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2023/10/15 18:00

海が育んだスコッチ「タリスカー」は燻香と潮の香り漂うオンリーワンのウイスキーだ

世界的なウイスキーブームをけん引する、スコッチのシングルモルト。スモーキーな銘柄が多いアイラ島や、華やかな香味の名酒が揃う”スペイサイド”(ハイランド北東部のスペイ川流域)など、魅力的な6大産地のなかから、今回紹介するのは”アイランズ”の至宝「タリスカー」です。

↑1830年、日本では幕末を迎えた時代に誕生した「タリスカー」。定番がこの「タリスカー10年」で、参考小売価格は5850円(税別)

 

この記事では、同ブランドの限定商品発売に伴うテイスティングセミナーの様子とともに、ブランドの特徴や味わいなどをレポートしていきます。

 

アイランズのスカイ島が生んだ“酒の王者”「TALISKER(タリスカー)」

スコッチ6大産地のひとつであるアイランズ(Islands)は、アイラ(Islay)島を除くスコットランドの北岸から西岸にかけて点在する6つの島々の総称。各島で環境が異なるため酒質の個性も様々で、アイランズモルトの全体的な特徴を語るのは難しいのですが、この多彩さこそがアイランズらしさだといえるでしょう。

↑スコットランド全図のうち、パープルの地域がアイランズ

 

そのなかでもミストアイランド(霧の島)と呼ばれ、荒天時には風も海も激しさを増す海洋性気候の島がスカイ島。このスカイはSky(空)ではなくSkyeと書き、ゲール語で「翼の(形をした)島」、あるいはヴァイキングが使っていた古ノルド語の「雲の島」が由来という説もあります。

↑絶えず海からの潮風に吹かれ続けるスカイ島。実にファンタジックでかっこいい名前ですよね

 

そんな同島において最も歴史が長いウイスキーの聖地が、タリスカー蒸溜所。ロッホ・ハーポートと呼ばれる入り江にあり、「TALISKER」と書かれた白亜の壁面と紺碧の屋根のコントラストが特徴です。

↑タリスカー蒸溜所。なお「Talisker(タリスカー)」とは、古ノルド語で「傾いた大岩」を意味する「Thalas Gair」が由来だといわれています

 

荒々しい海と共存し、雄大な自然と対話し続けてきた「タリスカー」のコンセプトは「MADE BY THE SEA」。表現されるテイストも海を感じさせる世界観で、ほんのりただよう潮の香り、ふくよかな甘みと力強いスモーキーさ、そして黒胡椒を思わせるスパイシーな余韻が特徴と評されます。

↑蒸溜所では形状の異なるポットスチルを計5基使用。ラインパイプの形や蒸気の冷却法などに独自の機構が採用されているのも特徴です

 

こうした味わいの魅力は、『宝島』や『ジキル博士とハイド氏』で知られる英国の文豪・スティーブンソンが”KING OF DRINKS(酒の王者)“と称賛したほど。筆者もあらためて、定番の10年からテイスティングさせてもらいました。

 

味わえばわかる、独自の個性と説得力のあるおいしさ

香りは、甘くエレガントなタッチのあとにビターオレンジのような柑橘感、そしてたくましい燻香と潮風のようにブルージーなニュアンスが印象的。口に含むとモルトの力強い味わいとスモーキーな風味が押し寄せ、かすかにスパイシーなフレーバーも。ワイルドな個性がはっきりしていながらもマニアックにはならない、説得力のあるおいしさです。

↑アルコール度数は45.8%と比較的高め。少量の水を加えると、フルーティーな香味が開いていっそう優雅に

 

この独特なエレガンスをより感じるなら、仕上げに粗挽きの黒胡椒をあしらうスパイシーハイボールがオススメ。ピリッとしたキャラクターがくっきりと立ち、甘香ばしい個性を存分に楽しめます。

↑スパイシーハイボールも美味。ペアリングは海の幸なら燻製のカキやサーモン、肉料理なら炭焼きのラムやビーフなどを塩味でいただくとバッチリ合うと思います

 

