ポイント4:コードバンに水分は大敵です
毛穴を潰すような特殊な処理をして仕上げるコードバンは、総じて水気に強くありません。雨粒や水滴にあたり、これを濡れたまま放置してしまうと、その部分の革だけが水分を吸い込み、乾いたときには水ぶくれのような状態になってしまいます。
そのような状態になってしまったときも、決して再起不能ではありません。実は、水牛の角で作られた「アディースティック」と呼ばれる専用の器具で水ぶくれを押しつぶすような処置を施したり、重度のものは熱ごてと呼ばれる器具で熱を加えながら水疱部分を押しつぶすようにして、ある程度のリペアは可能です。
しかし、特に財布やキーケースなどの革小物で使われるコードバンは、靴や鞄に比べると繊細な仕上げのものが多いです。まずは水気を避け、もしも水に濡れたら放置せずに、すぐにきれいに拭き取ってください。
ポイント5:コードバンはメンテナンスクリームのチョイスが大事
「コードバン専用」と書かれたメンテナンスクリームがありますが、たとえそう書かれていない製品でも、コードバンに悪影響を与えるような物質が入っているクリームは、まずありません。ですから、基本的には革製品用として作られたクリームであれば、どのようなものをお使いいただいても問題はないんですね。
ただ、「デリケートクリーム」と呼ばれるようなタイプのものは、含有する水分が多く、あまり大量に使うと、上記にある”水濡れ”と同じ現象が起きる可能性があります。逆にコードバン専用のものは水分量が少なく、油分が多めに配合されています。ここで問題になるのは原材料に何が使われているかではなく、水分量とその配合の割合なので、ラベルからは読み取るのは難しいです。
また、コードバンの中でも、靴用として作られたものは水や汚れからの保護のため、顔料を使った仕上げを施しているものもあります。靴用クリームもそれにあわせた作りになっていることが多いので、革小物に使う場合は、避けた方が無難です。
ポイント6:手指が触れる部分にはワザと多めの油分を染みこませておく
財布など手指が触れる部分は汚れが定着しやすいですよね。特に色が薄い革だとかなり目立ちます。そういう場所にはあらかじめ少し多めにクリームをすり込む「ビフォーケア」というテクニックが有効です。あらかじめ革が吸い込める油分をお腹いっぱいの状態にしておき、手指で付着する皮脂の汚れなどが染み込まないようにするわけです。
重要なポイントをまとめましょう。牛革はケアがしやすく、エイジングを楽しむのに向いた素材である、ということ。定期的にケアをすることさえ心がければ、基本的に難しく考える必要はないそうです。
一方、コードバンは水に濡らしたり、濡れたまま放置しないことが使用の鉄則。そして牛革もコードバンも長持ちさせる秘訣は「保湿」にかかっています。
また、クリームを使ったメンテナンスをする際には、「つけすぎないこと」「から拭きをしっかりやる」という2点を徹底すること。これは取材中に上野さんが何度も強調されていました。
最後に上野さんからメンテナンスクリームの使い分けを教えてもらいました。
「メンテナンスクリームにどんなタイプを買うか悩んだときは、仕上がりに艶を出したいのか、それともマットにしたいのかを考えてください。艶を出したいならノーマルなクリームを、艶をおさえてマットな感じに仕上げたいなら、デリケートクリームを使うといいですよ」
魅力的な革製品を入手したら、同時にメンテナンス用品も取りそろえて、身の回りの革製品のケアを楽しんでみてはいかがでしょうか。ひと手間かけてあげることで、愛用品の寿命が延びるだけでなく、質感が変化していくほどに愛着が深まり、お気に入りがさらに手放せないものになるはずです!
■ホンモノケイカク
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