ボーズがホームオーディオの世界に、再び大きな旋風を巻き起こそうとしています。4月下旬、アメリカのニューヨークで、ボーズが新製品発表会を開催しました。世界各国から限られたジャーナリストが集まる特別な場所で披露されたのは、かつて一世を風靡した「Lifestyleコレクション」の最新モデルでした。

ファン憧れのLifestyleコレクションが復活
ボーズが2017年頃まで展開していたLifestyleシリーズは、ボーズのホームシアターシステムにおけるメインラインであり、リビングのインテリアを損なわないコンパクトで洗練されたデザインと、そこからは想像もできないほど部屋全体を包み込むリッチなサウンドを兼ね備える憧れのプロダクトでした。
例えば、サテライトスピーカーに極限のコンパクトサイズを追求した“OmniJewel”を採用する「Lifestyle 650 system」や、キューブ型スピーカー“JewelCube”を採用する「Lifestyle 600 home entertainment system」などは、難しい知識がなくても本格的なシネマサウンドを家庭に導入できるパッケージとして、多くのユーザーに愛されてきました。筆者は2017年にそれぞれの製品を本誌でレポートしています。
今回発表された新生Lifestyleコレクションは、そのフィロソフィーを現代の音楽ストリーミング、生成AIアシスタント、そして何よりイマーシブオーディオのトレンドに合わせて再設計しています。
ラインナップは、スマートスピーカーの「Bose Lifestyle Ultra Speaker」(税込55,000円)、サウンドバーの「Bose Lifestyle Ultra Soundbar」(税込154,000円)、そしてワイヤレスサブウーファーの「Bose Lifestyle Ultra Subwoofer」(税込110,000円)の3モデル。日本では2026年5月15日の発売が予定されています。

1台で立体サウンドが楽しめるワイヤレススピーカー
イベントはニューヨーク都市部のタウンハウスを舞台に開催されました。そもそもタウンハウスとは地上数階経ての一戸建てに近い集合住宅のことで、マンハッタン市内をはじめとする歴史的エリアに多く残っています。要するに、一般の家庭に近い環境を用意したわけです。今回は、リビングルームやキッチン、ベッドルームなどに新しいLifestyleコレクションをインストールした状態でサウンドを聴くことができました。
さて、Bose Lifestyle Ultra Speakerは、一見するとコンパクトなワイヤレススピーカーですが、1台でステレオ再生からイマーシブオーディオまで、様々なリスニングスタイルをカバーする多機能なスマートスピーカーです。

前方向きに2基のドライバー、上向きに1基のドライバーを配置した独自の「3ドライバーアレイ」を採用しています。この上向きのドライバーが、天井に向けて音を放射し、反射させることで、スピーカーのサイズを超えた高さと奥行きのあるサウンドを再現します。

筆者が現地で体験したUltra Speakerのサウンドは、コンパクトな本体のサイズを超える豊かな広がりと安定感を特徴としていました。音楽ソースをいくつか試聴しましたが、音のつながりがとても自然で、空間全体に音が溶け込むような没入感が味わえました。ボーカルや楽器の音像もピシッと定位します。
本機と新しいサウンドバーが搭載する、ボーズ独自の音声信号処理技術「Bose TrueSpatial」テクノロジーが常時効果を働かせることにより、再生する音源に合わせて自然な音の広がりをつくり出します。この機能はオン・オフが選べるものではなく、Ultra Speakerのユニットや筐体に合わせたベストなサウンドを、常に自動チューニングしてくれるスマート機能として解釈する方が妥当だと思います。
Ultra Speakerの設定は、iOS/Android対応のBoseアプリで行います。アプリを使って、Wi-Fi経由で2台のUltra Speakerをステレオペアにしたり、2台以上のUltra Speakerを宅内各所に設置してマルチルーム環境をつくることができます。
デザインも洗練されています。本体は天面・底面のラウンドフォルムを活かした柔らかなフォルムとして、フロント側には布地のグリルを採用。部屋のインテリアと自然に溶け込みます。カラーバリエーションはホワイトスモーク、ブラックのほか、ボーズのウェブ直販ストア限定モデルのドリフトウッドサンドがあります。限定モデルのみ、本体のベース側にホワイトオークの無垢材を使用して、よりあたたかみのあふれるスピーカーに仕上げています。所有欲をそそる仕上がりでした。

本体の質量は約1.6kgなので、家の中で場所を変えながら本機によるリスニングが楽しめます。ボーズが発売する純正のスピーカー用フロアスタンドや壁掛け用ブラケットを組み合わせれば、設置の自由度も向上します。
音像を自在につくり出すサウンドバー。小型でパワフルなサブウーファー
Bose Lifestyle Ultra Soundbarと、Bose Lifestyle Ultra Subwooferの組み合わせにも要注目です。同社のサウンドバーとサブウーファー(ベースモジュール)に初めてLifestyleのシリーズネームが付きました。

