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2016/4/15 15:22

【徹底レビュー】ソニーとテクニクス、予約殺到の人気レコードプレーヤーを聴き比べ!

アナログレコードは、デジタルオーディオ全盛でハイレゾ音源が着実に普及している現在も、熱心なファンが存在しているアイテムだ。CDが登場した1982年以降、急激に売り上げを落としCDが主流となったが、ファンクやダンス・ミュージックに端を発するDJブームの隆盛により、若者にもアナログレコード再生の文化が波及。DJスタイルのレコード演奏に欠かせないアナログプレーヤーも愛好者が増えていった。

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国内でもアナログレコード針が増産になるなか、以前からアナログプレーヤーを生産していたデノンなどに加え、ティアックからもUSB出力可能なアナログプレーヤー「TN-570」が発売されるなど、ハードウェアも充実してきている。

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↑ティアック「TN-570」

こうしたブームは、デジタルオーディオに対するアナログ再生の魅力が再発見されたものと言える。ハイレゾ音源の普及で、アナログ音源の本質的な音の良さも見直され、趣味の音楽再生として楽しむ人が増えていると思われる。

 

多くのアナログファンは、若い頃にアナログレコードを楽しんでいた50歳以上の中高年層が大半を占めるが、若者にも着実に波及してきている。インターネットオークションでの取引や、中古レコード店なども健在であり、ソフトの入手にも困らないため、まったくアナログを知らない世代でも入りやすい環境が整っていることも原因だろう。

 

音楽の主流はデジタルソースで、多くの人は定額制の音楽配信を利用し、音質にこだわる人がハイレゾ音源を購入する流れに影響が出るほどの規模ではないが、レコード盤に針を落とすなどの手間、設置や調整、カートリッジ交換といったグレードアップで顕著に音が変わる面白さ、こうしたデジタルにはない趣味性は今後も静かなブームとして継続するものと思われる。

 

今回は、アナログブームの再燃の象徴ともいえる2台の人気レコードプレーヤーをご紹介する。ひとつは、発売前に予約が殺到し一時供給不足になったソニー「PS-HX500」。もうひとつは、予約開始からわずか30分で限定300台が完売になったテクニクス「SL-1200GAE」だ。

 

レコードをハイレゾ録音できるソニー「PS-HX500」

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ソニーのPS-HX500は、ベルトドライブ方式(モーターの回転をゴムベルトを通じてターンテーブルに伝える方式)シンプルなアナログプレーヤー。実売価格は6万5880円だ。カートリッジ(MM型)は固定式でカートリッジ交換などは行えない(針交換は可能)。機能的にはシンプルだが、ターンテーブルに極厚のゴムシートを採用し、ボディも30mm厚の高密度MDF合板とするなど基本的な音質を向上。独自の偏心インシュレーターを採用している。

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大きな特長は、フォノイコライザー(レコードから再生した音を増幅・調整する回路。レコード再生に必須)を備えており、フォノイコを持たないアンプやミニコンポとの接続が可能なこと。また、USB接続でデジタル出力でき、しかも192kHz/24bitやDSDでデジタル録音が可能なソフトも無料提供されている。このため、初心者だけでなく、コレクションしていたアナログ盤のデジタル化をしたいという人にも適している。

 

6万円台という比較的安価なモデルだが、ボディの作りはしっかりとしていて、見た目の質感も良好。音は落ち着きのある大人っぽい印象で、ゆったりとしたサウンドが特徴的。平井堅「ミラクルズ」を聴いたが、声の定位は明瞭で存在感のある音になる。力強い声なのに、耳当たりは柔らかく、アナログ再生らしい感触がよく出ている。中域の密度感や声の張り、強弱をしっかりと鳴らす充実したサウンドは、デジタルとはひと味違う感触だ。

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付属のPC用ソフト「Hi-Res Audio Recorder」を使ったデジタル録音では、192kHz/24bitやDSDでの録音ができる。DSD録音ができるPCMレコーダーはかなり高価なので、せっかくのアナログレコードを高音質でデジタル化したいという人にはお買い得。ノイズの除去機能はなく、機能的にはシンプルだが、曲の分割などの編集、曲名などの入力などはひととおり行える。DSDで録音した音は、元の音源の良さがきちんと残っており、劣化感などは感じない。デジタル再生でもアナログの感触を楽しめるのは大きな魅力だ。

