カレーの伝道師であるハウスが玉ねぎジュースを作ったり、薬草酒の大家である養命酒がクラフトジンを作ったりと、その道のエキスパートによる知見を生かした新分野への挑戦が白熱しています。今回紹介するのもそのひとつ。コーヒー界の至宝、キーコーヒーが初のお酒を生み出したのです。
何よりも気になるのはその味。試飲も含め、開発の背景などを聞きに本社まで行ってきました。
アルコール度数が27%と高めなワケ
インタビューに応じてくれたのは、同社広報チームの井上さくらさん。初の試みをこのタイミングで行ったことには、大きな理由があるとのこと。背景から聞きました。
「当社は1920年創業で、今年は100周年の節目にあたります。いくつかの記念商品やキャンペーンなどを企画しており、そのひとつが『繁栄鍵』です。春は新生活の時季であり、祝いのシーンもありますよね。そういった慶事に寄り添い、繁栄を喜んでいただきたいという想いを込めて、『繁栄鍵』と名付けました」(井上さん)
「カルーア」をはじめ、コーヒーのお酒自体は珍しくありません。でもきっと、キーコーヒーが作るとなれば、ただのコーヒーリキュールではないはず。そこで、どういった特徴があるのかを聞くと“コーヒー屋”ならではの答えが返ってきました。
「味わいで重きを置いたのは、しっかりとしたコーヒー感でした。まずはそのまま、ストレートで飲んでいただくことを一番に想定して作っています。そのうえで最適な苦味、酸味、甘味などを考え、アルコール度数は27%がベストであるという結論に至りました」(井上さん)
度数のイメージは、焼酎が近いでしょう。多くの焼酎はアルコール度数が25%。でも、その上である27%はなかなか高いのではないでしょうか。
「しっかりとしたコーヒーのおいしさを実現するキレを求めたところ、27%が最適という答えにたどり着きました。ご自宅などでゆっくりと寛ぎながら、少しずつ楽しんでいただくイメージですね」(井上さん)
グラスを傾けた瞬間に鼻孔をくすぐる、香りからして高級感あふれるフレーバー。テクスチャーはまろやかで、ボリューミーな満足感も。飲んでみると確かにアルコールは強めですが、トゲがまったくなくてスイっといける、洗練されたなめらかさがあります。そして余韻には、フルーティーな酸味や妖艶なスパイシーさも。
「アルコールだけでなく、原材料にも特徴があります。ベースとなるのは高品質なアラビカ種のコーヒー豆100%を使用したコーヒー。こちらにカカオマス、オレンジピール、シナモンなどを加えることで、濃厚なコクと華やかな風味を生み出しました」(井上さん)
キリっとした味わいを求めるなら、ボトルごと冷やしたり、オンザロックもオススメだと思います。飲んでみてわかったのは、日本酒やワインというよりも、ショートカクテルやウイスキーのような立ち位置であるということ。食事に合わせてワイワイゴクゴクではなく、食前や食後にまったりグラスを傾ける、バーでの楽しみ方に近いといえるでしょう。