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2019/2/28 21:45

宇野昌磨と宇野藤雄――孫と祖父が創りだす「美」の競演

フィギュアスケートの宇野昌磨選手が好きで好きでたまらない方は多いと思います。

 

さきごろ行われた「四大大陸選手権」で宇野選手が大変な活躍を見せたことは、皆さんよくご存じでしょう。彼はショートプログラムで4位と少し出遅れてしまい、優勝は難しいのではないかと言われていました。ところが、フリーで197.36点を叩き出し、奇跡の優勝を遂げたのです。まったくもって、しびれます。

 

宇野昌磨の作る世界

宇野選手は右足を故障したまま大会に臨んだといいます。試合前は右足首の捻挫と伝えられていましたが、実は靱帯を部分断裂していたとか……。かなりの重傷で、練習したくても思うようにできないまま参加したのです。けれども、4回転ジャンプをきっちり決めました。

 

素晴らしいのはジャンプだけではありません。何かこう、精霊が宿ったかのような不思議な美しさでした。スポーツであると同時に、別世界に向けて飛翔するような軽やかさとしなやかさを披露したのです。

 

たいしたものだなと、私は心から感心し「いったい、この不思議な美しさはどこからくるのだろう」と呟いてしまいました。その秘密は遺伝子に組み込まれたものなのではないかとさえ思ったほどです。

 

 

スケーターの祖父は洋画家

宇野昌磨の祖父・宇野藤雄は、有名な洋画家です。キャンバスの上に美を創作するのが仕事です。宇野昌磨のスケートの美しさも、おじい様から伝わったものなのかもしれません。

画家はキャンバスの上に、孫は氷の上で、それぞれが懸命に美を創り出しています。才能を発揮する場所が違うだけではないでしょうか?

 

それを確かめたくて、早速、宇野藤雄の画集『Modern Japonisme 宇野藤雄 KYOTO 四季の舞妓』(クオリアート・刊)をダウンロードしました。

 

そして、度肝を抜かれました。私が考えていた洋画とは趣の違うものだったからです。

 

洋画というより妖画という感じ……。観たこともないような世界が広がっています。 描かれる題材は、「遊女」、「英雄義経」「京都の舞妓」「風神雷神」など、日本そのものです。
けれども、どこかこの世のものとは思えない存在につながっているとしか思えません。とても不思議な画なのです。

 

 

感想は「ぶっとんでる」

「ぶっとんでる……」画集を前に、私は独り言を言いました。とりわけ、絵の中に描かれた逆さまになった人物に吸い寄せられました。

 

義経を描いた「悲劇の英雄義経記」、大阪城落城を題材とする「落城 夏の陣」などの作品では、鎧を着けた武者が描かれますが、その横で何の脈絡もなく豊満で白い肌の裸婦が逆だちのポーズをとっているのです。逆立ちといっても宙に浮いている状態です。あり得ない構図ですが、それが妖しくて悲しくて美しいのです。宇野昌磨の4回転ジャンプに匹敵する高等な技ではありませんか。

 

 

タイモン・スクリーチからのメッセージ

『Modern Japonisme 宇野藤雄 KYOTO 四季の舞妓』には、巻頭にタイモン・スクリーチのメッセージが寄せられています。彼はオックスフォード大学の出身で、ハーヴァード大学で博士号を取得し、現在はロンドン大学でアジア・アフリカ研究学院教授をつとめているそうです。

 

タイモン・スクリーチは宇野藤雄の画について次のように書いています。

 

九十歳にも近い宇野静雄の筆からは、快活で生命力に満ちた形態が生み出される。(中略)宇野はまたヨーロッパやアジアに見られる伝統的モチーフを奇抜な方法で並置し、詩歌のような文字による書き込みをも画面に収める。その好例が『落城』という作品である。逆さまの女性が、半ばヨーロッパの裸婦像のように、半ば日本の幽霊のように描かれている

(『Modern Japonisme 宇野藤雄 KYOTO 四季の舞妓』より抜粋

 

まさにその通り! と、私は叫びそうになりました。

 

 

祖父と孫が創り出す美の世界

もちろん、洋画の世界とフィギュアスケートの世界を無理矢理結びつけることはできません。それでも、祖父と孫が、美しいもの見事なものを創り出すことに必死になっていると言ってもいいのではないでしょうか。

 

個人的に私が一番好きな作品は『「風神雷神」30号 Wind God and Thunder God』 です。綺麗な舞妓さんと風神雷神が一緒に描かれている作品です。本来は、お座敷にいるはずのない風神雷神が、舞妓の傍らにいます。それだけではありません。雷神は逆さまになって浮いているのです。

 

私はまた言いたくなります。「やっぱり、ぶっとんでる」と。是非、ごらんになってみてください。きっとあなたもぶっとびます。

 

 

【書籍紹介】

Modern Japonisme 宇野藤雄 KYOTO 四季の舞妓

著者: 宇野藤雄
発行:クオリアート

宇野藤雄の筆からは、快活で生命力に満ちた形態が生み出される。それは同時に、非常に象徴性の高い考え抜かれた絵画でもあり、伝統的モチーフを奇抜な方法で並置し、詩歌のような文字による書き込みをも画面に収める作風は、大胆な色彩を使った細密かつ濃密な画面構成は必見です。

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