今回のセミナーの主役は、2023年8月23日から数量限定で発売されている「タリスカー 11年」。こちらは、ただの11年ものというわけではありません。極少量の希少な原酒を採用し、さらにカスクストレングス(加水をせず、樽出しそのままのアルコール度数)でボトリングされているため、アルコール度数55.1%と力強い厚みに仕上がっています。

↑「タリスカー 11年」。1万5000円(税別)で、ボトルにはかつて蒸溜所近くの海が激しく荒れたとき、深海から現れ魅惑的な光で暗闇を照らしたとされる伝説の巨大クラゲが描かれています。じつは、伝説をテーマとした企画は今回が第2弾で、2022年の第1弾では海の聖獣・リヴァイアサンをモチーフにした「タリスカー 8年」が発売されました

 

また、ファーストフィル(初のスコッチ熟成に使う。セカンドフィルやサードフィルよりも樽の影響が強い)のアメリカンオーク樽を主に熟成させた、ボリューミーな香りも特徴となっています。こちらも味わってみました。

 

「タリスカー 11年」はカスクストレングスらしいボディの重厚感があり、それでいてトゲはなくスムース。ドライアップルのような上品な甘みと、心地よいスモーキーフレーバーが調和し、潮や黒胡椒のタッチも感じます。モルティでリッチなニュアンスも長く続き、実に贅沢な気分に。海が見えるロケーションで飲んだら最高ではないでしょうか。

 

「11年って珍しくない?」その理由を訊いた

セミナーでは「ご自由に質問を!」とのことで、聞いてみました。ひとつは、エイジングの期間としてはなかなか珍しい11年熟成にした理由について。なおウイスキーにおけるエイジドは、11年の場合最も若い原酒が11年ものであるという意味です。

↑解説してくれたのは、MHDシングルモルト アンバサダーであり、ウイスキー文化研究所認定のウイスキーエキスパートのロバート・ストックウェル(通称ボブ)さん

 

「11年となった一番の理由は、10年よりもう少し厚みがほしかった、でも12年までいってしまうと過剰熟成になってしまう懸念があったからです。その点ではタリスカーらしさも重視しました。独自の輝きを、樽の個性でマスクしないように調整した最適解が11年だったということですね」(ボブさん)

 

質問はもうひとつ。カスクストレングスにした狙いについても聞きました。

 

「スペシャルリリースでは、以前からカスクストレングスを採用しています。やはりカスクストレングスは原酒の個性をダイレクト表現できますし、価値も高いですから。また、ストレートはもちろん加水したりハイボールにしたりといった多様的な飲み方をより試しやすいとも思うんですよね。好みに合わせた楽しみ方を探っていただきたいと考えています」(ボブさん)

 

なお「タリスカー」はほかにも限定商品をリリースしており、2023年の9月には「タリスカー ワイルダー・シーズ」が登場。こちらは同ブランドの海洋保護パートナーであるPARLEYとコラボレーションしたモデルで、1本購入されるごとに「タリスカー」がPARLEYに3ポンド(約500円)を寄付し、直接的に海洋保護活動が支援できるモデルです。

↑「タリスカー ワイルダー・シーズ」は9900円(税別)で、アルコール度数48.6%。クリーンな第二世代バイオディーゼル燃料で製造した、100%リサイクル素材を使用したボトルを採用していることもポイントです

 

9月22日から3日間、六本木ヒルズで開催された限定イベントで日本初お披露目となった本商品。「タリスカー」で初めてフレンチオークのXOコニャック樽で熟成させていることが特徴です。

↑こちらもテイスティングしてみました

 

香りは、干しぶどうや洋なしを思わせる甘やかなアロマが感じられ、芯のある堂々としたスモーキーフレーバーと調和。はちみつを用いたビスケットのような香ばしい甘みも印象的で、このたくましいエレガンスはさすが「タリスカー」です。

 

あらためて実感するのは、「タリスカー」は唯一無二の存在であるということ。荒々しい環境のスカイ島のなかでも海の影響を直接受けやすい場所に蒸溜所があり、だからこそ潮の香りやスパイシーなニュアンスが個性として光るウイスキー。海を愛するお酒好きの人には、特に知ってほしい名酒です。