デジタル
2016/9/16 21:23

iPhone 7の対抗馬はどれだ? 改めて、IFA2016で登場したスマホたちを振り返る

毎年9月上旬にドイツ・ベルリンで開催される家電とIT関連の大型イベント「IFA」。毎年スマートフォン各メーカーの秋冬モデルが発表される場でもあり、会期中は各社の派手な発表会が連日開催される。打倒iPhone 7を狙うフラッグシップモデルから、自社製品ラインナップを拡充するミッドレンジモデルまで、各社からはバリエーション豊かな新製品が登場した。この冬はどの機種が話題になるのだろうか? 日本登場のモデルはあるのか? 注目の製品を見ていこう。

 

ソニーはフラッグシップで勝負! ファーウェイはまさかのセルフィーモデル

IFA2016にハイエンドモデルを投入してきたのがソニーだ。ソニーは2016年2月にスマートフォンのラインナップを一新し、新たに「Xperia X」シリーズを発表。今回はそのXシリーズのフラッグシップモデルとなる「Xperia XZ」と、コンパクトなミッドレンジモデル「Xperia X Compact」の2機種を発表した。このうちXperia XZはXシリーズの最上位モデルであり、2月発表の「Xperia X Performance」の機能を強化したモデル。5.2型とサイズアップしたディスプレーに、新型センサーを加えカメラ機能もアップしている。

 

さらにはミネラルブラック、プラチナ、フォレストブルーという、やや中間色を交えた本体カラーはシックで落ち着いた色合いだ。想定するターゲット層は従来のXperiaシリーズよりも若干上を考えているようにも思われる。ハイパフォーマンス、高価格モデルにはそれに見合った外観の仕上げも必要と判断したのだろう。これはIFA2016会期中に発表されたiPhone 7のジェットブラックにも通じるところがある。

↑ブティックのようなカウンターで新型Xperiaを展示するソニー
↑ブティックのようなカウンターで新型Xperiaを展示するソニー

 

↑ソニーの誇るフラッグシップモデル「Xperia XZ」
↑ソニーの誇るフラッグシップモデル「Xperia XZ」

 

一方、Xperia X Compactは昨年のIFA2015で発表された「Xperia Z5 Compact」の後継モデルともいえる。但しZ5 Compactは「ハイエンドモデルの小型モデル」だったのに対し、X Compactは「ミッドレンジクラスの小型機」と、その中身は大きく異なる。スペックを抑えたぶん価格も安くなり、手軽に買えるモデルになるだろう。ソニーの過去の戦略は「ハイスペックモデルのバリエーション展開を広げる」だったが、Xperia Xシリーズからは「ミッド・ハイレンジモデルを中心に上下にラインナップを広げる」に変わった。今回の2つのモデルはそのXperia Xシリーズの世界を拡充するモデルとなり、スマートフォン市場で劣勢が続くソニーの反撃に出る体制が整ったといえるだろう。

↑ボリュームゾーン向けモデルとなったXperia X Compact
↑ボリュームゾーン向けモデルとなったXperia X Compact

 

ソニーが新たなフラッグシップモデルを発表したのに対し、ファーウェイの新製品はミッドレンジモデルだった。ファーウェイは例年、春先にフラッグシップの「P」シリーズ、秋に大画面モデルの「Mate」シリーズというスケジュールでハイエンドモデルを投入して来た。だが今年の秋のIFA2016ではCPUのスペックを落とし、価格を400ユーロ前後(約4万5000円前後)と買いやすいクラスに抑えたミッドレンジクラスの「nova/nova Plus」が華々しくデビューしたのである。

↑常に来客で賑わうファーウェイブース
↑常に来客で賑わうファーウェイブース

 

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では価格が低いからといって、性能も低い製品なのだろうか? novaのメモリ容量は3GBで、Xperia XZと変わらない。またカメラはnovaが1200万画素、nova plusが1600万画素。どちらもフロントカメラは800万画素で、ミッドレンジモデルとしては十分な性能だろう。もちろん本体は金属製で質感は高く、背面のカメラ部分もでっぱりはない。ファーウェイはnovaのユーザーを「スマートフォンでSNSを日々楽しみ、特にセルフィーを撮影して友人たちとシェアする」層を想定している。この2つの製品は、「そこそこの価格で質感もよく、しかもカメラやSNSが使いやすい」という、一般的なスマートフォンユーザーの誰もが望むクラスの製品なのである。

↑novaシリーズはミッドレンジ。しかしターゲットユーザーの満足度は高そうだ
↑novaシリーズはミッドレンジ。しかしターゲットユーザーの満足度は高そうだ

 

