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2021/3/21 18:30

一人じゃ無理! NASAが進める「電気飛行機計画」とは?

電気自動車や「空飛ぶタクシー」など、電気を動力とした乗り物へのシフトが進む今日、その波は飛行機の世界にも押し寄せています。しかし、大型の飛行機を電気の力で飛ばすプロジェクトにNASAが取り組んでいることをご存知ですか?

 

開発目標は2035年

↑電気だけで飛行機は飛ばせる?

 

2015年に発表された今後20年のロードマップによると、NASAは温室効果ガスの排出量を抑え、より安全で静音な航空輸送機の開発を目的としながら2035年までに電気飛行機の実用化を目指しています。

 

現在、飛行機はジェット燃料と呼ばれる化石燃料を燃焼させて推力を得て飛行していますが、この燃料は飛行機が数多く飛べば飛ぶほど温室効果ガスを排出しています。

 

日本では経済産業省が2017年から2036年の20年間で、世界の航空需要は年平均約5%で成長すると見込んでおり、この航空需要の増加に伴い温室効果ガスの排出量も増大するという見通しから、航空業界でも地球温暖化対策が議論されるようになっているのです。そこで電気自動車の開発と同じように持ち上がっているのが、環境にやさしい電気飛行機開発の構想です。

 

このような背景のなかでNASAは電気飛行機プロジェクトを進めているのですが、具体的にNASAでは「X-57」の開発が進められています。

 

「Maxwell」の愛称を持つ完全電動式の飛行機「X-57」計画が2016年に発表されました。それによると、X-57  Maxwellは左右に細長く伸びた翼を持っており、各翼に6個ずつ電気モーターと翼の先端に大きめの電気モーターが各1個ずつ、計14個の電気モーターが付いた構造となっています。

↑X-57 Maxwellは本当に空を飛ぶか?

 

この設計にもとづき作られたX-57 Maxwellが2019年、カリフォルニア州エドワーズにあるアームストロング飛行研究センターでお披露目されました。しかし、飛行機は大型の乗り物であるため、電気自動車や空飛ぶタクシーのような垂直離着陸機と比べて、ずっと高出力の電気モーターが必要になります。バッテリーを大きくすれば出力は高くなりますが、飛行機が効率よく飛行するためには軽量化が必須。そのため、電気飛行機では小型で軽量かつ高出力なモーターが求められるという大きな課題があるのです。

 

そこで2020年2月、NASAは動力を推進力に伝えるためのパワートレインシステムの開発を行う企業をアメリカ国内から広く募ることを発表。メガワットクラスと桁違いの出力を必要とする飛行機で、効率的にエネルギーを伝えるシステムの開発が求められているのです。

 

ちなみに、日本でもJAXA(宇宙航空研究開発機構)が電気飛行機の開発に着手しており、電動航空機「エミッションフリー航空機」を2030~50年代までに実用化するという目標を掲げています。ただし、NASAがパワートレインシステムの開発企業を募集したように、電動飛行機の実現には数々の技術開発が必要となり、複数の分野の技術力が必要。そのためNASAもJAXAも、官民一体となった共同開発が電気飛行機の実現には鍵となってくるようです。