電動キックボードやシェアサイクルの普及が進む一方、利用者のマナーや安全面への懸念が指摘されている国内の電動モビリティ市場。世界約30か国で電動モビリティシェアサービスを展開するLimeは、2023年から座って走れる電動シートボード「Limeラクモ」を提供してきましたが、4月23日、あらたに電動アシスト自転車「LimeBike(ライムバイク)」の日本展開を発表しました。
同日、渋谷サクラステージで開催された記者発表会では、サブスクリプションプラン「LimePrime」、HELLO CYCLINGとのポート連携、三井不動産リアルティが主導する4社共同のポート共有モデル参画という3つの施策も同時に公表されています。

自社開発・第5世代の電動アシスト自転車「LimeBike」とは?
LimeBikeは、Limeが自社で企画から車両開発まで手がけた電動アシスト自転車で、同社の電動アシスト自転車としては第5世代にあたります。代表取締役社長のテリー・サイ氏は発表会で、「8年間にわたる進化の集大成です。単なる形だけでなく、乗車データをもとにR&Dを繰り返してきた結果がこの車両です」と語りました。


設計上の特徴は5点で、またぎやすい低床フレーム(ステップスルー構造)、ワンタッチ式サドル高さ調整、クランプ式スマートフォンホルダー、幅2.4インチの太め20インチタイヤ、大型のフロントカゴ。身長150cmから190cm台まで対応しており、テリー氏は「もっともインクルーシブな車両」と表現しました。東京の16区において2026年4月より順次配備を開始します。

お得なサブスクプラン「LimePrime」も開始
あわせて発表された「LimePrime」は、月額税込999円(税込)のサブスクリプションプランです。メンバーシップに加入することで、従来の料金モデル(基本料金+利用料金)に対し、基本料金が無料となります。利用料金自体はかかるものの、1回20分までを90円で何度でも利用できるようになります。
詳細な利用料金ですが、利用料金は5分以内45円(税込)、最初の20分まで90円(税込)、20分超過後は1分あたり21円(税込)となります。短距離・高頻度の移動を手軽に利用できるため、ヘビーユーザーにおすすめのプランと言えるでしょう。なお、車両予約は利用30分前から無料で可能で、解約手数料はありません。
歩道走行をAIが検知、ジオフェンシングで誤進入を防ぐ
発表会では「LimeVision」と呼ばれる安全技術の説明もありました。走行中の道路状況を車載カメラで学習し、歩道に乗ったとAIが判断すればアラートを作動させる仕組みです。海外の電動キックボードで実績を積んだ技術を日本向けに転用したもので、現在は自治体と協力して実証実験を進めていく段階とのことです。
ポートに設置したビーコンとGPSを組み合わせて指定場所外への駐車を防ぐ「駐車ビーコン」と、仮想境界で走行を自動制御して首都高への誤進入を防ぐ「ジオフェンシング」も引き続き運用されます。
国内最大級のHELLO CYCLINGとのポート連携を発表
Limeは今回、国内シェアサイクル大手のOpenStreetが運営する「HELLO CYCLING」とのポート連携も発表しました。同社代表取締役社長CEOの工藤智彰氏によれば、HELLO CYCLINGは、官民連携での社会実装をしてきており、現在全国13,700か所のステーションと550万人の会員がいて国内最大級とのこと。
2026年5月のゴールデンウィーク明けから、池袋・浅草・下北沢・二子玉川・恵比寿など東京都心部の一部ポートから連携をスタートし、今後は数千ポートへの拡大を予定しており、将来的にはHELLO CYCLINGアプリからLimeBikeを直接利用できるアプリ連携も目指します。返却枠の空き状況については両社間での情報共有を進めており、今秋をめどに対応を予定。
工藤氏は、「グローバル最大級のLimeが来ると、用地獲得競争が激しくなり、サービスが分散してしまう。ただ、私たちの考え方は、一社だけでどうにかしようというよりは、インフラを共に作っていくというものです」と、今回の連携について語りました。

Lime、HELLO CYCLING、LUUP、ドコモ・バイクシェアの4社でポートを共有
今回の発表でもうひとつ注目されるのが、三井不動産リアルティが推進する「マルチモビリティポート」への参画です。同社シェアリング事業本部の星野純一氏によれば、「三井のリパーク」約16,000か所のスペースを活用し、今年4月からLime、OpenStreet(HELLO CYCLING)、LUUP、ドコモ・バイクシェアの4社が共同利用できるポートとして整備を開始しています。
すでに赤羽、亀有、南千住などで開設済みで、南千住では3社が入居。2026年度中に500か所、2030年までに4,000か所への展開を目標としており、星野氏は「1か所に行けば乗りたい乗り物に乗れる場所を増やしていきたい」と述べました。
パーキング事業者が主体となり複数のモビリティ事業者が連携するこのモデルは、星野氏によれば国内初の試みとのことです。

「電動キックボード」ではなく「電動アシスト自転車」を選んだ理由
OpenStreetの調査によると、現在国内のシェアモビリティ各社のポートは合計約40,000か所で、内訳はLUUPが約16,200か所、HELLO CYCLINGが約13,500か所、ドコモ・バイクシェアが約5,500か所。シェアモビリティの数は約100,000台規模となり、大手3社でマーケットがほぼ形成されている状況です。海外主要都市と比べても、東京は世界有数のシェアモビリティ都市になっています。
ただし、電動キックボードのシェアモビリティ事業については、パリが2023年、メルボルンは2024年、プラハは2026年に禁止するなど、電動キックボードへの規制は厳しくなっています。

シェアモビリティ事業として運用されている電動キックボードの多くは、日本国内では特定小型原動機付自転車の扱い。それに対して、電動アシスト自転車はあくまでも自転車の扱いであるため、利用のハードルはぐっと下がります。工藤氏も「立ち乗りの電動キックボードは今後も扱うつもりはない。それは日本の道路環境への適合性・安全性の面でまだ課題が残っているから。電動キックボードだったらLimeと協働しなかった」と、電動アシスト自転車の選択が国内普及の条件になっていたと明言しています。
世界最大手のLimeが日本国内にLimeBikeを導入したことにより、2026年は、日本の都市モビリティの利用がますます便利なフェーズへ移行する節目になるかもしれません。