生成AIは、今では多方面で重要なツールとなっている。ここからは、ビジネスシーンにおいて取り入れるべきサービスと、その使いこなしを解説していく。まずは、生成AIのコンサルタントに生成AIの現状と、ビジネスパーソンが知っておきたい”付き合い方”について聞いた。
【この方に聞きました】
株式会社ピネアル CTO生成AIコンサルタント
藤田 拳さん
AGC株式会社で機械学習を応用した次世代デバイスの研究開発に従事した後、ピネアルのCTOとして生成AI事業をスタート。マーケティング領域で生成系AIを利用したシステムを開発し、クライアントのDX・AI活用の教育・支援も行っている。
生成AIの普及はどのように進んだのか?
データを学習し、それを元に新たな文章や画像、映像などを作り出す生成AI。近年になって一躍脚光を浴びているが、まずはその変遷について教えてもらった。
「代表的な生成AIのひとつであるChatGPTも公開当初は、企業にとって“使えない”と評価されていました。AI自体の能力が問題なのではなく、アメリカのOpenAI社が開発したChatGPTを使うために海外のサーバーにアクセスすることが、情報漏洩の観点から懸念されたのです。生成AIツールを自社で開発することで、安全に生成AIを利用するケースも多く見られました」
一方で、個人ユーザーの反応は対照的だったという。
「個人レベルでChatGPTを積極的に使っている人たちからすると、会社で使える生成AIはChatGPTと比べて性能や機能が劣ることが多く、違う意味で使えませんでした(笑)」
その後AI側の進化と、ユーザーのリテラシー向上により、徐々に生成AIは浸透していった。ただし、技術的な課題も残されていたと藤田さんは振り返る。
「2025年前半まではハルシネーション(生成AIが誤った結論や情報を生成してしまう現象)があったのも事実です。しかし、2025年8月にリリースされた『ChatGPTのGPT-5』では、セキュリティやリテラシー、ガバナンスの課題がクリアされました。OpenAIと提携しているマイクロソフトが開発したCopilotにもGPT-5と同じモデルが搭載され、一気に生成AIの普及が進みました」
そして現在、生成AIは新たな段階に入ろうとしている。
「OpenAIは2025年12月に『GPT-5.2』を公開しましたが、実際に使ってみると、明らかに私自身より賢いと感じました。AIは2026年中に全人類の知能を上回るとも言われています」
■生成AIの変遷
2022:爆発的普及の幕開け
11月にChatGPTが一般に公開され「テキストを入力するだけで回答や画像が得られる」という体験ができるように。AIが「全人類のツール」へと変わった瞬間だった。
2023:性能向上と企業導入
AIの知能が飛躍的に向上し、複雑な推論やプログラミング、司法試験などの専門試験を突破。企業の業務効率化ツールとしての実用性が証明された。
2024:マルチモーダル化
AIが「見る·聞く·話す」をシームレスに行えるように。「Sora」などの動画生成技術の劇的な進化により、クリエイティブ業界に激震が走った。
2025:論理推論とエージェント
ただの「次に来る言葉の予測」から、人間のようにじっくり考えてから回答するモデルへと進化。DeepSeekなど安価で高性能なモデルが市場を席捲した。
2026(予測):自律型エージェントの日常化
自律型AIエージェントが実務(メール返信から事務処理まで)を完結するように。AI特化型デバイスや人型ロボットへの統合も進んでいく。
2027(予測):AGI(汎用AI)への接近
AIが自らのコードを書き換え、より効率的なモデルを設計する「自己改善」が加速すると予測。人間と区別がつかない汎用的な知能(AGI)の是非が議論の中心に。
生成AIを例えるならば「超頭の切れる新入社員」
次に、実際に生成AIをどのように活用していけば良いのか? その詳細を聞いた。
「全人類より賢いAIがいるなら人間なんか要らないんじゃないか? と思ってしまいますが、それは違います。私は生成AIのことを『超頭の切れる新入社員』と例えています。ものすごく賢いのだけれど、経験がないのでどんな仕事すれば良いのかわからない。生成AIをこうとらえると、その使い方も見えてきます」
藤田さんは「ヒューマンインザループ」という考え方を強調する。「AIを使うのは誰かというと、人間なわけです。賢いAIがいるなら、何をやらせれば良いのかを人間が決めます。例えばピネアルが開発したSEO(検索からのアクセスを増やす施策)記事自動執筆ツールの『UPRESS(アップレス)』で記事を書かせる場合、どういう記事が必要なのかをまず人間が考え、指示をアップレスに与えます。そこでAIが情報を学習して記事を作成しますが、この記事の出来は人間が判断します。修正が必要な場合、その修正の道筋をまた人間が指示する。プロセスの各所に人間が関わるのが、ヒューマンインザループです」
こうした例を踏まえて、藤田さんは人間とAIそれぞれの役割の違いを指摘する。
「人間が記事作成などの作業を行う際に、面白い記事にするための判断を暗黙知でやっていますよね。AIにはそれがないから人間が関与するわけです。生成AI全盛時代になっても、人間がやるべきことは残ります。AIに複数の企画案を出させることはできますが、どれを採用するかは人間が決めることです。資源は有限なので、最後の取捨選択の判断は人間が行うことになると思います」
具体的な使い分け方法は何か。
「AIには、調査させること、考えさせること、そしてアウトプットを任せ、それ以外は人間が行うのが有効なAIの使い道です。AIに自分の仕事をやらせてみて、どこまでできるのかを知っておくことが第一歩になります」
本文でも紹介したように、ChatGPTが一般公開された2022年11月から本格的な生成AI時代が到来したと言える。その後の進化は著しく、特に2025年には「ツール」から「主体的に動く」という躍進を果たしている。

