時代になっているじゃないですか。手元の画面を操作すれば、すべて事足りてしまいますし。それに比べると針をわざわざ落としたりB面に裏返したりするアナログは「余計なひと手間」がかかるんだけど、その点が見直されているところでもあると思うんです。今、レトロブームが来ていると言われていますよね。私はかろうじてレコードの存在を知っている世代だけど、私よりも年齢が下の子たちは針を落とす作業なんて驚きの連続だと思いますよ。音楽を聴くという行為に対しても、「ひと手間」のおかげでより真剣に向き合えますしね。サブスクの時代だからこそ、CDを手に取った喜びは大きいなって感じますし。

 

──「普通の人はCDなんてもう買わなくなった」(『アイドルばかり聴かないで』)と歌っているNegiccoさんに言われると説得力が違います。

 

Megu   それは言わないでください(笑)。今の若い子たちはK-POPのBTSさんとかTWICEさんがリリースしているアナログ盤に触れて、「なんだかレコードってカッコいいね」って新鮮な感動を受けていると思うんですよ。その影響はかなり大きいんじゃないかな。ちょっと話はズレるんですけど、「ひと手間の魅力」という意味ではフィルム式のカメラが若い人の間でブームになっているのも似たようなものを感じます。

 

──どういうことでしょうか?

 

Megu  今の時代、スマホのボタンひとつで誰でもどこでも写真が撮れるじゃないですか。しかも性能は年々上がっているから、素人だって綺麗に撮ることができますし。そういう中でわざわざ現像までしなくちゃいけないフィルムのカメラって、アナログ的な魅力に溢れているようにZ世代の目からは映るんですよ。音楽もそれと同じで、わざわざお店まで出かけてお目当ての一枚を手に取ったり、わざわざターンテーブルに乗せて針を落としたり、その作業がおそらく楽しいんじゃないですかね。私は別にZ世代というわけじゃないですけど、たまたま自分のグループがアナログ盤を出す機会があったものですから、少し早いタイミングで「ひと手間」の魅力にハマったというわけで。

 

──鋭い分析、ありがとうございます。実際、アメリカではアナログレコードのほうがCDの売上を上回っているみたいですしね。

 

Megu  「いい音楽を聴きたい」という気持ちは、いつの時代も変わらないと思うんです。だけどアナログが見直されることによって、たとえばジャケットの重要性はサブスク一辺倒のときよりも確実に増しますよね。だからアーティスト側も今後は再びジャケットのインパクトを大事にするようになるかもしれませんし。

 

ジャケットはアーティストにとって重要

──たしかにアナログ盤はジャケットも大きな魅力だと思うのですが、Meguさん自身もジャケ買いをすることはありますか?

 

Megu  ありますね。おしゃれなジャケットは部屋に飾りたくなるんですよ。山下達郎さん、竹内まりやさん、Especiaさん……アーバンな雰囲気のジャケットってカフェみたいな感じで映えますからね。ある意味、今のシティ・ポップを先取りしていたのかもしれない(笑)。

ジャケ買いのいいところは、自分が接してこなかったような音楽と出会えることだと思うんです。自分の中で当たりだと感じたジャケ買いは、ザ・ナンバーワン・バンドさんの『もも』というアルバム。「なんだかダークな感じで気になるな」と購入しました。裏ジャケには「このアルバムは、いずれかの『もも』をじ~っと見ながら、お聞きください」という謎めいたメッセージも書かれていて、それも決め手になりました。実際に聴いてみたら全然ダークな印象はなくて予想外だったけど、ラップやディスコっぽい曲もあって自分の趣味からは外れていませんでしたね。小林克也さんがボーカルを務めるバンドということも知らなかったくらいなのに、うれしい誤算でした。

 

↑Meguがジャケのデザインだけで選んだという大江千里『WAKU WAKU』(左)とザ・ナンバーワン・バンド『もも』

 

↑『もも』は裏ジャケのミステリアスな注意書きにも目を奪われたという

 

──サブスクで音楽に接していると、クレジットや訳詞も気にしなくなるんですよね。

 

Megu  それは大きいです。大江千里さんのデビュー盤『WAKU WAKU』もジャケ買いした一枚なんですけど、これは山下達郎さんのバックでドラムを演奏していた青山 純さんがクレジットに書かれていたので選んだ記憶があります。今でもずっと愛聴していますし、改めてジャケットってアーティストにとってすごく重要だなと思います。

 

──撮影のときに気づいたのですが、イラストのジャケットが好みなんですか?

 

Megu  否定できない(笑)。可愛くてポップなものにどうしても惹かれてしまう性分なもので……。イラストのジャケットで最高だなと思ったのは、Negiccoとコラボさせてもらったこともあるlyrical schoolさんですよね。描いているのは、あの江口寿史さん。実を言うと私たちもかなり昔の段階から「いつか江口さんに描いてほしいね」って話はしていたんですよ。だからlyrical schoolさんのジャケットを見たときは「早っ! うらやましい!」と思ったし、同時に「いつかNegiccoも……」という気持ちがますます強くなりました。のちに江口さんにNegiccoのイラストをグッズ用に描いていただいたときは感無量でしたね。

 

──Meguさん自身がジャケットのアートディレクションに立ち会ったりすることもあるんですか?

 

Megu   基本はお任せですが、写真のセレクトはなるべく関わるようにしています。11月9日にはソロのシングル『So good』を出すんですけど、これは私にとって初の本格的なラップナンバーです。lyrical schoolさんのプロデューサー・キムヤスヒロさんがプロデュースしてくれたんです。キムさんとは8年前にNegicco「愛のタワー・オブ・ラヴ」のヴィジュアル面のディレクションでご一緒させていただいたとき以来だから本当に久しぶりで、そのことをジャケットでも表現したかったんですよね。だから8年前に撮ったジャケ写と同じ場所で今回も撮影したんです。昔から応援してくれているファンの方にも、この8年間という時間の流れを感じていただければと思いましたし。

 

──スタッフに伺ったところ、『So good』のアナログ盤は今のところリリース予定がないということですが……。

 

Megu  そうなんですよ~! 最近リリースされたKaedeのソロはアナログでも出していたので、いつか出してくれるんじゃないかと私も期待しております(笑)。

 

↑コンパクトにまとまっているMeguのプレーヤー周り。しかし、ゆくゆくはゴージャスなシステムを構築したいと野望を語る

 

──最後に現在の使用機種を教えていただけますか。

 

Megu   DMR渋谷店さんにいただいた初代のプレーヤーは残念ながら不具合が起きてしまいまして、現在はタワーレコードさんで購入したアイオンオーディオのプレーヤー。スピーカーが内臓されているし、自分の部屋のデザインにも馴染むので、すごく愛用させていただいております。ただですね……私の最終的な野望としてはもっと本格的なシステムも組んでみたいんですよ。スピーカーにもこだわって大きいものにしたいし、もちろんアンプも繋げたい。究極的な夢を語ると、Technicsの1200MKシリーズというプレーヤーがあるんですけど、これでいつか大好きな音楽を楽しみたいですね。