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2022/7/22 18:00

「町中華で飲ろうぜ」の玉ちゃんが“カッテぇ緑ハイ”を飲る噺

「町中華で飲ろうぜ」(BS-TBS 毎週火曜日22:00~23:00放映)でもおなじみの玉袋筋太郎さん(以降は玉ちゃん)に、今回は「町中華飲み」の楽しみ方を伺うべく、谷中(東京・台東区)の「一寸亭(ちょっとてい)」でお話を聞きました!

 

玉袋筋太郎(たまぶくろ・すじたろう)/1967年西新宿生まれ。1987年にお笑いコンビ「浅草キッド」を結成し、TVやラジオなどのメディアで活躍する傍ら、演劇の監修や「一般社団法人全日本スナック連盟」の設立、「スナック玉ちゃん」の運営など活動の幅を広げている。出演や連載はBS-TBS「町中華で飲ろうぜ」、TBSラジオ「たまむすび」、TOKYO MX「バラいろダンディ」、夕刊フジ「スナック酔虎伝」、GetNavi web「玉袋筋太郎の万事往来」など多数。

 

※本稿は、もっとお酒が楽しくなる情報サイト「酒噺」(さかばなし)とのコラボ記事です。

 

もともとはお酒が嫌いだった

玉ちゃんといえば、町中華以外にも「一般社団法人全日本スナック連盟」の会長を務めるなど、飲み歩きの伝道師でもあります。まずは「町中華で飲ろうぜ」でおなじみの“気道確保”からの“大人の義務教育(ビール大瓶)”でのどを潤しつつ、お酒との出合いやエピソードを聞きました。

↑この日も「気道確保でパイプを洗浄!」とまずは、 ビールの大瓶(633ml)をオーダー。小中高の6・3・3(ロク・サン・サン)=「大人の義務教育」というわけです

 

「うちは両親がスナックやってたのよ。その前は雀荘でね。当時は中学生で思春期だったから嫌な思い出ばっかりでさ、店で酔っぱらう客もいたし。だから未成年のときは『絶対に酒は飲まねえ』って思ってた。

でも昔は芸人の世界といったら、飲むのも仕事なわけよ。それに最初はうちらも劇場とかで営業しつつ、浅草ビューホテルの脇にあったスナックでも働いててね。で、社長から『お客さんの横について一緒に飲んで来い』なんて言われて飲まされてさ。お客さんから可愛がられてチップをもらえることもあったんだけど、それはしっかり没収されて(笑)」

 

アルバイト先ではウイスキーや焼酎の水割り、チューハイをよく飲んでいたと言います。

 

「そりゃあ下町・浅草だから、焼酎っつったら甲類ですよ! まあでも貧乏だったから、自分のお金で飲むことはなかったね。ただバブルの時は、たまにお金持ちのお客さんとかに連れてってもらって、いい酒飲んだこともあったよ。そんなこんなで、本来は酒に強くないし嫌いだったんだけど、皆と飲むようになってだんだん好きになっていったの」

 

思い返せば、お酒は嫌いだったものの大人への憧れはあったのだとか。それは、青春時代を過ごした地元の「新宿西口・思い出横丁」などを楽しそうに闊歩する大人を見て育ったからかもしれないと、玉ちゃん。「ガキのころに見た、完成形のおじさんたちからしたら俺なんてまだまだ。今も目指してるよ」と、はにかみます。

 

身内で助け合いながら営む町中華にシビレる

いまや玉ちゃんのライフワークともいえる町中華。では、「町中華飲み」に目覚めたきっかけは?

 

「親父だね。子どものころ、二日酔いの親父が千駄ヶ谷のプールによく連れてってくれてさ。親父は酒を抜くための水風呂感覚で行ってたんだろうけど、泳ぎ方はちゃんと教えてくれたの。で、帰りに大久保にあった『日の出』って店に寄るのがお決まりのコース。それが原体験だよね」

↑2016年に出版された『サニーデイ・サービス 田中 貴 プロデュース ラーメン本 Ra:』の対談で玉ちゃんが登場しているシーン。このロケ地が往年の「日の出」です

 

当時の玉ちゃんがよく食べたのはチャーハン。お父さんはビールとつまみで楽しんでいたのだとか。その「日の出」に通うなかで、自然と町中華の魅力が染みついていったと言います。

↑「一寸亭」の「チャーハン」(750円)

 

「『日の出』は近所だったから、そこの家族のことも知ってるよ。お店は夫婦ふたりで切り盛りしててさ、当時は忙しいのに出前もやってたんだよね。今みたいなプラ容器じゃなく陶磁器を使ってたから、重いし回収もあるしで大変だったと思うけど。でもそうやって身内で助け合いながらやってるってところにシビれちゃうっていうか。だから町中華が好きなんだよね」

