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2023/12/3 5:30

山下美月インタビュー「姉弟の温かみのある掛け合いを大事に演じています」『下剋上球児』

高校野球を通じ、さまざまな愛を描く日曜劇場『下剋上球児』(TBS系 毎週(日)後9・00)が話題に。個性的な登場人物が多く登場する中で、越山高校野球部の部員の一人、根室知廣(兵頭功海)の姉である根室柚希を演じているのが乃木坂46の山下美月さん。しっかり者で弟思いの柚希を演じる上で気を付けていることや撮影エピソード、演技の仕事に対する思いなどについて聞きました。

◆高校球児にスポットを当てたドラマですが、反響はどうですか?

とても大きいです。乃木坂46には野球が好きなメンバーが多いので、普段の楽屋でも「あの試合見た?」「あのプレーよかったよね」と野球の話が飛び交っているぐらいなんです。それこそ今年の夏の甲子園はお仕事の合間にスマートフォンで試合を見守っていましたし、感動してみんなで泣いていました。そのメンバーはもちろん、ファンの皆さんもこのドラマを楽しみにしてくださっていて。役柄も今までの私にはない感じですし、放送前には「どんなお話なの?」という声をたくさん頂きました。

 

◆ご自身はどういうドラマだと捉えていますか?

高校球児を題材にした作品ということでスポ根ドラマとも言えるのですが、ただそれだけではなくて。球児たちがフィーチャーされつつも、周りの大人たちも丁寧に奥深く描かれているなと思います。テレビなどで試合を見ると“この選手は将来きっと大活躍するんだろうな”とか、選手のことばかりに目が行きがちだったんですけど。実は周りの家族や先生方もいろいろ奮闘していたり、それぞれ何かドラマを抱えていたりもしていて。そういった裏側の部分もリアルに描かれていて面白いです。

 

◆球児の中の一人、知廣の姉の柚希という役どころについては?

ちょっと臆病なところがある弟の知廣君とは対照的に、柚希はわりとハツラツとしたキャラクターだと思います。両親を事故で亡くしてしまっているという家庭的な事情もあって、“私が家を支えていかなきゃ”という責任感が芽生えているのかなと思うんですけど。明るくチャキチャキしていて、活動的なお姉ちゃんです。

 

◆衣装はわりとシンプルですよね。

貧しい家の設定ということで、お洋服のバリエーションがあまりないんです。実は、中に着ているTシャツの袖に穴が開いていたりもしていて。弟の知廣君のズボンも、裾に穴が開いていたりします。よく見ると、すごく使い古されている感じがあるんです。そういった細かいところまでこだわって制作されているので感動します。

 

◆柚希を演じる上で気を付けていることは?

知廣君役の兵頭さんが実年齢としては私の1つ上で、役とは逆なんです。身長も高い方なので、どちらかと言うと私の方が妹に見えてしまうんじゃないかなという不安がありました。なので、できるだけお姉さんに見えるように勢いのある話し方にしたり、知廣君の肩をバシバシ叩いたりしています(笑)。兵頭さんも「頭を叩いても全然大丈夫ですよ」って言ってくださるんですけど、身長差がありすぎて頭はちょっと届かないかなって(笑)。かわいらしい姉弟だと思っていただけるように、温かみのある掛け合いを大事に演じています。

 

◆三重弁はどうですか?

難しいです。以前、関西弁の役をやらせていただいたことがあるのですが、またちょっと違っていて。スタイリストさんに三重の方がいらっしゃったので、アドバイスを頂きながら練習しています。

 

◆ちなみに、実は柚希にはこんな設定も…という裏情報があったら教えてください。

台本だけでは読み取れない細かい設定を頂いたのですが、その中に「趣味はかき氷屋さん巡り」というのがあって。柚希にしては意外ですよね(笑)。スポーツとかそういう感じではなく、イマドキでかわいい面もあっていいなと思いました。そういう設定に関しては、自分の役はもちろん、周りの登場人物がどういうキャラクターなのかということもしっかり考えるようにしています。鈴木亮平さんが演じられている主人公の南雲先生とは台本上そこまで頻繁に会うわけではないですが、顔を見ただけでほっとするようなキャラクターだと思うんです。なので“先生の顔を見た瞬間、私はどんな感情を抱くんだろう?”というふうに、周りのキャラクターに対して自分がどう動くかということをよく想像します。

 

◆鈴木さんの印象はどうですか?

お芝居に対してストイックに真摯に向き合う方というイメージでしたが、実際に現場でご一緒すると、その想像を超えてくるというか。お芝居に寄り添うという言葉が当てはまる方だなと思いました。クランクインの日に撮影したシーンが、柚希の家で南雲先生(鈴木)とお話をする場面だったんですけど。そこで柚希のイメージについて「僕はこう思っています」というのを話してくださったことがうれしくて。ご自身の役柄だけでなく、他の登場人物の心情まで一緒に考えてくださるんです。そうやって温かい気持ちを持ってお芝居に臨んでいらっしゃるところがすてきだなと思いました。

 

◆試合シーンも見どころですが、現場の様子はどうですか?

