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2018/2/10 21:00

【街中華の名店】常識破りの「ダヌダヌツケメン」は自家製麺×ピリ辛で激ウマ!下落合住民がうらやましくなる「龍栄」

※同店は2018年8月18日に閉店しました。以下の記事はすべて配信時の情報です

街中華の食べ歩きをしていると、時に個性的な激ウマ料理に出合えることがある。しかもそんな逸品がある店に限って、隠れるようにたたずんでいるものだ。今回の「龍栄」は、まさに宝物のような店。西武新宿線の「下落合駅」から徒歩数分ではあるものの、住宅地の小道沿いという目立たない場所にある。

 

 

塩のシャープさでごまのコクを生かした技ありのつけ麺

店舗の入っている建物自体に年季があり、築70余年とか。2階部分は賃貸住居になっているが、アパートというよりも○○荘といえる様相である。そして「龍栄」自体も味のある風合いで、一見は飲食店らしからぬ外観だ。

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↑「龍栄」。手作りの看板が、温かみを感じさせる

 

だが、ここはまぎれもなく街中華。熟練の店主・田中進一さんが、奥様との見事な連係プレーで絶品中華を手際よく提供してくれる。壁には様々なメニューが貼られているが、なかでも目を引くネーミングなのが「ダヌダヌメン」と「ダヌダヌツケメン」だ。特に後者に関しては自家製麺を採用しており、店主のこだわりが凝縮されている。

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↑「ダヌダヌツケメン」170g 700円。中太の麺は240gへの増量が無料で、340gは800円。爽やかな酸味を演出する、レモンを添える心配りもうれしい

 

ユニークな名称だが、味はいわゆる担担つけ麺に近い。練りごまからオリジナルの芝麻醤(チーマージャン)を作り、ラー油と合わせて香ばしいコクと辛味を重ねている。ここまでは担担~と似ているが、しょうゆではなく塩ベースのタレと合わせるのが「ダヌダヌツケメン」。またあえて酢による酸味は主張させていないので、ごまのまろやかさとシャープな塩味が見事に共存している。具としては、ひき肉のほかに鶏つくねが入っている点も独特だ。

 

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↑つけ汁にはニラと野菜もたっぷり。みずみずしい麺をどっぷりと浸し、これらの具とともにぢゅるりとすすれば、口いっぱいに至福の味が広がる。ラストはスープ割りで、余すことなく楽しもう

 

自家製麺はかん水を少なめにする一方、卵を練り込むことで適度な弾力に。さらには、なんとエクストラバージンオリーブオイルも加えているためツルツル、プリプリとした食感が楽しめる。田中さんは、だれからも教わることなく自ら食べ歩き鍛えた舌で、この絶妙な一杯を完成させた。だからこれは担担つけ麺ではなく、「ダヌダヌツケメン」でいいのだ。

 

 

ベテラン夫婦の情熱と愛がこもった高コスパな絶品中華

田中さんは業種を問わず30近い多様な職を経て、同店を立ち上げた苦労人。そのため料理以外に大工の仕事などもでき、これまで知人の飲食店の設計や商品開発もしている。「龍栄」は1982年の創業で、田中さん自身は現在72歳。半生を同店とともに過ごしてきた。

 

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↑店内奥にある小上がりの座敷から厨房を望む。田中さんと奥様のコンビネーションもまた、達人の領域だ

 

場所柄、近隣の住民やビジネスパーソンに愛されてきた。むろん常連客は多く、なかには青春時代をこの街で過ごした有名人が懐かしんで訪れることもあるという。そのため各メニューにファンがいて、種類も豊富。麺以外の惣菜系や点心、ご飯類のクオリティも抜群だ。たとえば中華丼は、肉と野菜をバランスよく味わえる傑作である。

 

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↑「中華丼」600円。白菜、玉ねぎ、にんじん、ピーマンがたっぷり。肉は豚の「らん」という赤身の希少部位を使っており、鶏つくねも入る。わかめスープが付いてこの安さは、頭が下がる思いだ

 

すっかりベテランの域に達している店主の田中さん。年齢的には一般的な定年を超えているが、料理への意欲はまったく衰えていない。むしろ能動的で、なんと現在より大型の製麺機を導入してすべての麺(現在自家製麵なのはつけ麺とナポリタンのみ)を自家製にしたいという。

 

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↑ベースとなるスープに使ういわしの煮干し。動物系には鶏のもみじとつくねからダシを取り、昆布も合わせて重層的なうまみを丁寧に抽出する。それでいて同店のラーメンは500円~と高コスパ

 

「ダヌダヌツケメン」の創作をはじめ、研究熱心で進化にも余念がない。つけ麺そのものをメニュー化したのも、約20年前に世間でつけ麺がブレイクしはじめたからである。試行錯誤を重ねてつけ汁に合う麺を求めた結果、自家製がベストという答えにたどり着いた。特に「ダヌダヌツケメン」に関しては徐々にファンが増えていき、この2年ほどで人気は上位に。

 

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↑内装も田中さんが自ら手がけたもの。席はカウンターと、奥の座敷がある

 

「料理は手間暇かけることが大切だよね」と微笑む田中さん。聞けば角煮はスープで煮てからしょうゆダレに漬け、揚げたあとに冷蔵庫で寝かせ、甘めのタレで煮込むため丸2日かかる。餃子は生地から自家製で、薄皮のひと口サイズに仕上げる。営業中は寡黙で、せっせと仕事に打ち込んでいるが、「龍栄」の味がどこかやさしいのは、きっと深い愛があるからだ。下落合に住んでいる人が、なんともうらやましい!

 

 

【SHOP DATA】
龍栄
住所:東京都新宿区高田馬場3-28-12
アクセス:西武新宿線「下落合駅」徒歩3分
営業時間:11:30~14:00(L.O.)/17:30~21:30(L.O.)
定休日:日曜