サウンドバーは2023年秋にボーズが発売した「Bose Smart Ultra Soundbar」の後継機となるフラグシップモデルです。6基のフルレンジドライバーとセンタートゥイーター、さらにボーズ独自の「PhaseGuide」ドライバー2基を含む計9基のスピーカーユニットを搭載しています。
PhaseGuideテクノロジーは2010年以降からボーズの製品に搭載されるようになりました。独自機構のユニットから指向性を高めた音をビームのように放ち、部屋の壁や天井などに反射させながら、いくつものスピーカーが存在するかのような仮想的な音像をつくり出します。
映画「DUNE/デューン 砂の惑星」を視聴したデモンストレーションでは、うなる砂嵐の効果音が部屋の中を駆け抜けるようなリアリティに息を吞みました。1本のサウンドバーで再現しているとはにわかに信じがたいほど、音の定位は精緻で、なおかつ力強く感じられました。

もちろん、サウンドバーは最新のイマーシブオーディオフォーマットであるドルビーアトモスにネイティブ対応していますが、本機でもまた「Bose TrueSpatial」が威力を発揮します。ステレオ収録されている音楽コンテンツ、テレビ番組の音声であっても、高さ方向の情報を自然に付加して再生してくれるため、常に最新の没入体験を享受できます。
また、AIテクノロジーに基づく「Bose SpeechClarity」機能により、映画系コンテンツなどに収録されているダイアローグ(セリフ)の音声を、コンテンツのBGMや環境音から切り離して引き立たせることができます。人の声が明瞭に聞き取れるようになることから、夜間のシアター鑑賞も音量を上げすぎることなく安心して楽しめます。

サウンドバーに5GHz対応のワイヤレスサブウーファー「Bose Lifestyle Ultra Subwoofer」を組み合わせることで、シアター環境はさらにリッチになります。このサブウーファーにはボーズの特許技術である「Quiet Port」が搭載されており、歪みのない、パンチの効いた重低音を再現します。コンパクトでスタイリッシュなサブウーファーなので、テレビ台の隣などにもインテリアのようにさりげなく置けると思います。
なお、サウンドバーにサブウーファーをつなぎ、さらにリアスピーカーに最大2台のUltra Speakerを加えた7.1.4チャンネルのスピーカー配置を組むこともできます。

先進技術を意識させない、シンプルで洗練されたサウンド体験
最新のLifestyleコレクションを通じて一貫しているのは、ユーザーが複雑な設定に悩まされることなく、最高のサウンド体験を得られるように“シンプルさ”を追求していることです。
例えば、部屋の音響特性を最適化する「Bose CustomTune」の機能を使うことにより、スピーカーの置き場所に悩まされることなく、常にベストなリスニング環境が得られます。従来のボーズ製品が採用していたADAPTiQ(アダプト アイキュー)は、専用の測定用ヘッドセットを必要としていました。CustomTuneはiPhoneやAndroidスマートフォンのマイクを基準点として、数分で測定が行えます。

音楽ストリーミングもアップルのAirPlay 2、グーグルのGoogle Cast、Spotify Connectなどに対応しているので、ホームネットワークにつながるLifestyleコレクションの名前を見つけて、コンテンツをキャストするだけでリスニングをスタートできます。
なお音声操作に関しては、アマゾンがアメリカ・イギリスなどの地域からサービスを先行提供する生成AIベースの音声アシスタント「Amazon Alexa+」に、ボーズのLifestyleコレクションがサードパーティの製品として初めて対応します。スピーカーと自然に対話するように話しながら、AIとコミュニケーションを交わせます。筆者も体験会で、Ultra SpeakerでAlexa+を試しました。スピーカーが返す応答がすべて音声になり、ペアリングしたスマホやタブレットの画面に文字が表示されないことがやや不便でしたが、応答のレスポインスがとてもよく、ニューヨーク市内を電車で効率よく移動する方法など、役立つ答えが返ってきます。
今回はLifestyleコレクションの最上位モデルであるUltraシリーズが華々しくデビューを飾りましたが、この新しいLifestyleの世界観が今後どのように広がっていくのか、とても楽しみです。より多くのユーザーの住環境やニーズに寄り添ったラインナップのさらなる充実にも、期待せずにはいられません。ボーズが再び切り開くホームオーディオの未来は、私たちの生活をより豊かで彩りあるものにしてくれるはずです。