試合をここまで長尺で撮影することは、映像作品としてはなかなか珍しいと思うんです。なので、最初に台本を読んだときから“どうやって撮るんだろう?”って楽しみにしていました。球児役の皆さんも一生懸命野球を練習されていますし、いつも和気あいあいとされています。年齢的には私と同世代だったり年上の方も多かったりするのですが、いい意味で年下に見えるんですよね(笑)。キャラクターもそれぞれ際立っていて面白いです。

 

◆演出の塚原あゆ子監督とは『着飾る恋には理由があって』でもご一緒されていますよね。

前回も毎日というか、もう毎秒が勉強になっていました。現場で何を見たらいいのか、台本はどう読んだらいいのかというところから教えてくださいましたし、塚原さんの行動を見て学んだこともたくさんあって。今回の作品でも「ここの芝居はもうちょっとハツラツにやるとキャラが立つと思うよ」など、いろいろなアドバイスを頂いています。また、他のキャストの方に対するアドバイスでも、聞いていると“そういう視点もあるんだ!”って発見になったりもしていて。ご一緒させていただけるだけで一歩二歩進める感じがするので、お母さんみたいな人だと勝手に思っています(笑)。

 

◆独特と言われる演出面については?

前回、初めてお会いした本読みで塚原さんが「この現場はテストはしないので」とおっしゃったことがすごく印象に残っていて。確かに瞬時に生み出されるものにはリアリティーがあると思いますし、私自身もより集中力を高めた状態で本番に挑むことができています。あと台本に書かれているところが撮り終わっても、カメラが回り続けていることも多くて。そこはアドリブでのお芝居が求められたりもします。でも球児の皆さんも含めて、会話のキャッチボールがそこまで細かくは決まっていないので、すごく自然にできているというか。これも塚原さんの演出ならではだと思うんですけど、皆さんわりと自由に動かれたり話されたりしているんです。なので、“この役に成り切ろう”と思って現場に入るというよりも、ただ話しているだけでドラマの世界観にスッと入れる感覚があります。

 

◆演技のお仕事が続いてますが、俳優としてキャリアアップしている感覚はありますか?

自分の本業はアイドルなので、そこを軸に活動しているという思いがあります。なので“もっとキャリアアップしなきゃ”という気持ちよりも“人との出会いって一生の財産になるな”ということを感じるので、お会いしたキャストの方やスタッフさんとまたどこかの現場でご一緒したいという気持ちです。そこをモチベーションにしながら、目の前のお仕事を一つ一つ頑張ってきました。塚原さん、そしてプロデューサーの新井(順子)さんも、前回ご一緒させていただいたときに大変お世話になっていて。自分の中でお仕事への向き合い方や考え方が大きく変わったぐらい、とても大きな影響を与えてくださったお2人なんです。私の中に“またいつか成長した姿でお2人に呼んでいただけるように頑張ろう”という気持ちがあったので、こうしてまたご一緒できたことはとてもうれしかったです。“また会いたい!”という思いが、つながったのかなと思います。

 

◆塚原さんと新井さんから特に影響を受けたこととは?

世の中がコロナ禍になって、そこから1年ぐらいお芝居のお仕事をしていなかったんです。それで、コロナが少し落ち着いたときにレギュラーキャストとして出演させていただいたのが『着飾る~』で、自分の中では再スタートという気持ちもありました。その前までは自分のお芝居にすごく不安があったのと、アイドルだし、錚々たるキャストの皆さんの中に私みたいな者がいて大丈夫なのかな…みたいなネガティブな考えがあったんですけど。『着飾る~』の撮影中、完パケ(放送用に完成した映像)のDVDを頂く度に、塚原さんがメッセージを付けてくださったんです。「この芝居がすごく良かった」とか「この癖は直した方がいいかな」とか。その紙を見ながらずっと泣いたこともあったぐらい、、愛情の深さを感じて。そこから純粋にお芝居を頑張りたいという気持ちになりました。

 

◆では最後に、ドラマを楽しみにしている視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

「日曜劇場」ということもあってスケールも大きく、登場人物もたくさん出てくるドラマです。そして、クスッと笑える部分もあります。私はこの作品を通して、人と人との繋がりや支え合いというのはどの場面においても重要なんだなということに気づきました。そういった人間らしい温かみを、ドラマを通じてたくさん受け取っていただけたらうれしいです。

 

PROFILE

山下美月

●やました・みづき…1999年7月26日生まれ。東京都出身。O型。乃木坂46・3期生。最近の出演作にドラマ『さらば、佳き日』『弁護士ソドム』『スタンドUPスタート』、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』など。現在、「CanCam」専属モデルとしても活躍中。

 

番組情報

日曜劇場『下剋上球児』

TBS系

毎週日曜 午後9時~9時54分

 

<キャスト>

鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、松平健、小泉孝太郎、小日向文世ほか

 

<スタッフ>

製作:TBSスパークル、TBS

脚本:奥寺佐渡子

プロデュース:新井順子

演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝

編成:黎景怡、広瀬泰斗

 

番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/

番組公式X(旧Twitter):@gekokujo_kyuji

番組公式Instagram:@gekokujo_kyuji

番組公式TikTok:@gekokujyo_tbs

 

©TBSスパークル/TBS 撮影:Len

 

●photo/中村 功 text/橋本吾郎