例を交えながら生成AIの活用法を説明
ピネアルが行ったパナソニック エレクトリックワークス社での研修に用いた資料の抜粋。マイクロソフトの生成AI・Copilotを例に、頭は切れるが意思はない生成AIに対して、インプットする前提の内容など、生成AIをどのように活用するのかを解説している。



押さえておきたい生成AIサービス
どのようなサービスを取り入れれば良いのか、藤田さんに具体的なサービス名を挙げてもらった。
「仕事で使う画像を探すなら、生成AIに依頼するのが便利です。その際に『著作権フリー』などの条件を加えれば、望みの画像が簡単に入手できます」
動画生成ツールの活用例も紹介してくれた。
「無料AI動画生成ツールのミッドジャーニーも面白いと思います。この動画は、私の著書がアマゾンでカテゴリー1位になったときのバナーで、バナー自体はデザイナーが作ってくれたのですが、それをミッドジャーニーで動画化しました。どこを動かすのかはミッドジャーニー自身が判断しています」
業務効率化に役立つツールとして挙げたのがNotebookLMだ。
「NotebookLMのスライドを作成できる機能も使ってみてください。答えを出す際に社内のルールを入れておけば、その範囲内で答えてくれて、ビジネスの効率化に役立ちます」
最後に、藤田さんはこうアドバイスする。
「まずは身近にある生成AIを使ってみることから始めてみてください。生成AIがどういうものか感覚をつかむのがオススメです」
仕事で活用しやすい生成AIの例

1.グーグルのGeminiを使った画像検索のプロンプト(AIに与える指示)の例。プロンプトに応じて提案された画像を確認し、さらに指示を与えて、求める画像の精度を高めていく。

2.藤田さんの著書「マーケ領域で実践されている生成系AIの技術」の広告画像。本来は静止画像だが、AIを利用すれば左の月桂冠マークを回転させた動画も生成することができる。

3.いくつかの指示で高度な記事を生成する記事自動執筆ツールのUPRESSで作成した「iPhone 17とAI」記事のタイトル回り。作成した記事からNotebookLMが生成したものだ。
※「GetNavi」2026年4月号に掲載された記事を再編集したものです。