 

【鳥居’s チェック】
チャンネルセパレーション 3
音の密度感 4
ダイナミックレンジ 4
機能性 4
利便性 5
お買い得度 5
総合 25

 

30分で完売となった限定300台のテクニクス「SL-1200GAE」

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テクニクスSL-1200GAEは、同社が世界で初めて量産化したダイレクトドライブ方式(モーターの回転を直接ターンテーブルに伝える方式)のアナログプレーヤー。実売価格は33万円前後。SL-1200シリーズの後継モデルだが、DJスタイルのレコード再生用ではなく、純粋なオーディオ用として開発。ダイレクトドライブ方式の音質的なメリットをさらにブラッシュアップし、現代のオーディオにふさわしい性能と音質を追求した高級モデル。

 

ダイレクトドライブ・モーターは新開発で、ブルーレイディスク用のモーター制御技術を投入して、高精度・高安定のモーター駆動を実現。ターンテーブルはアルミダイキャストに、真鍮のウエイト、制振用ラバーの3層構造を採用する。ボディもアルミダイキャスト、BMC、ゴムベース、10mm厚アルミトップパネルの4層構造とするなど、高剛性化を高め、耐振性を高めた作りとなっている。

↑重量感のあるターンテーブル
↑重量感のあるターンテーブル

300台限定となるSL-1200GAEの特徴として、トーンアームのパイプをマグネシウムとし、インシュレーターの内部には特殊なシリコン樹脂「αGEL」を採用するなどグレードを高めている。このほか、シリアルナンバー入りのプレートが装着されている。

 

製品はカートリッジは付属しておらず、好みのカートリッジを別途購入して装着する。機能的には、最大±16段階のスピード調整など、SL-1200シリーズの機能を継承。このほか、33 1/3回転、45回転のほか78回転にも切り換えが可能。

 

実際に機体を手にすると、その重さにびっくりする。ボディは頑強そのもので、組み立ては大変だが、信頼感は素晴らしい。見た目はSL-1200なのに従来の実用機的な安っぽさはまったくなく、価格以上にしっかりと作り込まれていると感じる。

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カートリッジはオルトフォン「2MBlack PNP」を使った。マイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」を聴いたが、その力強い音と出音の勢いの良さに感心。そこに本人が居て演奏しているような実在感のあるリアルな音が出た。トランペットの鳴り方は緊張感たっぷりの抑えた音から、力強く吹いたときの勢いやエネルギー感など、表情が豊かに出る。音場感もしっかりと再現できており、SACD盤と聴き比べても遜色がなく、アナログらしい密度感や反応の良い音の良さがはっきりとわかる。

 

ドボルザークの交響曲「新世界より」では、オーケストラのスケール感を雄大に再現。各楽器の音色はリアルに再現され、一斉に鳴らすときの混濁感もほとんどない。デジタルオーディオの精密な描写とは感触が違うが、音の勢いや力強さなど情感がよく伝わる音だ。比較的新しい録音の平井堅「ミラクルズ」は、声の吐息や歌い方の変化が実に生々しく再現される。エネルギー感もしっかりと出ている。

 

決して安価なモデルではないが、33万円という値段は決して高くない。同価格帯のアナログプレーヤーの中では群を抜いて出来が良い。これ以上の価格であることも珍しくないハイエンド級のアナログプレーヤーと十分に渡りあえる音が出る。アナログ的な柔らかい感触で、懐かしいムードは一切無く、凄みのある音が出る。昔のイメージを覚えている人は驚くだろう。アナログレコードの本当の音を引き出したその実力は本物だ。

 

【鳥居’s チェック】
チャンネルセパレーション 5
音の密度感 5
ダイナミックレンジ 5
機能性 4
利便性 3
お買い得度 4
総合 26

 

【URL】
ソニー http://www.sony.co.jp/
PS-HX500 製品情報 http://www.sony.jp/audio/products/PS-HX500/
テクニクス http://jp.technics.com/
SL-1200GAE 製品情報 http://jp.technics.com/products/1200gae/