 

「町中華で飲ろうぜ」ではしばしば、玉ちゃんが“黒帯”と呼ぶ各店の常連さんが顔を出します。そこには、前述した憧れの大人への敬意が込められているそうで。

 

「一応、スナックのほうでは俺も黒帯を作ってもらったんだけどね。でも自分としてはまだまだ修行中だから、いつか“黒帯”みたいになりたいって常々思ってるわけ」

 

↑番組では「町中華の黒帯」と呼ばれる玉ちゃんも本人的にはまだまだ修行中のとのこと。ちなみにこの黒帯は「スナック」のものだとか

 

そんな玉ちゃんが普段、町中華で飲む際のルーティーンを聞くと、最初は気道確保でビールの大瓶。メンマやザーサイなどをアテにしつつ、次は点心に食指が動くそう。そして2杯目以降は焼酎の緑茶割り(緑茶ハイ・通称:緑ハイ)やチューハイ、紹興酒や日本酒を楽しむのだとか。

 

「メンマやザーサイは、お通しで出てきたら最高だよね。次は餃子なんだけど、歳とってきたから割りと重くてさ。だから最近はシューマイを頼むことも増えてきたかな。で、その次はレバニラとか、もやし炒めとかね。前の日のダメージが残ってるときは、もやし炒めが沁み渡るわけよ」

↑「シューマイ」(680円)

 

↑「レバニラ炒め」は850円

 

そして、シメの定番はワンタン。番組では収録後にスタッフと一緒に食べるため麺類を注文することもありますが、プライベートのひとり飲みの際はワンタンの量がちょうどいいのだと言います。

 

「たまにラーメンが恋しくなることもあるんだけど、食べるならシンプルなラーメンだね。あの味がその店のグリニッジ天文台だから。標準時ってやつよ。まあ、ここの『モヤシソバ』みたいに名物の麺メニューがある場合は、話は別だけどさ」

 

「カッテぇ」のルーツとは?

「町中華で飲ろうぜ」でもおなじみの「カッテぇ!」というパワーワード。これは、アルコールが濃いことを「硬い(カタい)」と言う玉ちゃん独自の表現。番組では緑ハイやチューハイを飲んだときに「硬い=カテぇorカッテぇ」などキメ台詞として使われます。その謂れはどこから来たのでしょうか?

 

「あれは内山くん(内山信二さん)と柴又で飲んだときに彼が言っててさ。それ聞いて『カテぇ』ってイイなと思ったの。でも、この前『町中華で飲ろうぜ』のスペシャルに松岡くん(TOKIOの松岡昌宏さん)が出てくれたとき、衝撃の事実が判明したのよ。実は松岡くんが『カテぇ』と言ったのを、内山くんがマネしたんだって。だから俺は孫だったんだよ(笑) 」

 

そして玉ちゃんは、満を持して「焼酎緑茶割り」をオーダー。

 

↑「焼酎緑茶割り」(500円)

 

「来ましたよ! でもこれはそこまでカタくないんじゃないかな。ほら、色がいい感じに濁ってて“沼(ぬま)”みたいでしょ? これは緑茶が多めだからなの。うん、ならこの沼の水は俺が全部抜いてやろうじゃねぇかっ……お、でもまあまあカテぇ~!」

 

聞けば、玉ちゃんが緑ハイをはじめとするチューハイ類を飲むときは、氷抜きでオーダーするのがポイント。そこにはふたつの理由がありました。

 

「まあひとつは俺も歳だからさ、あんまり体を冷やしたくないのよ。あとはやっぱり濃さだよね。このウマさが薄くなったらもったいないじゃん。だって甲類焼酎といえば宝でしょ。ここの緑ハイもクリアながらコクのある宝焼酎だから、安定で安心のウマさなんだよね……っつうわけで、緑ハイおかわりください。もちろん氷抜きで。あと、もう少し濃いめでもいいよ!」

 

そうして到着した緑ハイは、玉ちゃんのお望み通りにいっそうカタくなっている模様。

 

「うぉ! おいおいこりゃあ〜手加減なしじゃねーか! 見てくれよこの色! 焼酎が多いからクリアになって沼がキレイに浄化されたねぇ。でも味はめっちゃくちゃカッテぇー!」

 

 

「これこそまさに“カタい”緑ハイ! この世にダイヤモンドより硬いものはないなんて言われてるけど、あったわ。それがまさに焼酎の“宝”よ! じゃあその宝石はなに? って聞かれたら、そりゃもうこのキレイな色はエメラルドだよね~」

 

いい飲み屋とは、いい人が集まる店のことである

番組は2019年4月にスタートし、4年目を迎えました。これまで様々な町中華の名店を訪れた玉ちゃん。思い出に残っているお店はどちらでしょうか?