とはいえこれだけではインパクトが弱いと考えたのか、ファーウェイはライカとコラボレーションしたハイクラスのデュアルカメラを搭載した2016年春モデル「P9」に、レッドとブルーの色違いモデルも追加した。特にメタリックなボディーを赤く染めたレッドのP9は、今までのスマートフォンにはない大胆な色合いだ。ライカブランドの力もありP9は今まで同社のスマートフォンには興味の無かったユーザーも惹きつけている。iPhoneのカメラでは飽き足らないユーザーがP9を買う例も多い。そんなこれからファーウェイの製品に興味を持ってくれそうなユーザーにとって、iPhoneを含めた各社のスマートフォンには無いカラーリングのレッドとブルーのP9は、より興味をそそる製品になるだろう。

↑P9には2色が追加。レッドのエレガントな色合いはユーザー層を広げるだろう
↑P9には2色が追加。レッドのエレガントな色合いはユーザー層を広げるだろう

 

中国メーカーの新モデルはお手頃価格のミッドレンジが熱い!

novaはスマートフォンの評価基準を総合的なスペックではなく、「ユーザーが求める機能」にフォーカスした、新しいカテゴリの製品ともいえるだろう。スペック的にはミッドレンジの製品だが、購入したユーザーが日々の利用で不満を持つことはほどんどないだろう。このnovaのような製品は、IFA2016で他社からも登場しているのである。

 

ZTEが今回発表した「AXON 7 mini」は、5月に発表したフラッグシップモデル「AXON 7」をコンパクトにした製品だ。本体サイズを小型化し、CPUのスペックを抑えたあたりはXperia XZとXperia X Compactの関係に似ている。しかしAXON 7 miniはCPUやディスプレイ性能以外の部分は上位モデルのAXON 7と同じ機能を備えているのだ。ディスプレイ上下に配置したステレオスピーカー、ドルビーのサラウンドサウンドシステム「Dolby Atmos」対応、Hi-Fi再生専用チップの搭載による高音質な音楽再生機能など、「音」に関してはAXON 7と同性能であり、他社のフラッグシップモデルを凌駕する性能を有している。

↑廉価版と思いきや、サウンド周りはハイスペックなAXON 7 mini
↑廉価版と思いきや、サウンド周りはハイスペックなAXON 7 mini

 

しかも発表会の会場で、世界中の記者たちから驚きの声が上がったのが299ユーロ(約3万4000円)という価格だ。オーディオ専用プレーヤーにも匹敵する性能を有したスマートフォンでありながら、ボリュームゾーン向けの一般的なスマートフォンと変わらぬ価格はお買い得感が高い。

 

今回のIFA2016のスマートフォン新製品のトレンドは、実はnova、AXON 7 miniのような「一芸に秀でたミッドレンジ」製品だったのである。ほかの中堅メーカー発表した新製品は、いずれも値段の安さを感じさせない、特徴を持った製品ばかりだった。たとえば日本でもスマートフォンを販売するアルカテルの新モデル「Shine Lite」は名前が示すように、金属ボディーが美しく光る製品だ。「デザインフラッグシップ」と同社が呼ぶShine Liteの価格は200ドル前後、約2万円。フロントにフラッシュ付きの500万画素カメラを備え、安いモデルながらもセルフィー機能は手を抜かない。

↑アルカテルのShine Lite。外見に拘った低価格なデザインモデル
↑アルカテルのShine Lite。外見に拘った低価格なデザインモデル

 

またヨーロッパ全土でカラフルボディーなスマートフォンを販売するWIKO(ウィコ)も200ユーロ以下のミッドレンジモデルを3機種投入。このうち「UFeel Fab」は5.5型と大型ディスプレイを搭載しつつも、価格は179.99ユーロ(約2万円)に抑えた。大画面スマートフォンはiPhone 6 Plusなどもそうだが、背面側はどうしても単調な仕上げになってしまうが、UFeel Fabは上下のアンテナ部分のパーツの色を変えてアクセントを加えている。フランス発のWIKOはほかのモデルもカラーリングやデザインに特徴を持たせており、ほかにはない、自分だけのスマートフォンを求めるヨーロッパの若い世代に人気となっている。

WIKOのUFeel Fabは大画面と低価格を両立、背面はツートンカラー仕上げ
↑WIKOのUFeel Fabは大画面と低価格を両立、背面はツートンカラー仕上げ

 

もちろんハイスペックな製品を求めるユーザーはiPhone 7に飛びつくだろう。しかし今や2-3万円のスマートフォンでも十分実用的な性能を有しており、しかも品質も悪くない。IFA2016で各社から登場したお手頃価格の新製品は、打倒iPhone 7というよりも、日用品のように手軽にスマートフォンを購入して使いたい、そんな消費者を狙っているのだろう。いくつかの製品は日本での販売もアナウンスされているので、日本上陸が楽しみだ。