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2023/7/17 10:30

 沼落ち確定!人を虜にする「くま」の料理レシピ本、担当編集に聞いた奇跡の出版ストーリー

7月13日、ちょっとユニークな本が発売されました。その名も『ぼくはくま、特技はせん切りやねん!!!』。著者は「くま」。くまが料理を作り、その手順を解説したレシピ本です。「くまが料理」って、一体どんな本なの? というわけで、発売前からSNSがざわついていた本書ですが、今回は編集担当の横山由佳さんを直撃取材。くまのレシピ本が誕生するまでのストーリーを教えてもらいました!

 

賛否両論、出席者が騒然となった販売部会議

―各方面で話題のくまくんのレシピ本が、ついに発売になりました。まずはどんな本かを教えてください。

↑7月13日発売の『ぼくはくま、特技はせん切りやねん!!!』

 

横山 一言でいうと、Instagramで絶大な人気を誇るくまくんが著者のレシピ本です。愛らしい動きとポージング、躍動感のある写真、おいしそうな料理、そしてしゃべると関西弁!というギャップに、沼入りする人続出なんです。

 

―横山さんは、何がきっかけでこのくまくんを知ったのですか?

 

横山 料理編集部アカウントでInstagramを見ていたら、おすすめに上がってきたんです。「ぬいぐるみのくまも料理するんだ……」と衝撃を受けました。ただ、意外性がありすぎて企画を出しても通せる気がしないし、無理かな~とそのままにしていたんですね。

 

それが去年の夏にくまくんがトウモロコシを食べている動画 を見て、もう可愛すぎてこれは我慢できないと!(笑) ダメ元で企画を出してみることにしたんです。

↑真っ先にくまの虜になった横山さん

 

―とは言え、くまのレシピ本なんて前代未聞かと……。会議での反応はいかがでしたか?

 

横山 それが、編集会議はすんなり通りまして。レシピもしっかりしていて誰でも挑戦しやすいし、他に類書がないし、いいんじゃないか。ただ、著者が人間じゃなくて「くま」だという点だけがネックでした。

 

次なる関門は販売部との会議。普段から全国の書店さんやネット書店さんとやりとりをして、本の売れ行きや動向をチェックしている販売チームの面々が参加する会議です。ここで「売れない」と判断されたら、企画はボツになってしまいます。

 

恐る恐る提案したところ、やはり賛成と反対で喧々諤々となりました。賛成意見としては、固くファンがついている属性の人(くま)を逃すのはもったいない、というもの。当時のくまくんのInstagramフォロワー数は約5万人でしたが、ぐんぐんフォロワー数を伸ばしていたんですね(7月14日現在で12.4万人!) 。しかも、いいねがつく率がフォロワー数の1割という驚異の数字で!

 

一方で、反対の意見は「くまが作るレシピ本」なんて他にないので、書店さんのどの棚に置いてもらうのか想像できない、読者に受け入れられるかも想定できない、賭けのような企画だから慎重に考えたいというものでした。

 

―賛否両論とは言いつつも、ハッキリとは反対されなかった?

 

横山 うーん……どうでしょうか(苦笑)。「くまも面白いけど、普通に人の企画を作ってほしい」という意見もありましたから。ただ、絶対にNG! という雰囲気ではなかったので、ホッとしました。

 

ひとまず、くまくんのライセンス元に確認しないと話が進まないということになり、次なるステップ「くまくんの身元捜し」へと駒を進めることになりました。

 

この子はどこのくま? 決死の身元探索

―くまくんのママさんに聞けば身元はすぐに判明しそうですが、これが難しかったと聞いています。

↑この子は一体どこのくま?

 

横山 もともとは某スーパーのキャンペーン賞品だったらしいのですが、かなり前のものなのでスーパーに当時の担当者がおらず。仕入れ元の会社名だけ教えてもらえました。ただその会社が、一般には連絡先を公開していなくて。しかも本社が海外で、サイトにアクセスすると、突然外国語のページに飛んでしまうという(苦笑)。

 

どうしたものかと一か月くらい足踏みをしていたところ、販売部のスタッフが「あのくまの企画は、いつになったら進められるんですか?」と突然プレッシャーをかけてきまして。通常、販売部からそのような催促が来ることってないんですよ。よくよく聞いてみると、その販売部の担当者は会議の時点でくまくんの大ファンになっていたようで、どうしても企画を進めたかったそうです(笑)。

 

そこで、私のスイッチが再度入りました。血眼になっていろいろなサイトを探していたら、一か所だけECサイトで販売しているところを発見。すぐに連絡をして、ライセンス元の会社と話したいと伝えたところ、連絡先を教えてくださいました。

 

―これでめでたく、身元判明!

 

横山 ……とはいかなかったんです! こちらの写真などを送り、Instagramのアカウントも伝えたのですが、「そのくま、本当にうちの子ですか?」って半信半疑のお返事をいただき(苦笑)。というのも、手に入れた当初と今とでは、見た目があまりにも変わってしまっていたんですね。

↑左が今から5年前のくま。右が最近のくま。確かに毛並みや色が違う……!

 

そこで、くまくんとママさんに東京まで来てもらって、身元確認のためにライセンス会社に出向きました。そこでくまくんの身体検査をした結果、「この子は、うちのくまで間違いありません」と言っていただけました。決定的な証拠となったのは、足の裏。肉球の形がちょっと特徴的だったので、これは間違いないですと。

↑証拠となった足の裏

 

こうして、ようやく身元確認が取れて、最終段階である役員会議まで進める運びとなりました。

 

ちなみに、このくまくんの足の裏エピソードが感慨深すぎて、総扉に足跡を載せちゃいました。

↑無事に書籍を発売できたのも、この足跡のおかげ

 

まさかの社長大絶賛!晴れて出版化が決定!

―最後の砦である役員会議はどうでしたか? なんとなくピリピリした雰囲気を想像してしまいますが……。

 

横山 ここまで苦労して進めてきたけれど、役員会議でNoと言われる可能性も十分あったので、ものすごく緊張して企画&プレゼンをしました。そうしたら、なんと大絶賛で! 社長から「横山さんからこういう企画が出てくるなんて喜ばしいです!」とコメントをいただいてしまいました(笑)。

 

―なんと! 満場一致という感じでした?

 

横山 そうですね、他の役員の方も「面白い企画だね!」と言ってくださって……混乱が起こるだろうと覚悟していたんですが、最後の最後でスルッと企画が通ってしまいました。

↑ミンナ オレノ トリコヤネン!!!

 

今回すごく思ったのが、このくまくんと関わった人はみんな夢中になってしまうということです。いまや料理編集部内はもちろん、販売部、社長や役員、他の編集部にもくまの大ファンがたくさんいるんですよ。しかも、若い女性スタッフだけじゃなくて、40代50代の男性にも熱狂的なサポーターがいます。そして、なんとかこのくま本を盛り上げようと、各方面で尽力してくださっています。なにか人を惹きつける不思議な力があるのかもしれません!

 

こうして、くまのぬいぐるみが著者という他に類を見ないレシピ本は、めでたく発売に向けて動き出したのでした。次回は、通った企画を持ってくまのママさんにアタックしたエピソードをお伝えします。

 

▶くまくんのレシピ本について詳しく知りたい人はこちら!

https://one-publishing.co.jp/boku-ha-kuma/

 

 

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