 

「いや~、ありすぎて絞れないよ。やっぱりどこ行ってもウマい酒とつまみと、面白いストーリーがあってさ。なかには閉店しちゃったお店もあるわけで、それは悲しいよね。でも、人と人との心の触れ合いがあるから儚(はかな)さもあって。それも町中華の魅力なんだよね」

 

町中華は昭和の遺産であり、それはスナックも同様だと玉ちゃんは熱弁します。

 

「俺が連盟を立ち上げた2014年時点でも、スナックは全国に10万軒ぐらいあったのよ。だから昭和の時代はもっと多かっただろうね。ただ、高齢化とか後継者不足に加えてコロナもあったから、今は6万軒ぐらいにどんどん減っちゃってさ。でもだからこそもっと頑張ろうって思うわけ。町中華も、もっともっと盛り上げるよ!」

 

町中華にスナックにと、飲み屋を愛する玉ちゃんは、ほかにどんなお店に行くことが多いのでしょうか?

 

「やっぱり居酒屋とか焼き鳥屋が多いかな。ホルモン酒場も好きだよ。街は中野や荻窪、あとは『スナック玉ちゃん』がある赤坂も多いよね。ひとりで飲むときは、意外かもしれないけど静かなもんよ。でも仲がいいとこなら、店主や女将さんとはしゃべるかな」

↑「一寸亭」の二代目、大塚真也さんと

 

持ち前のユーモアや人間力で、すぐにお店の人と打ち解ける玉ちゃん。ただしそれは勢いやノリに任せるのではなく、店内の雰囲気や相手の表情を推し量りながら馴染ませるように距離を縮めていくのがコツなのだとか。

 

「なんとな~くプロファイリングしていくのよ。で、徐々に俺の要素を溶かして最後は飽和水溶液にしていくってわけ。そのためにはじっくり観察することが大切。“ファスト映画”みたいなのじゃなくて、『ゴッドファーザー』だったらパート1からしっかり観ないとね。まあ、そうはいっても今はファストな時代だから、俺はそこをわかりやすいように伝えていきたいと思ってるの」

 

最後に、「玉ちゃんにとってのいい飲み屋とはどんなお店なのでしょうか?」と聞くと「一寸亭」を例に挙げて教えてくれました。

 

「一番は人だよね。ここは初代のパパと二代目の坊ちゃんが仲よくてさ、従業員さんも来店するお客さんも素晴らしい。もちろん腕がいいからどんな料理もウマいし、『モヤシソバ』なんて名物もある。おまけにカッテぇ緑ハイもそろっててさ、ここは理想的だよね」

↑一寸亭の名物「もやしそば」(850円)

 

谷中は、本郷台地と上野の台地に挟まれた谷合の低地。この町に1973(昭和48)年、今も現役の初代・大塚貞夫さんが「一寸亭」を創業しました。玉ちゃんは、この地にどっしり構えた同店は魚礁(ぎょしょう)であり、魚を獲る船でもあるといいます。

 

「お腹をすかせた、いろんな種類の魚が集まってくるわけよ。で、それをちょっと捕まえる“ちょっと艇”。最初は一寸法師みたいに小さな存在だったのかもしれないけど、もうお椀じゃないよね。それはそれは立派ですよ」

 

町中華の多くは老舗であり、つまりは愛され続けた名店である証拠。おいしいお酒におつまみと、素敵な人が集まる地域の社交場・町中華で、今日は一杯飲りませんか!?

 

 

<取材協力>

一寸亭

住所:東京都台東区谷中3-11-7
営業時間:11:30~20:00
定休日:火曜日

※価格はすべて税込みです

※営業時間等に関しましては、店舗にお問い合わせください(取材日:2022年6月11日)

 

撮影/鈴木謙介

 

記事に登場した商品の紹介はこちら▼

・宝焼酎
https://www.takarashuzo.co.jp/products/shochu/takarashochu/

 

<INFORMATION>

町中華で飲ろうぜ

どの町にもある、メシがあり、ツマミもあり、酒も飲める、昭和な町中華……。そんな一人でも大勢でも気楽な店「各町の中華料理店」に、町飲み大好きな玉袋筋太郎がブラリと訪れます。また後半は、女性版「町中華で飲ろうぜ」!ゆったり楽しめる、メシ&飲み&おしゃべり番組です!

毎週火曜日よる10時〜
BS-TBSで放送中

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