デジタル
2018/9/19 17:59

フランスの「モノ作り」に地殻変動。パリ13区に出現した広大な施設「Station F」とは?

「フランス国内から次世代のGoogleを生み出し、生き残っていくために全力を尽くす」

 

2013年11月、パリで新しいスタートアップ支援策の「フレンチテック(La French Tech)」が発表されました。フランスを“デジタル共和国”にするため、政府が主導するという形で誕生したこの国家プロジェクト。テクノロジー産業の次の巨人を作るというモットーのもと、目覚しいスピードで進行しています。

最初の1年間で国内のテクノロジーエコシステムを整備すると、15年にはギアを一段アップ。ヴァルス内閣で当時の経済・産業・デジタル相だった現エマニュエル・マクロン大統領が、フランスのスタートアップを世界各国の主要テクノロジーハブとつなぐ、新しい「エコシステム」の構築を発表しました。現在もフランスはスタートアップ企業と起業支援団体間のネットワーク形成に向け、精力的に取り組んでいますが、そんななか17年6月に誕生した「Station F」はフランスのスタートアップ支援事情を語るうえで欠かせない存在です。

 

Station Fは、パリ13区にかつて存在した3万4000平方メートルもの広大な旧鉄道車庫を利用してつくられた世界最大級のインキュベーション施設。仏インターネット通信大手グループ「Iliad」の創業者で著名な投資家でもあるグザヴィエ・ニール氏が出資し、厳正な審査を通過した1000社を超えるスタートアップ企業が利用しています。

施設の創業パートナーとして支援を行う企業にはFacebookやAmazonなどアメリカのIT大企業が名を連ね、共同のワークショップスペースには3Dプリンターやレーザーカッターも完備。ここでは開発製品などの試作ができ、施設は365日24時間利用可、シャワーやロッカールームまでもが用意されているという手厚さです。

海外企業や投資家も注目

Station Fの大きな特徴のひとつは、従来のインキュベーション施設の多くが大学の研究機関との提携、共同開発を行うプラットフォームであったことに対し、国内外の起業家に広く門扉を開いているところ

 

そのため、海外起業家からの注目度も高くStation Fでは英語が共通語なので、入居者はフランス語が話せる必要はありません。アメリカやイギリス、中国、インドからの申請者も多いと言われています。

 

JETROのレポートによると、ヨーロッパのスタートアップ支援先進国では、17年1~8月期における各国のベンチャーキャピタルからの資金調達総額がイギリスでは23億ユーロ(同2978億円)、ドイツが11億ユーロ(同1424億円)であるのに対して、フランスは27億ユーロ(約3496億円)に達しています。このことからもStation Fの注目度の高さが伺えるでしょう。

 

「世の中を変えることができるのは、政治家よりも起業家だ」と、地元紙のインタビューで語ったグザヴィエ・ニール氏。このStation Fの誕生により、保守的で歴史的に新興ビジネスが冷遇されていたフランス社会に風穴を開け、国際的なイメージを一新させたいという狙いがあったのです。

 

単なるインフラストラクチャーでは終わらない

Station Fにおける事例のひとつに格安航空券を10秒以内で検索できるサイトを構築したスタートアップ企業「ユリス・トラベル」があります。

 

現在はビジネスフライトや旅行代理店、ホテルの提供など、あらゆるB2Bに対応すべく取り組んでいる同社は、Station F内の「スペースグリーンプログラム」に参加。このプログラムでは、韓国のNaverとその子会社である日本のLineが、一般消費者向け製品を専門とするヨーロッパのスタートアップ企業を対象に80席ものワークステーションを提供しています。

 

このプログラムへの参加を機に「Station Fはインフラストラクチャーの役目を超え、多くのビジネスチャンスを我々に与えてくれます」と、ユリス・トラベルの創業者はさらなるステップアップに意欲を見せています。

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